県内初の防災指針策定 立地適正化計画位置づけ 宇都宮市

[2021/06/08 栃木版]
 宇都宮市は、防災の観点を取り入れたコンパクトなまちづくりの指針として、県内自治体では初めて立地適正化計画の防災指針を策定した。目標年次は概ね20年先の2037年度。市はネットワーク型コンパクトシティを将来のまちづくりに位置付けており、市都市計画課によると、水災害や土砂災害といった各種災害リスクに対し、防災性や安全性を高めることで、居住や都市機能の誘導を促進することが狙いという。国交省は20年6月、都市再生特別措置法を改正し、立地適正化計画への防災指針の記載を義務付けている。

 防災指針策定の背景には、令和元年東日本台風により市街地を流れる一級河川田川をはじめ、同姿川やこれらの河川に流れ込む中小河川が氾濫。河川沿いの家屋を中心に床上浸水636件、床下浸水390件に及ぶ大きなダメージを受けた。

 市は水災害対策に重点を置き、「総合治水・雨水対策推進計画」に基づく取り組みと連携しながら、誘導区域における東日本台風と同規模の降雨に対する浸水被害の軽減・解消を目指すとともに、想定最大規模の降雨に対する安全性をより高めるため、総合的な治水・雨水対策と連携しながら、防災まちづくりを推進するとしている。

 施策の推進では、市街化区域の都市機能誘導区域や市街化調整区域の地域拠点の地域特性を踏まえ、都市機能誘導施設(医療・福祉、商業等)の立地に対する誘導支援策と連携。浸水対策の促進や雨水貯留・浸透機能など多面的な機能を有するグリーンインフラ(都市農地など)の保全・活用による防災機能の強化に加え、水害ハザードエリアにおける開発抑制を含め、市独自の防災まちづくり施策を位置付けるとした。

 市は都市機能誘導区域の約17%が洪水浸水想定区域となっており、浸水深は約0.5m。一部には3m以上も想定されるとした。また、居住誘導区域の約9%が浸水想定区域となっており、田川沿いには家屋倒壊等氾濫想定区域が存在しているほか、局地的な豪雨時には一部地域で内水被害が発生、リスクの低減が必要とした。

 市街化調整区域では、地域拠点と小学校周辺の約29%が洪水浸水想定区域。特に、岡本北小学校の一部には家屋倒壊等氾濫想定区域が存在し、リスク低減が必要とした。

 防災指針では、水災害リスクのほか、土砂災害や滑動崩落に伴う大規模盛土造成地といったリスク分析と課題を抽出している。

 なお、立地適正化計画策定済の本県市町は、宇都宮のほか、小山、真岡、大田原、那須塩原、下野、芳賀の6市町。県は19年7月に公表した「とちぎの都市ビジョン」に災害に強い都市づくりとして▽災害に強い都市構造の形成と防災・減災を考慮した土地利用▽緊急時の避難路や避難所など防災空間の確保▽災害時における応急対策に加え、復旧・復興も考慮した都市づくり-の必要性を推進すべきとしている。

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