時間外労働の対応図る 国と県が意見交換 水道行政移管に向け準備(栃木県事業連絡協議会)

[2023/6/30 栃木版]

 国土交通省関東地方整備局(廣瀬昌由局長)は28日、県庁で2023年度の「栃木県事業連絡協議会」を開催した。整備局や各出先事務所、水資源機構および県県土整備部の幹部が一堂に会し、本年度の予算をはじめ河川、道路、公園、港湾・空港、営繕事業など所管する主要事業について、情報の共有や意見の交換を行った。整備局は本年度、当初予算と22年度補正予算を一体的に執行して中橋架替事業や緊急治水対策プロジェクト、国道4号のバイパス・現道拡幅事業などを推進するほか、建設業の2024年問題および水道行政移管に向けても対応していくと説明。県からは直轄事業の一層の推進をはじめ、県が実施する河川改良復旧などへの支援を求めた。

 開会にあたり、整備局の小林賢太郎企画部長は「本年度は昨年度と同様に大規模な予算を確保できており、昨年度の補正とあわせて円滑に執行していきたい」と協力を求めた。また「来年度から罰則付時間外労働の上限規制が適用されることから、適正工期や平準化、書類の削減などに取り組んでいるが、現場でもDXやICT施工で効率的に事業を進め、建設業の働き方改革を達成していきたい」と話したほか、来年度から水道行政が国土交通行政に移管されることに触れて「円滑に移管できるよう準備を進めている」と説明した。

 県県土整備部の坂井康一部長は「新たな国土形成計画の素案の中で、新しい考え方としてシームレスな拠点連携型国土が示されるということだが、加えて今年が関東大震災から100年の節目ということで、大規模災害時の首都機能バックアップの観点から本県の地理的優位性を最大限生かせるよう、広域道路ネットワークの充実・強化をはじめ県境を越えた地域間の連結強化を図っていきたい」と話した。

 議事はまず、整備局から本年度の事業について説明。本年度の当初予算は1兆7224億円で、これに国土強靭化5か年加速化対策分を含む22年度補正予算3243億円をあわせて執行する。

 国土強靭化基本計画は新たな計画の骨子案が示され、デジタルなど新技術の活用や、国土形成計画と連動した地域の防災力の強化が基本方針に示された。国土形成計画は、全国計画が今夏ごろ閣議決定される見通し。首都圏広域地方計画は基本的な考え方を公表したところで、今後具体的な計画策定に入っていく。

 建設業の2024年問題では、現場の生産性向上の取り組みとしてICT施工やDXを活用し、効率的に事業を進める。小規模工事へのICT施工技術の普及に向けては、3月に手引き(案)の改訂版を公表しており、積極的な活用を求めた。

 生活衛生等関係行政の機能強化は、水道法等による権限を厚生労働大臣から国土交通大臣と環境大臣に移管する。事務の一部を地方整備局長に委任できることから、来年度の委任に向けて準備室をつくり体制を整える。

 河川事業は、渡良瀬川の中橋架替事業で工事を県に委託し、本年度は引き続き橋梁の下部工を実施する。那珂川の緊急治水対策プロジェクトは、那須烏山市で霞提や防災集団移転を進めているが、住民に丁寧に説明する必要もあり、事業期間を2年延長した。鬼怒川直轄砂防事業は本年度、大真名子東沢や華厳上流などで砂防堰堤、床固工、山腹工を実施する。

 道路事業は、国道4号のバイパス・現道拡幅事業を説明。矢板拡幅は本年度約4億円を計上し、引き続き調査設計や用地買収を実施するほか、前岡地区で改良工に着手する。矢板大田原バイパスは調査設計を進めており、土屋地区で用地買収に着手したいと話した。

 西那須野道路は、調査設計や西富山地区の改良工事、三区町地区の電線共同溝工事、烏ヶ森公園の歩道橋工事を実施する予定となっている。直轄権限代行の国道121号日光川治防災は、本年度も調査設計を実施する。

 建設業の担い手確保・育成は、適正な工期の設定に関し市区町村の改善が必要だとして、管内市町への指導を求めた。建設業許可・経営事項審査の電子申請システムは1月からスタートし、バックヤード連携も4月から対象を拡大している。

 5月に施行された盛土規制法は、宅地だけでなく、森林や農地を含め土地を造成するための盛土・切土を対象とする。資源有効利用促進法の施行規則改正に伴う建設発生土の搬出先の明確化は、建設業者の関心も高いとして周知を呼びかけた。

 本年は関東大震災100年を迎えることから、関東地方整備局ではシンポジウムや首都直下地震対応訓練、ゆかりの地を巡るツアーを実施する。本県ではシンポジウムを7月27日に開催する予定で、積極的な参加を呼びかけた。

 水資源機構は、思川開発事業で事業費約245億円を確保して、南摩ダム本体工事や導水施設工事、管理設備工事などを実施する。ダムの上流側に打設するコンクリートスラブは、秋口から打設を開始すると説明した。ダム本体の現時点の盛立量は約190万立方mで、全体の盛立量に対する進捗率は80%。導水路や送水路の進捗は、全体延長に対し40%前後となっている。

 県からは、道路・交通事業で東北道の都賀西方SICや大谷SIC(仮称)、北関東道で下野SIC(仮称)や足利SIC(仮称)の事業を進めているほか、壬生地区で準備段階調査を実施中で、これらSICへのアクセス強化も進めていると説明。あわせて、東北道宇都宮IC以北の6車線化や栃木IC付近の渋滞対策を要望した。

 広域道路網は、国道4号西那須野道路、矢板大田原BP、矢板拡幅の整備促進、新国道4号の平面交差の解消、国道121号日光川治防災の整備推進と藤原地区など未整備区間の支援、国道120号金精道路の通年開放に向けた直轄権限代行の整備検討を要望した。

 高規格道路は、「常総・宇都宮東部連絡道路(国道408号)」の整備推進とともに、新広域道路交通計画に位置付けたつくば・八溝縦貫・白河道路(仮称)と北関東北部横断道路(仮称)の具体化に向けた検討を行う。

 河川・砂防事業は、流域治水の普及促進を図るため、リーフレットや動画を作成した。東日本台風からの復旧と再度災害の防止に向けては、甚大な被害が発生した河川の改良復旧事業を推進していると説明。砂防事業は、土砂災害防止施設の整備を推進するとともに、那須岳や日光白根山の火山噴火緊急減災対策砂防計画に基づく対策の推進に向けた支援を要望した。

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