河川整備を加速化 年度内に川づくり計画 県が治水対策

[2020/7/23 宮城版]
 県は22日、第2回目となる「令和元年台風19号を踏まえた今後の治水対策の在り方検討会」(座長・田中仁東北大学教授)を開き、治水対策の対応方針(素案)を示して有識者と協議した。素案では、次期「見える川づくり計画」に基づき、河川改修やダム整備、堤防強化、排水機場の整備を含めた内水対策などを進め、河川整備を加速化することにしている。同計画は年度内に策定する。
 同計画では河川ごとの具体的な事業展開を示すことにしている。既存の河川整備計画よりも短い期間で取り組む事業内容を盛り込むことになりそうだ。計画の策定に当たり、まずは基本的な治水対策の方向性を定めるため、今回の検討会で有識者と議論していく。
 22日に開いた2回目の検討会には、田中座長など6人の委員が出席。あいさつで県土木部の菅野洋一次長は「近年の降雨状況や東日本台風の被災状況を踏まえ、洪水被害の防止に向け、本県の洪水対策や治水対策のあり方について検討する」と述べ、委員に対応方針の素案に対する意見を求めた。
 会合では始めに、県がこれまでに起きた洪水被害や、県の河川整備に関する現状、将来の気候変動予測などを説明した。県の管理河川は34水系325河川で延長が2134km。現況の河川整備計画は、10年に1度~50年に1度の確率で降る豪雨の規模に対応したものとなっている。
 県内の河川整備率は、2019年度末時点で37.4%の状況。要改修延長1360kmのうち、509kmが整備済み。課題としては、住居や農地側の多くで大震災前より地盤高が低くなっており、雨水排水が困難なことに加え、河川整備に相当の期間を要する点を挙げた。
 さらに河川施設の老朽化や、近年の豪雨による堆積土砂と河道内樹木の再繁茂が問題となっており、これらへの対応が必要になっているとした。
 将来予測に関しては、本県の場合、降雨量が1.1~1.2倍まで増加する見通し。年平均気温は今後100年で約4.6度上昇すると予測。1時間当たり30mmの激しい雨の発生は約2.5倍になると予測している。
 こうした状況を踏まえ、県は治水対策の基本方針に「流域治水の推進による洪水被害の最小化」を掲げ、基本的な方向性として[1]将来の降雨量を踏まえた計画作成[2]河川(ダム)整備のさらなる加速化[3]河道能力を十分発揮するための適切な維持管理の実施とダム施設の適切な更新[4]既存ダムの治水機能の強化[5]命を守る避難態勢強化に向けた河川情報提供の充実強化[6]「流域治水」の考え方に基づく防災・減災対策の推進──の6項目を示した。
 将来雨量を踏まえた計画作成では、10年に1度の豪雨量を、これまでの河川整備計画は最低限の整備水準としているが、今後は気候変動に対応した整備水準として捉える。併せて、必ずしも連続堤によらない霞堤や輪中堤などによる河川整備を検討する。
 河川整備の加速化では、河川改修とダム整備による水害リスクの軽減や、堤防強化による再度災害の被害軽減、内水対策による浸水被害の軽減を図る。併せて、堤防の拡幅やかさ上げ、天端舗装、法尻掘削などを行い、粘り強い堤防を目指す。
 維持管理においては、2020年度までに国土強靭化予算を活用して44万立方mの土砂撤去と59万立方mの支障木伐採を目指す。その後はさらに、91万立方mの土砂撤去や、207万立方mの支障木伐採を予定している。
 ソフト対策では、洪水に特化した水位計や河川監視カメラの整備推進、河川流域情報システム(MIRAI)のサーバー増設を計画。防災・減災対策では、下水道や雨水貯留施設の整備を促進する。
 委員からは、UAVを使った面的な河道内の情報把握や、田んぼダムの活用などが提案されたほか、いつまでに何をどこまで整備するというロードマップの必要性が提起された。田中座長も対策の「時間軸が重要になってくる」と意見した。  
 今後は9月末に第3回目の会合を開き、対応方針をまとめる。

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