輪中堤、嵩上げ、集団移転 杣井木川沿い3地区対象 小山市

[2020/12/23 栃木版]

 小山市は、一級河川杣井木川の排水強化対策事業で、下泉(27世帯)・中里(9世帯)・押切(33世帯)の対象地区に[1]輪中堤の整備[2]各戸嵩上げ等の整備[3]集団移転-3つの対策方針案を提示した。市治水対策課によると、3案のいずれかを採用するため、3地区それぞれで検討を進めていくとし、なるべく早期に方針を決めたいという。方針が決定次第、事業に着手するとしている。

 市では、2015年9月の関東・東北豪雨で被害を受けた杣井木川流域や豊穂川流域の排水強化事業を進めている。県は、杣井木川の排水機場ポンプ増設のほか、排水機場付近で調節池の計画を進めている。県の事業だけでは関東・東北豪雨と同じ雨が降った場合に、宅地無湛水を達成することは不可能と想定されるため、市も別メニューで杣井木川排水強化対策事業を行うこととした。市は現在、田んぼダムの整備を進めているほか、3つの対策案を構想したもの。

 輪中堤は、低地の集落を囲むように設置される堤防。県事業や田んぼダムの対策を行っても浸水する宅地箇所に盛土して輪中堤を整備する。輪中堤の整備が低い場合や、用地確保が困難な区間については、コンクリート擁壁等の構造物で対応するという。

 輪中堤の整備は、整備箇所の測量と設計を行い、堤防の高さを決め、必要な事業面積を算出。事業面積を基に不動産鑑定や用地にある建築物等の補償費を算定し、地権者と交渉して用地買収や物件補償等を実施。これらの完了後に、輪中堤整備工事を行うとした。

 輪中堤は整備完了まで期間が短く、すべて市主体事業で進められる利点がある一方、輪中堤内に降った雨水を排水するための排水ポンプが必要となる可能性や、用排水路へ水門を整備し、洪水時に開閉等の管理が必要となる課題もあるとした。

 各戸嵩上げ等については、すでに建設された住宅をジャッキ等で安全な高さまで持ち上げ、基礎または1階部分を高くするもの。このほか、コンクリート擁壁で住宅周辺を囲む方法や、建物の外壁を防水する方法も含まれるとしている。

 各戸嵩上げ等の手法については、各戸個人主体による整備を行う。現在のところ、各戸嵩上げ等について市は支援制度を設けておらず、住民が同案を選択した場合は、制度設計を行う見通し。各戸嵩上げ等については、住民の経済的負担等で課題があるとしている。

 集団移転事業について国の法律によると、災害が発生した地域または災害危険地域のうち、住民の居住に適当でないと認められる区域内にある住居の集団的移転を促進するものとなっている。

 集団移転に向けては、地域住民と合意形成した後、移転先を選定。事業計画(住宅団地の整備計画、集団移転事業に伴う概算費用など)を策定し、国庫補助事業として行うため、国へ事業計画を申請。事業計画に基づき、住宅地整備、移転元地の測量・調査や用地買収を実施するとしている。

 住宅団地は移転先用地の取得や造成、元地の用地買収、道路や水道等の公共施設整備は市主体で実施。移転先での住宅建設や用地購入などについては住民が行うとし、これら費用について市が補助を行うとしている。

 集団移転事業は、住民の合意形成、移転者の経済的負担、事業の長期化、移転元地の土地利用など課題があるとした。

 下泉・中里・押切の各地区では今後、地区ごとに検討組織を立ち上げ、対策方針のいずれかの採用を検討していくという。3地区の対策方針は、すべて異なるものになる可能性もあるとした。3地区の検討にあたって市は、地区の会議で対策の説明や地区との協議を行うとしている。

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