10年延伸か延伸無し 道路施策懇談会 さつきロードのあり方協議(栃木県交通政策課)

[2024/3/22 栃木版]

 県交通政策課は21日、県庁で3回目となる県道路施策検討有識者懇談会(座長:根本敏則敬愛大学経済学部教授)を開催し、宇都宮鹿沼道路(さつきロード)の今後の管理・運営のあり方について協議した。県は将来の路線のあり方として、料金徴収期間を延伸する「10年延伸」と、無料化する「延伸無し」の2案を作成。「10年延伸」では橋梁耐震化と交通系ICカードの導入を実施し、「延伸無し」では橋梁耐震化を県が短期的に実施する。そのほか4車線化の検討や橋梁の長寿命化対策は、両ケースとも県が無料後の交通状況の変化を見ながら実施時期を検討していく。

 開会にあたり、県土整備部の谷英夫次長は「これからますますインフラが老朽化していくなかで、有料道路の在り方をご議論いただいている。昨年10月の第2回懇談会では日光道とさつきロードの現状と課題を説明し、その後、今後の基本的な考え方を整理するとともに、2路線をどの方向に進めていくのか検討してきた。本日は、2路線のうちさつきロードの検討結果を説明し、検討のプロセスや最終的な方向性をご議論いただきたい」とあいさつした。

 引き続き、宇都宮鹿沼道路(さつきロード)の今後の管理・運営のあり方について、基本的な考え方や検討プロセス、あり方の方向性を議論した。さつきロードは東北自動車道鹿沼ICと宇都宮環状道路を連絡する一般広域道路で、延長2.5kmのうち1.6kmを1996年3月に暫定2車線で供用した。

 有料道路区間の西側は鹿沼工業団地が立地し、隣接して新たに鹿沼インター産業団地の整備も進められ、産業活動を支える道路となっている。利用割合は普通車と軽自動車が9割を超え、平日の朝・夕の時間帯に交通のピークが見られることから、産業団地の就業者による通勤利用が多いと想定される。

 橋梁の耐震化は、耐震性能で「落橋・倒壊を防止する対策(耐震性能3)」と「速やかな機能回復が可能な性能を目指す対策(耐震性能2)」の2段階あるが、この路線の下欠高架橋と向川原橋は古い基準で設計され「耐震性能3」も満足しておらず、緊急輸送道路であることからまずは早急な「耐震性能3」の確保が必要となっている。

 これらを踏まえ、橋梁耐震化事業の実施方針として、さつきロードの2橋は現時点では損傷が小さく健全であり、特殊な橋梁では無いため、当面は経過観察してくことが妥当だが、劣化予測からは10年度に修繕対策が必要になる可能性が高いとした。

 また料金徴収は現在、係員が現金か回数券で徴収しているが、キャッシュレス化・タッチレス化に向けて取り組んでいくことも求められる。ETCや料金自動収受機は導入コストが高く、また他路線で導入事例やカードの普及状況なども踏まえて交通系ICカードの導入が適していると判断し、利便性の向上で利用者・料金収入の増加も期待できると分析した。

 車線数は、現在暫定2車線で共用しているが、宇都宮鹿沼道路に接続する県管理区間は新産業団地の操業に併せて県が拡幅工事を実施している。現状の2車線のまま無料化した場合、交通量は周辺道路からの流入で急増するが、各交差点の渋滞発生を分析した結果、著しい渋滞が発生することはないことを確認した。

 あわせて、期間延伸できる条件を満たす延伸ケースを検討し、これらも踏まえて将来の路線のあり方として無料化・料金徴収期間延伸の2案を作成した。「延伸無し」の場合は現行の料金徴収期間満了(2026年3月)をもって無料化し、もう1案は必要な事業を実施したうえで未償還金を最大限圧縮できる「10年延伸」とする。

 2つのケースを比べると、事業方針の有料事業では「10年延伸」で橋梁耐震化(耐震性能3)と交通系ICカードの導入を実施し、「延伸無し」では橋梁耐震化(耐震性能3)を県が短期的に実施。その他の事業は両ケースとも、県が無料後の交通状況の変化を見ながら、4車線化の検討や橋梁の長寿命化対策、耐震化(耐震性能2)の実施時期を検討していく。

 財政分析は、最終未償還額が「延伸無し」では25億円、「10年延伸」では22.3億円となり、県の追加の負担額は「延伸無し」が6.1億円、「10年延伸」が3.4億円となる。影響分析のうち、将来交通量(40年)は「延伸無し」が1日1万0700台、「10年延伸」が1日2600台となるが、「延伸無し」の場合でも大きな渋滞は発生しない見通しとしている。

 この懇談会は、道路施策の検討にあたり客観性・透明性を確保するとともに、効率的で効果的な道路行政を推進することを目的に設置した。想定する案件は▽新広域道路交通計画の広域道路ネットワーク計画に位置付けられた路線で計画段階評価(構想段階)を実施する事業▽有料道路に関する国の許可手続きが必要な事業▽その他、担当課が有識者懇談会の意見を求めることが必要と判断する事業など-とする。

 今後のスケジュールは、24年度上半期に予定する第4回懇談会で日光道のあり方や提言骨子案について協議し、同下半期の第5回懇談会で提言の取りまとめを行う。

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