本県の基幹管路37.4% 水道施設耐震化状況 浄水施設、配水池も全国下回る(厚労省)

[2022/3/31 栃木版]

 厚労省は、2020年度末における水道事業の耐震化状況をまとめた。本県の基幹管路の耐震適合率は全国平均40.7%を下回る37.4%で、耐震管の割合に至っては11.4%と、群馬県(11.0%)に次ぐ全国ワースト2位(全国平均26.8%)となった。また、本県の浄水施設は全国平均の38.0%を下回る24.6%で、緊急性に応じ個々に改修している配水池の耐震化も全国平均の60.8%に対し34.3%にとどまっている。国は国土強靱化5か年加速化対策で、25年度末の基幹管路の耐震適合率を54%、浄水場耐震化率を41%、配水場の耐震化率を70%に引き上げることとしており、今後一層の耐震化対策が求められそうだ。 =2面に基幹管路の都道府県別の耐震化状況

 厚労省は、水道事業の耐震化を推進する施策の一環で、08年度から全国の水道管や浄水施設など水道施設の耐震化状況を調査している。20年度末時点の調査結果によると、基幹的な水道管のうち耐震性のある管路の割合が40.7%、浄水施設の耐震化率が38.0%、配水池の耐震化率が60.8%と、依然として低い状況にある。

 導水管や送水管など「基幹管路」と呼ばれる水道管のうち、耐震適合性のある管(耐震管、および管路が布設された地盤の性状を勘案し耐震性があると評価できる管)の延長は、昨年度から1805km(基幹管路総延長の1.6%に相当)増加した。耐震適合率は全国平均で40.7%となり、昨年度(40.9%)と比較して割合が低下しているが、これは広域化の推進で簡易水道事業が統合されたことなどに伴い、耐震適合性のない管の延長が3045km増加していることが影響していると考えられる。

 都道府県別で見ると、本県は基幹管路総延長1517kmのうち耐震適合性のある管の延長が567kmで、耐震適合率は37.4%。このうち耐震管(地震の際でも継ぎ目の接合部分が離脱しない構造となっている管)の延長は173kmで、耐震管率は11.4%と全国平均の26.8%を大きく下回る。なお、19年度末は耐震適合率36.7%、耐震管率10.7%となっており、耐震適合率は0.7%増加している。

 本県自治体の大臣認可の上水道事業は、給水人口が5万人を超える事業で宇都宮市が耐震適合率59.3%(耐震管率12.0%)、日光市が33.5%(同3.6%)、鹿沼市が24.7%(同10.2%)、小山市が60.7%(同4.4%)、真岡市が57.9%(同7.1%)、大田原市が49.7%(同7.8%)、那須塩原市が31.8%(同29.9%)となった。大臣許可の水道用水供給事業では、栃木県(北那須)が66.4%(同1.4%)、栃木県(鬼怒)が33.0%(同6.2%)となっている。

 浄水施設については耐震化率が38.0%で、昨年度(32.6%)から5.4ポイント上昇した。着水井から浄水池までの処理系統の全てを耐震化するには施設停止が必要で改修が難しい場合が多いため、基幹管路や配水池に比べ、耐震化が進んでいない状況となっている。

 本県の浄水施設の耐震化率は、全浄水施設能力1日あたり101万8997立方mのうち、耐震化浄水施設能力が25万0806立方mで、耐震化率は24.6%。19年度は全浄水施設能力1日あたり102万3212立方mのうち、耐震化浄水施設能力が24万7968立方mで耐震化率24.2%となっており、前年度から0.4ポイント増加している。

 なお、震災時に安定的に浄水処理を行うためには浄水施設の系統全てで耐震基準を満たす必要があるが、その整備には相当の期間を要するため、浄水施設の耐震化対策の取り組みやその進捗状況を表す指標として、浄水場の主要構造物である沈でん池およびろ過池の耐震化の割合も集計している。本県の消毒のみ施設を除いた浄水施設能力は1日あたり49万9020立方m、うち耐震化浄水施設能力は15万4473立方mで、耐震化率は31.0%。19年度は耐震化率27.8%で、3.2ポイント改善した。

 配水池については耐震化率60.8%で、昨年度(58.6%)から2.2ポイント上昇した。浄水施設に比べ耐震化が進んでいるのは、構造上、個々の配水池毎に改修が行いやすいためと考えられる。本県は、全有効容量63万1540立方mのうち耐震化有効容量が21万6380立方mで、耐震化率は34.3%。19年度の耐震化率は34.0%で、この1年間で0.3%増加した。

 国は、南海トラフ地震や首都直下地震など発生が想定される大規模自然災害に対し、強靱な国づくりに関する取り組みとして国土強靱化基本計画および国土強靱化年次計画2021を策定し、水道では基幹管路の耐震適合率を28年度末までに60%以上に引き上げる目標を掲げている。

 さらに、大規模地震の発生確率の増加、異常気象の頻発・激甚化などを踏まえ、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を推進している。この加速化対策では、基幹管路で25年度末の耐震適合率を54%、浄水場・配水場で25年度末の耐震化率をそれぞれ41%、70%に引き上げることとしている。

 厚労省は水道事業者の耐震化の取り組みを支援するため、財政支援の拡充や「水道の耐震化計画等策定指針」の提供などの技術的支援に取り組んでいる。財政的支援では、建設事業費の負担軽減を図るため、生活基盤施設耐震化等交付金に22年度当初予算で218億円(交付率1/4~1/2)を計上。技術的支援では、計画的な耐震化実施のための手引き書などを整備している。

 また、水道法の一部を改正する法律で、水道事業者による施設の計画的な更新の実施に関する規定などが創設されている。この改正水道法の運用を適切に行うとともに、水道事業における耐震化がさらに進むよう、今後も引き続き取り組んでいくとしている。

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