多重防御治水を採用 那珂川・久慈川の整備計画 合同で有識者会議 50年ぶりに霞堤を新規整備(関東整備局と県)

[2020/1/29 茨城版]
 国土交通省関東地方整備局と県は25日、水戸市の常陸河川国道事務所で第2回那珂川・久慈川河川整備計画有識者会議(座長・横木裕宗茨城大学准教授)と県河川整備計画検討委員会(委員長・武若聡筑波大学教授)を合同で開催した。事務局から両河川の現状と河川整備計画の変更項目の骨子などについて説明し、整備計画にはこれまでの堤防整備や河道掘削による流下能力の向上に加えて、多重防御治水の考え方が採用された。具体的には、霞提や遊水池の整備、浸水想定地域での土地利用・住まい方の工夫への対応などを実施していく方針で、霞堤の新規整備は50年ぶりになるという。今後は、会議で提案された意見を踏まえて整備計画案を作成する。

 この会合は、台風19号による堤防決壊などの被害を踏まえて、河川整備計画の見直しを検討するもの。関東地方整備局では「河川整備計画有識者会議」、県では「河川整備計画検討委員会」をそれぞれ組織して検討を進めていたが、これまでの審議から「見直しにあたっては国と県の管理を問わず、水系を一貫して検討していく必要がある」との結果が出たため、合同で検討を行う。関東地方整備局と県が合同で会議を開くのはこれが初めてとなる。

 冒頭、関東地方整備局河川部の佐藤寿延部長と県土木部河川課の飯村信夫課長があいさつに立ち、それぞれ忌憚のない意見を求めた。

 また佐藤部長は、台風19号の被害状況を説明し「被害の大きかった河川の特徴は、大きなダムや遊水池などの洪水調整の機能がない河川だった」と指摘。続けて、これまでの河道のみの整備対応には限界があり、今後は多重防御治水で対応していく必要性を強調した。

 多重防御治水はこれまでの河道整備に加えて、遊水機能の確保・向上や土地利用・住まい方の工夫などによる対応を盛り込んでいる。特に遊水機能の確保に向け、新規整備は50年ぶりとなる霞提の整備も示唆した。今後は早期に計画を打ち出し、整備場所の検討などを含めた審議を行っていく考えを示した。

 霞堤は日本の伝統的な治水対策で、堤防のある区間に開口部を設け、上流側の堤防と下流側の堤防が二重になるようにした不連続な堤防。洪水時には開口部から水が逆流して、堤内地に湛水し、下流に流れる洪水の流量を減少させる。洪水が終わると、堤内地に湛水した水が排水されるメカニズムとなる。

 今回、骨子に霞堤の整備を盛り込んだのは、県内に既存の霞堤が複数箇所存在していることや、家屋が密集していない地域があって新規に整備することが可能であることなどが理由となる。また、霞堤の工事は通常の築堤と大きな違いはないため、技術的には問題なく施工できるという。

 問題となるのは整備場所で、対象となる地区の住民の家屋移転や住宅の嵩上げと合わせて実施していくことを検討している。佐藤部長はなるべく早く整備箇所を提示し、その住民に対して説明していく考えを示した。

 このほか、骨子には▽越水・決壊を検知する機器類の開発・整備の推進▽外水、内水の両方に対応する機能の検討▽緊急排水作業の準備計画策定と排水訓練の実施▽浸水想定区域の土地利用制限の際の支援▽避難場所の高台整備の支援──などの項目を盛り込んだ。

 有識者からは、霞堤と遊水地のそれぞれの特徴を把握しての適材適所で整備するよう求めたほか、これまでの流量での把握ではなく本川と支川の水位に注意した国と県の連携の必要性、小さな河川についての再検討、破堤のメカニズムの調査、情報の共有化と伝達の強化などの意見が出た。

 最後に佐藤部長は「今回打ち出した多重防護治水は、これまでの整備計画で示されなかった内容が含まれており、新しいチャレンジといえる。この計画が言葉だけにならないよう、国と県、市町村がタッグを組んで進めていきたい」と意気込みを示した。

 今後は、今回の意見を踏まえて河川整備計画案を作成する予定で、次回の会議では河川整備を行う際の目標となる流量などの具体的な数値なども提示する見通しとなっている。

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