スライド条項など議論 関東整備局と茨建協で意見交換

[2022/10/27 茨城版]
 国土交通省関東地方整備局(廣瀬昌由局長)と県建設業協会(石津健光会長)は24日、水戸市内で意見交換会を開催した。会合では、整備局の最近の取り組みや協会の活動状況などを互いに報告したあと、協会から提案した▽酷暑期における歩掛け改正及び標準作業量の補正▽特例監理技術者▽総合評価落札方式における難工事施工実績、難工事功労表彰の評価▽スライド条項──の4項目をテーマに意見を交わした。

 この意見交換会は、県土木部も参加して毎年開催されているもので、受注者から実際の現場で起こっている実態を聴取した上で、整備局の施策などに反映させている。水戸市の県立青少年会館には、廣瀬局長ら整備局幹部や常陸河川国道事務所など管内の事務所長らが出席したほか、県からは田村央部長ら土木部幹部が出席した。

 冒頭、廣瀬局長はあいさつで、2兆円を超える規模となった本年度予算を説明した上で、23年度予算の確保に対しても、国土強靱化、経済の好循環などの視点から関係者の協力を訴えた。頻発する自然災害については、本年は管内に大きな災害がなかったとしながら、引き続き緊張感を持って防災対応を進めていくため、業界には地域の守り手、担い手としての活動を訴えた。続けて、「働き方改革などを進めるに当たって新しいことに挑戦することは大事」と述べ、現場でも地に足が着いた取り組みが必要であり、この意見交換会でも地に足が着き、次のステップが見えるものとなるよう期待した。

 田村部長は、土木部の取り組みなどを紹介しながら、地域の守り手である業界を支援していくために引き続きの協力を求め、この意見交換には「課題共有は連携を図ることが重要」として、さらに連携を深めていく意向を示した。

 石津会長は、地域の守り手や基幹産業としての建設業の重要性を強調する一方、原材料費高騰などで大きな影響を受けている昨今には、「先が見えない難しい状況」と指摘。働き方改革やDX、2024年問題など対応を進めていることを紹介し、頻発する自然災害には「協会としても国土強靱化として防災、減災、国土強靱化を進め、連携を図りながら万全を期していきたい」と語った。

 議事ではまず、整備局からの情報提供として、本年度の予算概要や上半期の執行状況、働き方改革と担い手確保への取り組みなどを説明。協会からは、災害対応や生産性向上、働き方改革、担い手確保、イメージアップに向けたそれぞれの取り組みについて紹介した。

 意見交換では、本年度のテーマに挙げた4つの議題について意見を交わした。このうち、「酷暑期における歩掛け改正及び標準作業量の補正」では、今後も酷暑が続くことが予想されるため、熱中症に対する現場管理費補正の試行とは別に、特別補正や特別歩掛けなどの検討を要請。これに対しては、整備局や本省でも十分認識し、必要性を含めて検討を実施しているとして、理解を求めた。

 「特例監理技術者」については、20年に改正された監理技術者精度運用マニュアルに伴う活用状況や実績などの説明や、監理技術者補佐の経験者に対する総合評価落札方式での加点などを訴えた。これには、本年度の活用状況を説明した上で、総合評価への加点には監理技術者補佐なども対象としているものの、「過去の同種工事の経験」への加点は制度ができて間もないとして、今後の状況を見ながら必要に応じて検討する意向を示した。

 「総合評価落札方式における難工事施工実績、難工事功労表彰の評価」では、技術者や現場代理人の評価期間が4年となる一方で、企業の技術力に対する評価は1年間となっているため、対象期間の延長などを要請。整備局では今後の状況を見ながら検討を進めるとした。

 「スライド条項」については、本年7月にあった国交省の運用改定に謝意を示す一方、現行では対象工事費の1%を控除した額となっている増額対象の変更金額に対し、1%ルールの撤廃や条件緩和などを要請するとともに、手続きの簡素化や弾力的な運用などを訴えた。これに対し整備局は、事務負担の問題から今回は従来通りとなっているとしながら、購入価格の証明が難しい場合や「2カ月の残工事」についてはあくまでも「原則」だとして、事前に事務所に相談するよう促した。これについては、質疑でも石津会長から意見が出され、全体的に利益率が低下していることが全国的な話題となっていることを指摘しながら、1%の枠について検討するよう要請した。

 自由討議では、整備局から県内の主要事業や圏央道の整備効果などについて説明があったあと、梅原基弘土木委員長が盛土規制法の運用について、過度な負担により円滑な施工が妨げられることも懸念されるとして、検討内容や今後の見通しなどを質問した。これについて整備局では、政令案などが9月に公表されたことを説明し、今後は許可申請や区域申請は、防災マニュアルなどを検討していくとして、業界と情報共有していく意向を示した。

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