川俣ダムで堰堤改良 事業概要 本年度は解析や道路設計(鬼怒川ダム管理)
[2025/4/11 栃木版]
国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所は、2025年度の事業の概要を明らかにした。本年度は、堰堤維持費に約22億3000万円を計上して機器の老朽化対策のため施設の点検や修繕などを行うほか、堰堤改良費に約1億3000万円を予算化して、川治ダムの堆砂対策の検討に加えて新たに川俣ダムの堰堤改良事業に着手する。川俣ダムについてはこのうち事業費9500万円を配分して、本年度は左岸の工事用道路の地質調査・詳細設計および計測データモニタリング調査を実施する。
川俣ダムは洪水調節、かんがい用水の供給、発電を目的として、1966年に完成した多目的ダム。完成後約60年が経過しており、建設当初から設置しているダムを支える岩盤PS(プレストレスト)アンカー工の劣化が確認されている。そこで川俣ダムの支持基盤の機能を確保して安定化を図るため、本年度から岩盤PSアンカーの更新などの対策に着手する。
岩盤PS工は、ダムの右岸側で8本、左岸側で57本のアンカーを更新する計画で、アンカー長は最大70m。防食性能に優れる内部充填型エポキシ樹脂で被覆したPC鋼より線を採用し、防食性能を向上させることで長寿命化を図る。本年度は、川俣ダム両岸の岩盤で継続しているモニタリング(岩盤変位やひずみの計測)の解析を行うほか、補強工事で使う工事用道路(トンネル)の整備のための地質調査や設計を行う。なお、事業の完了予定は2037年度の見通しとなっている。
堰堤改良事業ではこのほか、川治ダムで上流域からの土砂供給量が多く、現在計画堆砂量を上回る量の土砂が貯水池内に堆砂していることから、これまで貯砂ダムの設置や堆砂掘削などの堆砂対策に取り組んでいる。本年度は3000万円を予算化し、堆砂対策のほか引き続きより効率的な堆砂対策の検討を行う。発注見通しによると、川治ダム岩盤PS工モニタリング計画検討業務は簡易公募型プロポーザル方式で、川治ダム管理用道路土砂流出対策設計業務は簡易公募型競争で、いずれも第2四半期の発注を予定している。
堰堤維持(メンテナンス)については、施設の長寿命化対策として施設の点検整備のほか、湯西川ダムで水力発電設備のオーバーホール、川俣ダムで主放流設備の修繕を行う。施設の点検整備については、ダム堤体やゲート設備、電気通信設備などの点検整備を行って洪水時や利水補給時の操作に万全を期すとともに、施設の長寿命化を図る。また、施設の損傷を防止するため、ダム湖に流れ込んだ流木の回収を継続的に行う。
湯西川ダムでは、放流時のエネルギーを活用した管理用水力発電所を保有し、ダム管理支所の照明やゲート動作時に使う電気に有効活用している。この管理用水力発電所内の水力発電設備は稼働開始から9年が経過することから、安定した継続稼働を続けるためにオーバーホールを行う。
川俣ダムの主放流設備(コンジットゲート)は、ダム堤体中の下部に設置されている洪水調節用の大容量の高圧放流設備で、ダムの洪水調節や下流への放流を行う際に使用する重要な設備となる。動作不良といった不具合を未然に防止するため、このうち配管などの更新を行う。
また同事務所では、水力発電の有効活用やプラグインハイブリッド車の活用、ハイブリッドダムなどカーボンニュートラルに寄与する取り組みを進めている。ハイブリッドダムは、治水機能の強化や水力発電の増強のため、気象予測も活用してダムの容量等の共有化などダムをさらに活用する取り組み。湯西川ダムでは引き続き、水力発電施設の新増設(民設民営)の事業化に向けた検討を進める。
同事務所では、鬼怒川上流部の五十里ダム・川俣ダム・川治ダム・湯西川ダム、および鬼怒川上流ダム群連携施設の5つの施設を一体として運用する「統合管理」を行っている。連携施設は五十里ダムと川治ダムを導水トンネルでネットワークし、五十里ダムで貯めきれない水を川治ダムで貯め置くことで、男鹿川や鬼怒川の流況改善に有効利用することを目的に造られた。
統合管理は、4つのダムの能力、配列、位置関係、流域の地形的条件、降雨などの気象特性などを把握し、これらの情報を統合して鬼怒川の高水(洪水)や低水(利水)管理を行うもの。光ケーブルをはじめ各種の無線回線を介して情報を収集し、ダム管理用制御処理設備(ダムコン)などで集約した情報を演算処理(予測計算)して適切なダム管理を進めている。