ICT施工は109件 昨年度の担い手工事実施状況(県検査指導課)

[2022/5/11 茨城版]
 県土木部が発注した「建設業の担い手確保・育成に資する工事」の21年度の実施状況が分かった。対象はICT活用促進工事と完全週休2日制促進工事、快適トイレ普及促進工事となる。このうち、ICTについては土工と舗装工を合わせて274件の発注を行い、109件で採用。20年度の実施件数が116件であったことから、ほぼ横ばいとなった。また、週休2日は248件、快適トイレは432件となり、過去最高を更新した。県検査指導課では、建設業の生産性向上と担い手確保の促進に向け、これまでの取り組みを継続するほか、本年度から新たに小規模土工でのICT活用や遠隔臨場の拡大、情報共有システムの原則活用などを進めていく見通しだ。

 ICT活用工事の実施件数は、20年度の116件に対し、21年度は109件とわずかに減少した。実施率は39%となり、20年度の46%を下回っている。全国の都道府県レベルでは、依然として平均を大幅に超える実施率だが、伸び率はほぼ横ばいという状況にある。

 そこで県検査指導課では、さらなるICTの普及促進に向けて、本年度から小規模土工でのICT活用を促進する「簡単活用型」に着手した。本県ではこれまでもICT施工の促進を目的に独自の方式であるチャレンジI型とII型を展開してきたが、簡単活用型では従来よりも部分的なICT活用を認め、導入のハードルを下げた内容となる。

 具体的には、3次元設計データ作成に加えて、ICT施工と出来形管理のいずれかを選択することを求める。なお、3次元測量と3次元データ納品は対象外とする。3次元設計データの作成に求める内容も、すべての3次元化は不要とし、活用する部分のみとなる。データ作成では、エクセルで作成したものや、ICT建機上で作成する簡易的なもので条件を満たすことができる。ICT施工についても、既存の建機にマシンガイダンスを後付けするなど、従来よりもコストがかからない内容を想定している。

 対象となる土工量は3000立方m未満に設定。そのため、県土木部発注工事のほぼすべての土木工事がICT施工の対象となる。21年度よりもICT対象工事件数が大幅に拡大することで、実施件数も増加することが見込まれる。県検査指導課では、簡単活用型の周知のため、各事務所単位での現場説明会などを予定しているという。

 完全週休2日制促進工事の実施件数は、20年度が205件であったのに対し、21年度は248件。また、快適トイレ普及工事も20年度が395件であったのに対し、21年度は432件となり、いずれも過去最大となった。これはモデル工事の試行期間を経て、19年度から対象が大幅に拡大したことが要因となる。

 また、県では建設業の担い手の中長期的な育成・確保を目的として、前記の取り組みに加え、遠隔臨場や情報共有システムも進めている。遠隔臨場については、21年度から試行となり、68件で実施した。本年度は国の動向や試行結果を踏まえ、発注指定型の拡大を予定する。目標件数は500件程度を予定。23年度にはさらに対象件数を1000件程度に拡大し、24年度からの本格導入を目指していく。

 情報共有システムについては、本年度から原則すべての工事で活用を開始している。その際には、受発注者双方の効率的な運用を目的に、21年度末に推奨事業者として現場サポート(鹿児島県鹿児島市)を選定した。システムを統一することで、期待できる効果として、▽手持ち工事の一元管理▽すべての受注業者への一斉周知▽関連する工事間での工事工程などの共有▽関連する工事関係者間でのスケジュール共有──などがあるという。

 県検査指導課の担当者は、ICT活用工事の実施率の向上には受注者がICT施工のメリットを感じてもらうことが重要だと指摘。県としては、その仕組みづくりの一環として簡単活用型を導入したと説明し、「今後は簡単活用型のメリットを感じてもらい、ICT活用を浸透させていきたい」とコメントした。

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