越水と浸透で決壊か 名蓋川復旧に有識者が初回会合(宮城県)

[2022/9/14 宮城版]

名蓋川の本格復旧に向けて、有識者らの検討会が始まった

名蓋川の本格復旧に向けて、有識者らの検討会が始まった

 7月の大雨で堤防が決壊した名蓋(なぶた)川の災害復旧に向けて、宮城県の有識者会議が9月13日に仙台市内で開かれた。12月までに会合を3回程度開き、堤防の復旧方法や流域全体の水害対策について議論していく。初回の会合では、堤防が決壊した原因に関し、意見が交わされた。宮城県は調査結果をもとに「堤防への水の浸透と越水などが重なり、決壊したのではないか」との見解を示した。

 9月13日に行われたのは「名蓋川復旧対策検討会」(座長・風間聡東北大学大学院工学研究科教授)。河川や土質、気象などの専門家らが集まり、名蓋川の本格的な復旧に向けて検討を始めた。

 会合であいさつした宮城県の千葉衛土木部長は、名蓋川が2015年の関東・東北豪雨、19年の東日本台風でも堤防が決壊し、それを踏まえて河川整備を進めているさなかの被災だったことを明かした。その上で「近年は気候変動により、計画規模を超える豪雨が頻発している。名蓋川は単なる原形復旧ではなく、流域全体でさまざまな対策を講じて浸水被害を防いでいきたい」と話した。

 大崎市古川地区を流れる名蓋川は、関東・東北豪雨での被災から7年間で3度も堤防が決壊した。今回は7月15日から降った大雨により、大崎市古川矢目地区を流れる区間の3カ所で堤防が決壊した。

 宮城県の説明によると、大崎市古川周辺では7月15日深夜から急激に雨量が増えた。翌16日午前2時過ぎには、下流端で計画水量(毎秒40立方m)の2.2倍に当たる毎秒88立方mの水が流れた。これにより、堤防から越水が発生。あふれた流水で堤防の裏法が複数箇所で崩れ始めた。

 その結果、7月16日午前5時ごろには、左岸堤防を4cmほど越える水が流れ出したとみられ、多田川との合流地点から0.3km上流の左岸堤防が約30mにわたって決壊した。さらに、合流地点から0.7km上流の右岸堤防、1.4km上流の左岸堤防も決壊した。

 初回の会合では、大雨当時の気象状況や雨量などが報告され、名蓋川を流下した水の量や高さが説明された。また、宮城県が調査した堤防の土質などが報告された。決壊した箇所の土は砂質土で粘性が弱く、越水や水の浸透に対して脆弱だったことが明かされた。

 これらのデータを総括し、宮城県は決壊した原因について「7月15日以前の雨で堤防への雨水浸透が進み、さらに15日からの大雨で越水し、裏法の洗堀が進行した。堤体への水の浸透がさらに進み、パイピング現象が起きて決壊にいたった」と推測した。

 有識者からは、越水した箇所の越流深水をさらに詳しく調べることや、土質などについてさらに調査を行うことなどが求められた。宮城県は10月中に2回目の会合を開き、本格復旧に向けた課題を提示した上で、対策工法の案を示す方針だ。

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