下水管の全国調査を 道路陥没で検討委が提言へ(国交省)

[2025/3/12 千葉版]
 国土交通省は、下水道管路の全国特別重点調査に乗り出す。3月11日に国交省で開かれた「下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会」(委員長・家田仁政策研究大学院大学特別教授)の第3回会合で、国に全国特別重点調査の実施を求める提言の原案を了承した。最優先で実施すべき箇所は夏ごろまで、それ以外の箇所は1年以内をめどに調査を終えるとの目標を盛り込んでいる。調査すべき口径など数値的な判断基準を含む提言の最終案を近日中にまとめ、各自治体に調査の実施を要請することにしている。

 提言素案では、埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没は、約120万人が下水道の使用自粛を求められるなど「重大な事態」と強調。

 国交省の要請により各自治体が実施した緊急点検は1週間と短く、十分とは言えないと指摘し、今回と同種・同類の事故を未然に防ぐため、対象を重点化したうえで、適用可能な技術を総動員して、全国特別重点調査を実施すべきとしている。

 調査は、大口径で古い構造の管路を基本に、八潮市の道路陥没現場と類似の箇所、段差があるなど腐食しやすい箇所、陥没履歴があり交通への影響が大きい箇所など、4項目に該当する箇所を最優先で実施する。

 調査にあたっては、打音検査などによる定量的な劣化調査や管路内からの地盤空洞調査といった新たな技術的方法を積極的に導入する。

 水位が高いなどにより調査が困難な場合には、下水道の使用自粛などについて住民の協力を要請する。

 下水道以外の地下管路についても、点検の実施を検討する。

 記者ブリーフィングで、家田委員長は、「インフラの危機を国民に、自分のこととして感じてもらう必要があるため、心に響くよう特別重点調査と名付けた」と説明。「あらゆる技術を尽くして調査し、あの年に下水道調査の基本的な精神が変わったと言われるくらいになってほしい」と述べ、民間企業からの提言やアイデアに期待を込めた。

 国交省によると、調査対象の延長、箇所数などは、現在洗い出しを進めている。調査は国の要請により実施することから、財政的な面を含め、自治体への支援策を検討している。

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