早期の効果発現を 石岡トンネルで掘削機発進式(霞ヶ浦導水事業)

[2023/2/1 茨城版]
 国土交通省霞ヶ浦導水工事事務所(小池聖彦所長)が進めている霞ヶ浦導水事業で、1月30日に石岡トンネル第1工区のシールドマシン発進式が行われた。茨城町常井の「茨城立坑」で行われた式典には、廣瀬昌由関東地方整備局長や五味宗雄安藤・間取締役副社長ら受発注者に加え、横山征成副知事ら県関係者や地元選出の国会議員、第1工区の沿線首長など来賓を含めて約80人が出席。工事の無事完成を祈るとともに、霞ヶ浦の浄化など早期の効果発現に期待を示した。

 今回シールド工事を開始する石岡トンネルの第1工区は、茨城立坑から水戸立坑(水戸市河和田)までの延長3800m(内径3.5m、外径3.9m)を結ぶもので、この事業でのシールド工事は16年ぶりの再開となる。工事は21年6月に一般競争入札が行われ、安藤・間が66億9900万円で落札した。その後、シールドマシンの製造などを進めていた。

 式典であいさつした廣瀬局長は、霞ヶ浦や桜川などの「水質浄化」や各河川の「水不足の軽減」、那珂川や霞ヶ浦での「新都市用水の確保」の3つ事業目的を説明しながら、これまでの事業経過や整備効果を解説。さまざまな経緯を経てこの式典を迎えたことを関係者に謝意を述べるともに、この事業を「流域をつないで新しい価値を創造する事業」と指摘し、「1日も早い事業効果の発現に全力で取り組んで行く」と改めて決意を示した。

 このあと来賓からのあいさつがあり、県からは横山副知事と県議会土木企業立地推進委員会の金子晃久委員長が登壇した。横山副知事は、地権者など多くの関係者に謝意を述べた上で、3つの事業目的を説明しながら「本県にも必要不可欠で重要な事業」と指摘し、今後も県としての役割を果たしていく意向を示した。

 国会議員からは、額賀福志郎衆院議員や上月良祐参院議員、加藤明良参院議員、小沼巧参院議員、堂込麻紀子参院議員、足立敏之参院議員がそれぞれあいさつに立った。額賀衆院議員は、霞ヶ浦の水質悪化など、事業が開始された経緯などを解説しながら、「空白期間もあったが、安全にできるだけ早く完成させて頂きたい」と述べるとともに、流域をきれいにして残していくことが政治の課題だとして、事業費の確保などで支援していく意向を示した。

 第1工区の沿線首長からは、高橋靖水戸市長と小林宣夫茨城町長が登壇。高橋市長は、同市にとって「千波湖の浄化が大きなテーマ」だとして、昨年8月に行われた試験通水では歴然とした効果が表れたことに触れ、素晴らしい水辺空間や都市空間の創出に向けて、本格運用に期待を示した。

 続いて、小池所長から事業概要の説明が行われ、最後に施工者の五味副社長があいさつに立った。五味副社長は、「この事業の一翼を担うことは誇りであり、その責務を認識している」と述べたうえで、同社のモットーである「安全は全てに優先する」の下に一丸となって施工し、無事故無災害での完成を誓った。

 このあと、関係者一同によるシールドマシンスイッチの押釦とくす玉開披が行われた。

 霞ヶ浦導水事業は、霞ヶ浦や桜川などの相互の水を行き来させることによる「水質浄化」と、各河川の「水不足の軽減」、那珂川や霞ヶ浦で新たな水道用水と工業用水を供給する「新都市用水の確保」の3つを目的に計画した。流況調整河川として那珂川から霞ヶ浦、利根川までの延長約45・6kmを地下トンネルで結ぶもので、1976年に実施計画調査に着手したあと、84年4月から建設工事に着手した。

 計画区間は、水戸トンネルと石岡トンネルで構成される那珂導水路(第1導水路、延長43km)と利根導水路(第2導水路、延長2.6km)の延長約45.6km。霞ヶ浦と利根川を結ぶ利根導水路は既に供用を開始し、国交省と水資源機構が共同で施設を使用している。

 那珂導水路ではこれまで、那珂川から水戸立坑までを結ぶ水戸トンネル(延長約6.8km)がほぼ完成。現在は水戸立坑と霞ヶ浦の高浜機場(石岡市三村)を結ぶ石岡トンネル(約延長24.7km)の整備を進めているところで、約3割となる2工区分(第2工区、第6工区)の延長7.4kmが09年度までに完成している。

 その後、ダム事業検証による一時中断や漁協による工事差し止め訴訟などがあったが、事業継続の方針が示されて15年度から事業を再開。訴訟も和解が成立したことから事業を本格化し、今回の第1工区は再開後初のシールド工事となる。工事には泥水式シールド工法が採用され、地上から約30~37mの深さを茨城立坑から水戸立坑へ向けて進んでいく。速度は1カ月に約380m進むもようで、貫通までには約1年ほど要する見込みだ。

 石岡トンネルでは、残る3工区分(第3工区、第4工区、第5工区)も入札手続き中で、第4工区は今月28日、第3工区と第5工区は5月19日の開札が予定されている。20年12月には事業計画の変更が行われ、全体事業費は従来(約1900億円)から約495億円増額して総額を2395億円としたほか、工期も7年延長して30年度までとしている。

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