検見川送信所の処遇検討 ワークショップ開催へプロポ(千葉市)

[2019/10/23 千葉版]
 千葉市教育委員会文化財課は、花見川区検見川町5丁目に残る「旧検見川無線送信所」について、土地を含めた今後の処遇を検討することを目的に、地元住民が参加するワークショップを開く考えだ。開催業務はプロポーザル方式により選定した業者に委託する方針で、21日に募集要項などを公表しており、年度内に1回は住民の意見を聞く場を設ける予定。質問は今月30日、企画提案書は11月14日までそれぞれ受け付ける。

 プロポーザルでは委託限度額に59万9,989円(税込み)を設定。同施設の利活用をテーマとしたワークショップを、地域住民や有識者らを集めて開き、今後の利活用の検討に必要な参考意見を聴取するのが狙いで、事業者選定に当たっては議事進行役(ファシリテーター)が都市開発や地域のブランディング、まちづくりなどの分野で十分な経歴があるかなどを採点する。

 市ではワークショップの開催に当たり、参加者を花見川区の住民の中からインターネットやSNSなどといった広報手段で公募し、年齢や性別のバランスを考慮しながら20~30人を選定することや、開催前に参加者を対象とする施設内見学を実施することなどを求めている。

 旧検見川無線送信所は、逓信省(その後の郵政省、現在は総務省)の東京無線電信局検見川送信所として1924年に着工、26年に第一期分が完成した建物。完成当初はRC造2階建て延べ1,295平方m(のちに改修し延べ1,374平方m)の構造・規模で、当時の逓信省経理局営繕課の吉田鉄郎氏(東京中央郵便局の設計者)が設計、近藤組(東京)が施工した。

 30年には太平洋を挟みアメリカやヨーロッパ、東南アジアなどと電話を使って通信。その後無線写真の電送実験や超短波電話の実験も行われるなどした。

 太平洋戦争終戦後の52年には日本電信電話公社(現在のNTT)が発足し移管されたが、79年9月に通信業務が茨城県内に移管されたことでその役目を終えている。

 設計は意匠面で、明治から大正初期の様式建築とは明らかに異なっており、彫刻などの様式的な表現が省かれるなど「無装飾」を基調とした内容となっており、後の合理主義的な近代建築の芽が色濃く表れているという。

 市ではこれまでに、建物の利活用に向けて文化財としての調査のほか、2010年度には建物調査を千都建築設計事務所(美浜区)に委託。15年度には水野設計(中央区)が屋上防水改修の設計を手掛け、翌16年度に施工するなどしている。

 検見川稲毛地区土地区画整理事業地内にあり、土地を含めて建物は市の所有だが、文化財としての指定はなく、敷地内への立ち入りは原則できない。住民から保存と撤去を求める声がともにあることを受けて市では、20年度以降も必要であればワークショップを再度開催するなどして意見を吸い上げ、利活用を含む以降の方針を詰めていく考えだ。

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