森林保全で条例案 身近な樹木の整備を明確化(いばらき自民党)

[2022/10/19 茨城版]
 いばらき自民党は14日、県議会棟で「仮称・緑の有する公益的機能の活用の促進に関する条例案」の記者会見を開催した。会見には石井邦一政調会長をはじめ、緑の強靭化に関する勉強会プロジェクトチームの岡田拓也座長と、下路健次郎幹事長が出席。この条例案では、道路や公園の街路樹、海岸防災林などの身近な樹木に焦点をあて、樹木の計画的かつ適正な管理を行うことを提案。また、造園技術者や樹木医などの専門的な人材の育成・確保に向けた施策なども盛り込んだ。いばらき自民党では、広く意見を求めるため、17日から30日にかけて、パブリックコメントを実施している。なお、この条例案は第4回定例会に提案される予定だ。

 あいさつに立った石井政調会長は、カーボンニュートラルや防災減災対策に向けて、樹木の適正な管理が求められる現状にあることを説明。また、本県ではこれまでにも森林湖沼環境税を活用しながら、人工林においてさまざまな施策を推進してきたことを紹介した。

 続けて、「今回の条例では、人工林以外の部分である平地林や里山林、海外防災林、さらには公園や道路の街路樹に焦点をあて、それらの樹木の適正管理について、しっかりと整備を行い、保全を行うことを示した」と説明し、これらの取り組みはSDGsに直結するものだと認識を示した。

 条例案の内容については、岡田座長が「身近にある樹木を大切にしようというのが根柢にある」と説明。森林樹木を大切にするという条例・法令はこれまでにも存在していたが、整備・管理の方法や対象となる樹木などは定まっていなかったという。そこで、今回の条例案では、こうした樹木の整備・管理を明確化していくことが目的となる。

 基本的施策には、▽緑の整備等の推進(第9条)▽目指すべき緑への誘導等(第10条)▽災害に強い緑づくり(第11条)▽海岸の緑に関する施策(第12条)▽河川の緑に関する施策(第13条)▽道路等の緑に関する施策(第14条)▽創出した緑の管理(第15条)▽公園における樹木の管理(第16条)▽公共工事等における緑の保全(第17条)▽緑の所有者等の意欲の高揚等(第18条)▽県民の理解の促進(第19条)▽民間団体等の自発的な活動の促進(第20条)▽人材の育成及び確保(第21条)──を盛り込んだ。

 ポイントとしては、公共施設にある樹木や道路・公園の街路樹、自然防災の役割をもつ樹木など、これまで日の当たらなかった樹木の保全・管理を明確化したことが挙げられる。また、民有地にある樹木であっても、公益的な役割を持つ樹木について、管理を怠ると公共・公益的に影響を及ぼす場合には、行政の支援や協力体制を築くことにも言及。さらには、県の責務と関係者の役割についても明確化している。

 条例の効果としては、松枯れ対策や街路樹の整備などが期待される。このうち、松枯れ対策では、海岸防災林である松林の一部については、民有地に植えられていることもあり、市町村では対応することができず、長年の課題となっていた。しかし、この条例では、海岸防災林の樹木の所有者は県の行う施策に協力することを明記しており、対策が一歩前進することが期待できる。

 また、街路樹では適正な管理ができず、これまでは伐採していた樹木について、定期的な植栽を行うことで管理を可能にしていく。さらに、樹木の根が舗装やブロックを押し上げるという問題には、その場所に適した樹木を選定して植えることで対応するほか、樹木医の育成・確保にも取り組むことを示している。

 このほか、民有地にある樹木の枝が道路や電線にまで伸びて問題となっている場所についても、県や市町村が実施する施策に協力することを求めており、解決につながることが期待される。

 造園業などへの影響としては、これまでよりも樹木医や造園技術者に対して、樹木診断の依頼が増える可能性がある。あわせて、適正な管理や防災減災に向けて、新たな植樹を行う可能性もあるという。

 石井政調会長は今回の条例案によって樹木の適正管理がある程度カバーできたと説明する一方、太陽光発電による林地開発については、さらに踏み込む必要があると指摘。今後は林地開発の責任の所在について、検討していく考えを示した。

 条例案はパブリックコメントを30日まで受け付ける。条文と概要については、自民党茨城県連ホームページからダウンロードすることができる。

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