災害対応に優先順位を 茨建協と意見交換 行政機関の垣根越えて 防災・減災 中長期的視点で予算確保(関東地方整備局)

[2020/11/13 茨城版]
 国土交通省関東地方整備局(土井弘次局長)と県建設業協会(石津健光会長)は11日、県市町村会館で本年度の意見交換会を開催した。整備局の幹部職員や茨建協の正副会長、県土木部の幹部職員らが出席し、公共事業の予算の確保や働き方改革、BIM/CIM運用、工事評定への女性・若手技術者の加点などについて積極的に意見を交わした。また、本県での大規模自然災害の経験を活かして、国や県、市町村の垣根を越えて地域住民のために優先順位を付けて災害復旧ができる仕組みづくりを検討する必要性を確認し合った。

 この意見交換会は、発注者と受注者双方が抱える公共工事の諸課題の改善を目的に、毎年実施しているもの。整備局と茨建協に加え、県土木部も参加している。ここで受注者から実際の現場で起こっている実態を聴取して、整備局は施策などに反映させている。

 議事を前に、土井局長は本県がこの10年の間に何度も大きな自然災害の被害を受けたことに触れて「国土強靭化の流れを止めることなく、着実に防災・減災を進める必要があると痛感している。発注者と受注者、それぞれに抱える課題はあるが、本日の意見交換を通して克服していきたい」とあいさつした。

 県土木部の伊藤高部長は、本年度の公共工事の予算規模と執行率を説明し、県として引き続き公共事業の予算確保を推進していく考えを示した。また、国に対しては県内業者への支援、協会に対しては県内事業の円滑な受注と執行を求めた。

 石津会長は、業界を取り巻く環境について担い手の確保や働き方改革への対応といった従来からの課題に加え、新型コロナウイルスや行政のデジタル化への対応など新しい課題にも直面していると訴え、「当協会としても国や県、関係機関と連携を図りながら、課題解決に向けて積極的に取り組み、地域の守り手という社会的使命を果たしていきたいと考えている。本日の意見交換が互いに実りのあるもになることを期待する」と話した。

 意見交換は、▽公共事業予算の安定的・継続的な確保と防災・減災、国土強靭化対策の取り組みと今後の見通し▽働き方改革(週休2日制の定着)▽BIM/CIM運用に関する今後の展望▽工事成績評定における女性技術者・若手技術者の加点──の4議題を主要なテーマに行った。

 このうち予算の確保と防災・減災では、協会が近年の気候変動に伴う自然災害の頻発化・激甚化に対応するため、現在の緊急対策で終わることなくさらなる対策が必要だと指摘して、21年度以降の国土強靭化に向けた対策への考えを質した。

 これに対し、整備局は「社会資本の整備は未来への投資であり、質の高い社会資本ストックを将来世代に引き継ぐためには必要な公共事業予算を安定的・持続的に確保することが不可欠だ」と説明。また、防災・減災については「3カ年緊急対策後も中長期的視点に立ち、十分な予算を確保できるよう取り組んでいく」と回答した。

 週休2日制の定着では、整備局が原則すべての工事で週休2日制を適用し、さらに本年度から現場管理費補正係数を一部引き上げたことに協会から感謝の意を表すとともに、建設業が天候に左右されることや日給月給制の技能労働者が多いこと、民間工事での理解が得られていないなどの現状を説明し、補正係数のさらなる拡大を求めた。

 整備局からは、本年度に共通仮設費と現場管理費の補正率を引き上げたほか、受注者希望型方式でも発注当初から4週8休の補正率を計上するように改善したことを説明。補正係数の引き上げは週休2日制適用工事で検討し、あわせて全国的な対応が必要となるため協会の意見を本省に伝えると理解を求めた。

 続いて近年頻発する大規模自然災害への対応では、災害復旧時の建設業の課題について整備局が問題を提起。災害時に尽力する建設業者の活動が一般にあまり伝わっていないことから積極的な周知活動が必要としたほか、ICTによる災害復旧時の作業の効率化、さまざまな発注方式のメリット・デメリットの検証などを尋ねた。

 これに対し協会は、業界の周知活動について「これから真剣に取り組む問題だ」と返答。応急復旧工事の多様な発注方式は「これまで直轄工事に参加できなかった業者が受注する機会を与えられるのは喜ばしく、一般工事にも裾野を広げるためさまざまな発注方式の採用を」と要請した。

 また協会から、「これまでに発生した大地震や洪水などの自然災害の経験を活かして、災害発生時には国や県、市町村といった発注者の垣根を越えて災害対応に当たるべき」と訴えた。国や県、市町村でそれぞれ建設会社や業界団体と災害協定を締結しているが、広範囲で大規模な自然災害が発生した場合、現状では各自治体がそれぞれ災害対応を要請することで現場が混乱し、どこから対応をすれば良いのか判断することが難しくなっている状況にある。

 さらに、被災地の住民からすればどの自治体の管轄かは問題でなく、重要なのはいち早くライフラインが復旧することだと指摘して、それぞれの管轄を越えて災害復旧の優先順位を迅速・円滑に決められる体制の構築が必要だと説明した。

 これに対し、整備局は「災害発生時に関係する行政機関が連携して、効果的な対策を講じることは大変重要なことだと認識している。災害時には情報が錯綜し、復旧作業の優先順位の決定は困難な作業だが、今回の指摘は大変重要であり、本省と相談しながら対応していきたい」と答えた。

 また、県土木部も協会の指摘に理解を示して「大変難しい問題だが、災害のないときに真剣に議論しなければならない問題だと受け止めている。県も災害復旧の優先順位が決定できるよう検討を進めていきたい」と述べるなど、それぞれ課題解決に向けて取り組む姿勢を示した。

 石津会長は、東日本大震災時に実際に現場が混乱したが毎日朝晩関係者が集まり役所の垣根を越えて災害復旧にあたった事例を紹介し、「一つの自治体の要請を聞くといろいろな意味でロスにつながると感じた。地域住民のために何が最優先かを考えなければならず、自然災害は場所を選ばないため多岐に渡る災害復旧への関係構築が必要となる。協会としてはそうした体制構築に協力を惜しまない」と述べた。

 このほか情報提供では、整備局から本年度の予算概要や21年度予算要求の概要、新型コロナウイルス感染状況を踏まえた公共事業の状況、働き方改革・担い手確保への取り組み、i-コンストラクション、コンプライアンスに対する取り組みなどを解説。また、建設行政の最近の動きとして建設キャリアアップシステムや改正建設業法の施行、今後の社会保険加入対策なども紹介した。

 協会は、災害時の対応や生産性向上に向けたICT活用の活動を説明し、昨年の台風19号では災害復旧に加えて災害ごみ収集のボランティア活動やドローンを使用した被害の調査協力など、その活動の幅を広げていることを紹介。担い手確保に向けた県内公共工事一斉休工日の設定や、業界のイメージアップのためのフォトコンテスト開催なども報告した。

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