新庁舎 基本設計で方向性 プレキャストPC造5階で検討へ(千葉県旭市)

[2017/9/23 千葉版]
 千葉県旭市は22日、「新庁舎建設基本設計の素案作成のための方向性」を明らかにした。新庁舎の構造はプレキャストPC(一部S)造5階建てで検討を進めていることが分かった。今後、新庁舎建設市民会議や地区懇談会などで出された意見を踏まえ、11月に基本設計の素案を提示、パブリックコメントを経て、年度内に基本設計案をとりまとめる予定だ。

 この方向性は、同日開催の市議会で報告された。設計方針では、新庁舎建設基本計画に基づき▽市民に開かれた庁舎▽ユニバーサルデザインに対応した庁舎▽住民自治の拠点となる庁舎▽市民の安全・安心を支える庁舎▽環境にやさしい庁舎▽行政需要の変化に対応できる庁舎──の6つの基本方針を設定した。

 計画概要をみると、庁舎の建設予定地は旭文化の杜公園内の一部(二の2132番地)。敷地面積は9864平方m、建築面積は約5000平方m。都市計画区域内で、用途地域は無指定。建ぺい率は60%、容積率は200%。

 施設の構造・規模はプレキャストPC(一部S)造5階建て延べ1万2000平方m以下を想定。最高の高さは約22mで、基礎は杭基礎。エレベーター3台を設置する。駐車場は来庁者用130台、公用車用84台の計214台、駐輪場は約50台をそれぞれ確保する。

 配置計画では、新庁舎は進入口から見てわかりやすく、認識しやすい配置構成とし、旭文化の杜公園との連携に配慮した庁舎とする。

 階層計画では、市民の利便性と事務の効率化を十分に考慮し、1~2階に健康福祉・建設経済・市民生活・会計管理者など、3~4階に議会・監査・農業委員会・市長・副市長・総務企画・教育委員会など、5階に展望室・機械室をそれぞれ配置する。

 平面計画は、全方位に開かれた開放的な低層階と、機能を集約したコンパクトな上層階で構成する。立面計画は、市民が集い賑わう暮らしと文化の中心の場として、同市の風景によくなじみ、シンボルとなるデザインとする。

 断面計画は、十分な空間を効率的・合理的に確保し、将来の機能更新や改修のしやすさに配慮した、長寿命化を実現できる計画とする。構造計画では、高度な耐震性や耐久性、防火性を備えるとともに、行政機能も維持できる災害に強い合理的な構造体による安全・安心な庁舎とする。

 防災拠点として、災害時は新庁舎の1階市民ロビーなどを救護・診療の場とするとともに、来庁者用駐車場を避難・救護の場などとして機能転換する計画だ。

 生涯コストを削減するため、自然の力を効率よく取り入れるとともに、環境に配慮した電気・空調換気などの設備を効果的に採用することで、環境への負荷の少ない庁舎を計画している。

 また、1階には、演奏会や各種発表会など幅広く利用できる「市民の活動の場」、資料閲覧や展示スペースを設ける「旭の歴史等を学ぶ場」、仁玉川を望み、オープンカフェ的な雰囲気のある「市民の憩いの場」を設置する方向で検討を進めている。

 概算事業費は約53億5200万円を試算。その内訳は、本体工事が約50億円、外構工事が約1億6000万円、解体工事が約1億7400万円、上水道や排水など、その他工事が約1800万円となっている。

 今後のスケジュールは、29~30年度に基本・実施設計を進め、31年度の着工、32年度内の完成を目指す。

 設計・監理業務は横河建築設計事務所(本社・東京都品川区)、オフィス環境整備業務はコクヨマーケティング(千葉オフィス・千葉市中央区)がそれぞれ担当している。

 なお、旭市新庁舎建設市民会議(林英光会長)が21日、市役所で開かれた。基本設計の業務スケジュールや素案作成のための方向性を協議したほか▽建物配置計画▽建築構造▽駐車場計画▽階構成──などについて検討を進めた。

 会合で明智忠直市長は「いよいよ設計が本格化する。これからさまざまな検討が必要となるが、皆さんの意見を十分踏まえ、市民に親しみやすい庁舎にしていきたい」と事業推進に意欲を示した。

 本庁舎は昭和39年に完成した施設で、築50年以上が経過し、老朽化や狭あい化が顕著になっているほか、耐震性の不足など、さまざまな課題を抱える。東日本大震災では、本庁舎建物の一部に亀裂が生じるなどの被害を受けたほか、災害対策本部を本庁舎内に設置したものの、組織の分散化により、防災拠点として十分な機能を発揮できなかったことから、早期の新庁舎建設が求められている。

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