市町の発注事務の指針徹底へ 関東地整と栃建協が意見交換 3つの課題の対応を協議

[2021/12/01 栃木版]

 国交省関東地方整備局(若林伸幸局長)と県建設業協会(谷黒克守会長)、および県県土整備部(田城均部長)の意見交換会が11月29日、宇都宮市の県総合文化センターで開催された。発注者と受注者双方の立場から公共工事の諸課題について活発に意見交換する場とするもので、建設行政や建設業界の最近の状況について持ち寄った情報を紹介したほか、栃建協が提案した3つのテーマについて意見を交換した。このうち「新・担い手三法発注関係事務運用指針の市町村等への普及」では、栃建協から市町の取り組みが遅れていると指摘し、整備局や県は担い手三法の普及徹底に向けて指導、助言に取り組んでいくと返答した。

 議事の前に、若林局長はこのほど閣議決定された補正予算について「国交省関係の国費の総額は2兆0911億円で、そのうち安全・安心の確保は1兆4236億円」と説明し、「この意見交換会の結果も踏まえて、災害に強い国づくりや老朽化対策を進めていきたい」と話した。また、整備局で本年をインフラDX元年として様々な取り組みを進めていることなどを紹介し、「本日は忌憚のないご意見を頂戴し、有意義な会議としたい」とあいさつした。

 田城部長はまず、鳥インフルエンザや豚熱の対応、さらには豪雨災害の応急対策や復旧工事などに改めて謝意を表し「多くの県民がその働きぶりを見て、建設業が地域の守り手として不可欠だと改めて認識したのではないか」と話した。また、担い手確保や働き方改革など建設業の喫緊の課題の解決に、整備局や栃建協と連携して取り組んでいく考えを示した。

 谷黒会長は新内閣が標榜する新しい資本主義に期待感を示し、「特に地元建設業が存続していくための設備投資や担い手確保を計画的に進めるため、補正予算もさることながら、先を見通せる当初予算での事業量確保が大変重要であり、その配分も地方への重点的な投資が必要」としたうえで、「地域建設業の実情にご理解を賜り、なお一層の事業費の確保、運用の改善、制度支援などにご尽力賜りますようお願い申し上げる」と訴えた。

 議事はまず、お互いの取り組み状況などについて情報提供を行った。関東地方整備局からは、21年度予算の概要や上半期の執行状況、平準化や週休2日制などの指標の調査結果、働き方改革や担い手確保の取り組み、インフラDXの推進、電子書類スリム化ガイドの改定などの取り組みを説明するとともに、最近の動きとして国交大臣と建設業4団体との意見交換会や建設キャリアアップシステムなどを紹介した。

 県建設業協会は、協会の経営体質の強化と事業の充実を図っていることや道路・河川等維持管理業務の共同受注方式の拡充、将来の業界発展を担う人材の確保と育成に向けた取り組みを説明。特に人材の確保・育成では、独自に作成したYouTube動画を紹介し、テレビCMやケーブルテレビ、街頭ビジョンなどで放映して建設業のイメージアップを図っていると説明した。

 意見交換では、県建設業協会から提示した▽公共事業予算の確保と地域社会の安定的発展について▽小規模工事におけるICT施工の対応をはじめとする生産性の向上について▽新・担い手三法発注関係事務運用指針の市町村などへの普及について-の3つのテーマを取り扱った。

 まず「公共事業予算の確保と地域社会の安定的発展について」では、栃建協から地域の建設業が「地域の守り手」や「地域の創り手」として地域づ<りに貢献していくため、公共事業予算の確保や地方への重点配分を推進するよう要望した。

 整備局は、22年度の予算の概算要求で公共事業関係費として6兆2492億円(対前年度比1.19)を要求していると説明。さらに21年度の補正予算では、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定され、「16カ月予算」の考え方で22年度当初予算と一体的に編成し、切れ目なく財政政策を実行するとされており、その中で「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に基づき5兆円程度の事業規模が計上されていると説明した。

 また「関東ブロックにおける社会資本整備重点計画」の推進についても、「真の豊かさ」を実現できる社会を構築するための3つの中長期的な目的▽安全・安心の確保▽持続可能な地域社会の形成▽経済成長の実現-の達成に向け、25年度までの計画期間内に6つ重点目標とその達成のための小目標を設定し、重点的に取り組むべき具体的な施策・事業を進めていくと返答した。

 次に「小規模工事におけるICT施工の対応をはじめとする生産性の向上について」では、栃建協から「ICT普及促進ワーキンググループ」で進めている小規模の現場に対応したICT技術の活用方法などの検討状況について質問。整備局は、小型建設機械やスマホなどの汎用機器を活用したICT施工技術について10月に実証し、その機能・効果などを本年度を目標に要領として取りまとめる予定と答えた。

 また、3Dデータでの提供が可能かどうかや、23年度から原則適用とされるBIM/CIMの詳細と現状についても質問。整備局は21年3月に「関東BIM/CIM活用ロードマップ」を策定しており、23年度までに小規模なものを除く全ての公共事業に向けて段階的な適用拡大に取り組んでいるとして、「今後、BIM/CIM活用の業務が拡大していくことで、発注段階における3Dデータでの提供が進んでいく」との考えを示した。

 最後に「新・担い手三法発注関係事務運用指針の市町村等への普及について」では、栃建協から市町村で低入札価格調査基準の設定、施工時期の平準化、適正な工期設定、適切な設計変更など取り組みが遅れているものが散見されるとして、これらの普及徹底に今後どのように取り組んでいくのか質問した。

 整備局は、全国統一指標および関東ブロック独自指標で24年度のこれらの目標値を公表して各県、市町村で取り組んでいるとして、今後も「関東ブロック発注者協議会の栃木県分科会」の場を活用しながら、県内の市町村に対し指導、助言をしていくと返答した。

 県県土整備部も「市町の発注に課題があることは把握している」としたうえで、「首長の理解が無いと進まないことから、意見交換できる機会を捉えて担い手三法に関する取り組みを話している」と状況を説明した。

 また栃建協は、24年4月からの時間外労働の罰則付き上限規制の適用に的確に対応するためには、施工時期の平準化や適正な工期設定の市町村への浸透を図ることはもとより、週休2日(4週8休)制導入も民間工事を含めた普及が必要であるとして、これら働き方改革の普及徹底にどう取り組むのかも質問した。

 整備局は、週休2日の実現に向けた環境整備として現場閉所の状況に応じた労務費、機械経費、共通仮設費、現場管理費の補正係数を設定し、20年度に共通仮設費と現場管理費の補正率を引き上げて21年度も引き続き継続している。また、適正な工期を確保するため工事発注時に工事工程表の開示の試行を原則全ての士木工事、機械設備工事、電気通信設備工事を対象に実施するなどの取り組みを説明し、「引き続き適切な発注に努めるとともに、適正な工期設定について地方公共団体などへも働きかけていく」と返答した。

 さらに民間工事における適正な工期の確保については、働き方改革を促進し魅力ある建設業、将来の担い手確保につなげていくことが必要とし、引き続き国土交通本省とも連携して周知を図っていくと答えた。なお、元請企業が短い工期で受注した場合は下請企業にもしわ寄せが及ぶ可能性があるとして、栃建協にも適正な工期の見積り、協議などについて協力を求めた。

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