北那須で耐震補強 県流域下水道経営評価委 24年度に経営戦略改定

[2023/8/5 栃木版]

 県流域下水道事業経営評価委員会(委員長・前橋明朗作新学院大学経営学部長)が3日に県庁で開かれ、2022年度の経営戦略の達成度評価や経営戦略の改定について審議した。達成状況は、成果指標9項目のうち5項目で目標を達成したものの、老朽化した幹線管渠の調査・点検実施状況など4項目は未達とする自己評価の妥当性を認め、引き続き事業を進めていくことを承認した。経営戦略は、24年度で策定後5年を経過することから、指標などを見直して改定することを確認した。

 はじめに、県都市整備課下水道室の五月女正和室長は「24年度には、計画期間を10年間とする経営戦略の中間年度を迎える。22年度の経営戦略の達成度評価とともに経営戦略の改定についても審議し、忌憚のない意見を出して議事を進めてほしい」とあいさつした。その後、前橋委員長を議長に議事を進行した。

 達成度評価の維持整備分野で、「処理場の処理能力」は思川浄化センター水処理施設増設工事(機械・電気設備工事)の完成により、目標値を達成した。本年度は引き続き県央浄化センター水処理施設増設工事を実施して、25年度の完成を目指す。

 「老朽化した幹線管渠の調査・点検」は、22年度に合計18.4kmの幹線管渠の調査・点検を実施し累計121.2kmが完了したものの、予算が確保できず一巡目の目標(130.4km)には達しなかった。本年度で達成するとしている。

 「改築・更新を実施した主要設備数(累計)」では、鬼怒川上流浄化センターと巴波川浄化センターで汚泥処理設備更新工事、資源化工場では汚泥焼却設備更新工事を実施したものの、半導体不足の影響により一部工事が完成に至らなかったため目標未達となった。本年度は、昨年度からの繰り越し工事の巴波川浄化センターの汚泥処理設備更新工事(機械設備工事)と大岩藤浄化センターの汚泥処理設備更新工事(電気設備工事)を実施する。

 「幹線管渠の耐震化率」は、優先順位などを精査して実施したことで、全体431カ所のうち累計274カ所の耐震化が完了し目標値を上回った。本年度は68カ所の耐震化工事を予定する。

 「中継ポンプ場・処理場の耐震化率」では、間々田中継ポンプ場の耐震補強工事を計画通り実施したことで目標を達成した。本年度は、北那須浄化センターで導水渠の耐震補強工事を実施する。

 環境分野の2指標について、「再生可能エネルギー導入等によるCO2削減量」は処理場の適正運転など、「下水汚泥の有効利用率」はセメントやコンポストの原料にできる処理先への搬出に努め、いずれも目標以上の達成となった。

 経営分野の「経常収支比率」は、電気料金の高騰に伴う支出増加により目標に到達しなかった。費用削減に努めるとともに、市町と協議の上、負担金の増額で対応する。「企業債残高」は耐震化工事等を前倒ししたことで、企業債の新規借り入れが増加して目標に達しなかった。

 委員からは経常収支比率における、電気料金高騰以外の要因について質問があり、県はそれ以外の要因はないと答えた。また、本年度については市町の負担金に反映しており、今後懸念される工事費用の高騰についても市町へ十分に説明し都度対応すると答えた。

 幹線管渠の調査・点検の未了についての質問には、補正予算で財源を確保できたため本年度中に達成すると答えた。

 成果指標を達成するため、23年度に取り組む内容は次の通り。(カッコ内は23年度目標値)
▽処理場の処理能力=県央浄化センター水処理施設増設工事(21万0700立方m/日)
▽老朽化した幹線管渠の調査・点検=調査・点検実施(一巡目100%)
▽改築・更新を実施した主要設備数(累計)=巴波川浄化センター汚泥処理設備更新工事(機械設備工事)、大岩浄化センター汚混処理設備更新工事(電気設備工事)(※22年度からの繰越し工事)(49設備・74%)
▽幹線管渠の耐震化率=耐震工事68カ所(79%)
▽中継ポンプ場・処理場の耐震化率=北那須浄化センターの導水渠耐震補強工事(19施設・36%)
▽再生可能エネルギー導入等によるCO2削減量=発電設備の安定稼働、処理施設の節電運用(3750トン-CO2/年)
▽下水汚泥の有効利用率=有効利用できる処理先への搬出継続(85%)
▽経常収支比率=経営効率化および市町負担金の増額(100%以上)
▽企業債残高=償還金と新規借り入れ予定額の差額により減少見込み(78億円)

 続いて、策定後5年を経過する経営戦略の改定について審議した。成果指標の目標値は▽第2期ストックマネジメント計画に基づいた改築・更新設備数▽第2期下水道総合地震対策計画を踏まえた施設(幹線管渠、中継ポンプ場、処理場)の耐震化率▽過去の実績等を踏まえた下水汚泥の有効利用率-などによる見直しを予定し、過去5年間の事業実績を反映して収支計画も見直す。

 本年度は素案の検討を進め、24年8月の経営評価委員会で審議を見込む。24年12月には最終案を審議し、25年1月の改定を予定する。

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