国で平準化進まず 業務の運用指針 昨年度の調査結果を公表(国交省)

[2022/4/21 栃木版]

 国交省は、2021年度の業務に関する運用指針調査の結果を取りまとめて公表した。測量・調査・設計業務の発注関係事務が品確法運用指針に基づいて実施されているかを把握するための調査で、その結果、ダンピング対策は特殊法人等で約3割、市区町村では約半数が未導入で、履行時期の平準化は国の業務で8割以上が第4四半期に履行期限が集中している状況にある。プロポーザル方式については市区町村の導入が遅れており、総合評価落札方式は市区町村の導入が1割未満にとどまっている。 =2面に県内発注者別の取り組みの実施状況

 公共工事の測量・調査・設計業務は、建設生産プロセスの上流に位置し、社会インフラの品質を確保する上で非常に重要な役割を担っていることから、19年6月に改正された品確法で広く法律の対象に位置づけられた。

 この法律に規定する発注者の責務を踏まえ、発注者共通の指針として発注関係事務の運用に関する指針が定められている。国はこの指針に基づいて、発注関係事務が適切に実施されているか毎年調査し、結果をとりまとめて公表している。

 調査対象となる公共工事の発注者は、国(19機関)、特殊法人等(124法人)、地方公共団体(47都道府県、20指定都市、1721市区町村)となる。調査対象時点は21年7月1日現在で、一部の項目は20年度末時点となっている。

 調査項目は▽ダンピング対策(低入札価格調査制度、最低制限価格制度の導入等)▽履行時期の平準化(第1四半期~第3四半期、第4四半期を履行期限とした割合)▽入札方式の導入状況(プロポーザル方式・総合評価落札方式等)▽その他(発注見通しの公表、調査対象年度の入札・契約状況等)-となる。

 業務に関するダンピング対策は、国、都道府県、指定都市では14年の品確法改正以降進捗しているが、市区町村は約半数が依然として未導入で、特殊法人等も約3割が未導入となっている。国交省では、導入の遅れている発注者に導入を働きかけ、低入札価格調査制度または最低制限価格制度の適切な活用を推進していくとしている。

 業務に関する履行時期の平準化は、納期の割合について第1四半期~第3四半期の割合が特殊法人等、都道府県、市区町村では約4割、指定都市では約3割、国では約2割となった。納期が年度末に集中することを避けることで、労働時間の分散や休日を取得しやすい環境整備につながるため、年度当初からの予算執行の徹底、繰越明許費の適切な活用、債務負担行為の積極的な活用などで適正な履行期間を確保しながら、業務の履行時期の平準化を推進していく。

 適正な履行期間の設定状況は、都道府県で約9割、指定都市では8割が業務の履行期間の設定に当たって参考にする基準等を策定、または他団体の基準等を準用している。一方、国では基準等を策定、または他団体の基準等を準用しているのは約4割にとどまる。働き方改革への対応推進には適正な履行期間の設定が不可欠であり、発注担当者による履行期間の設定にバラツキが出ないようにするには基準等の策定が必要なことから、特に年度末の履行期限設定としないような働きかけを実施していく。

 設計変更ガイドラインの策定および設計変更の実施の状況は、ほとんどの団体が設計変更を実施しており、都道府県では約8割、特殊法人等、指定都市では約7割が設計変更に関する指針を策定または準用している。一方、国、市区町村では指針を策定または準用しているのは約5割にとどまる。必要と認められるときに設計変更を行うことは、受注者の適正な利潤を確保するために不可欠なことから、ごく一部の設計変更を実施していない機関に対して理由などを確認し、全ての団体で必要と認められるときに設計変更が行われることを目指す。

 業務に関するプロポーザル方式・総合評価落札方式の導入について、プロポーザル方式は国、特殊法人等、都道府県、指定都市で7割以上、市区町村では半数近くで導入済。特に特殊法人等と都道府県、指定都市では、多くの発注者が導入済みとなっている。他方で、総合評価落札方式は相対的に導入が進んでいない状況。プロポーザル方式、総合評価落札方式の制度導入割合が比較的高い都道府県、指定都市でも、20年度の発注実績はプロポーザル方式、総合評価落札方式が全体の1割程度だった。各発注者に対し、適切な入札契約方式を選択することの重要性について引き続き普及啓発に努めていく。

 発注関係事務の改善に向けた取り組みとしては、地域ブロック発注者協議会の設置やブロック監理課長等会議の開催、都道府県公契連との連携強化を図り、これらを通じて調査結果を共有し、発注関係事務の改善に向けたさらなる取り組みを推進していくとしている。  本県の状況を見ると、県は入札制度について一般競争を本格導入し、総合評価落札方式は建築コンサルタント業務と土木コンサルタント業務で試行導入。プロポーザル方式は、建築・土木コンサルと調査業務で試行導入している。

 ダンピング対策は、建築コンサルタント業務および土木コンサルタント業務で低入札価格調査と最低制限価格調査を併用し、測量業務と調査業務は最低制限価格調査のみを導入。予定価格はいずれも全案件で事前に公表し、最低制限価格は全案件で事後に公表している。低入札価格調査基準価格は、導入する建築コンサルタント業務と土木コンサルタント業務で事後公表している。

 平準化の取り組みとして、債務負担行為は4業務ともに活用している。20年度の競争入札の平均落札率は、測量業務が95.0%、建築コンサルタント業務が89.0%、土木コンサルタント業務が93.0%、調査業務が96.0%となっている。

 市町の入札制度の状況は、一般競争を足利市、栃木市、日光市、さくら市、茂木町、那珂川町で本格導入し、塩谷町は試行導入。総合評価落札方式は、栃木市と野木町で試行導入している。

 プロポーザル方式は足利市、栃木市、佐野市、日光市、大田原市、那須塩原市、さくら市、下野市、上三川町、市貝町、高根沢町で本格導入し、宇都宮市で試行導入している。また、矢板市は建築コンサルタント業務で、塩谷町は建築コンサルタント業務と調査業務で試行導入している。

 ダンピング対策は、宇都宮市と足利市、栃木市、鹿沼市、日光市、那須烏山市で最低制限価格制度のみを導入。壬生町と那須町は、建築コンサルタント業務と土木コンサルタント業務で低入札価格調査制度のみを導入している。

 予定価格は、矢板市と那須塩原市がいずれも全案件で非公表、益子町と野木町、塩谷町、那珂川町は全案件事後公表で、その他の市町は全案件事前公表している。なお那須烏山市については、調査業務のみ事後公表で、その他の業務は事前公表となっている。

 低入札調査基準価格の公表は、建築コンサルタント業務と土木コンサルタント業務で制度を導入している2町のうち、壬生町が全案件事後公表、那須町が全案件非公表としている。最低制限価格の公表は、制度を導入している市町のうち日光市が全案件を事前公表し、宇都宮市と足利市、栃木市、鹿沼市、那須烏山市は事後公表している。

 平準化の取り組みとして、債務負担行為を活用しているのは栃木市と佐野市のみとなっている。

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