2024年問題に対応を 関東整備局と栃建協が意見交換

[2023/11/8 栃木版]

 国交省関東地方整備局(藤巻浩之局長)と県建設業協会(谷黒克守会長)、および県県土整備部(坂井康一部長)の意見交換会が6日、県庁河内庁舎で開催された。受・発注者双方の立場から公共工事の諸課題に活発に意見交換する場として、建設行政や建設業界の最近の状況など情報を交換したほか、栃建協が提案した3つのテーマについて意見を交した。このうち「建設業の2024年問題の対応」では、栃建協から時間的に余裕を持った工期の設定を求め、整備局は実情に則した適切な工期の確保に努めていくと返答した。

 議事に先立ち、藤巻局長は「総合経済対策が閣議決定され、裏付けとなる補正予算が臨時国会で今月中にも決定されると報道されている。強靭化予算は続けなければ意味がなく、しっかり予算を確保しなければならない。その際には週休2日を前提とした十分な工期を提示して、最終的には適正な利潤を確保していただき、建設業が魅力あるものとなって若い人に選ばれるよう皆さんと目指していく」と話した。

 また「来年4月には、労働時間の上限規制が建設業にも適用される。働き方改革・生産性向上を進めながら、必要な工期も確保して皆さんと頑張って行く。まだ5カ月あるので、雇用を少しでも良い環境にして来年4月を迎えることを目指したい」と協力を求めた。

 坂井部長は「担い手の確保・育成や働き方改革の推進など課題解決へ、整備局や栃建協と一層の連携を図りながら、各種取り組みを進めていきたい。災害時の緊急対応や復旧活動にも、地域の守り手として引き続きご協力を」とあいさつした。

 谷黒会長は「建設業を取り巻く状況が大変厳しいなか、2024問題や生産性向上など新しい課題への対応、担い手の確保・育成など喫緊の課題に対応し、地域建設業が安定した経営を続けるには、事業費の確保をはじめ各種制度改正に国や県のご支援をいただかなければならない」と述べ、活発な議論を求めた。

 議事はまず、整備局と栃建協それぞれの取り組み状況などについて情報提供を行った。整備局からは、23年度予算の概要や上半期の執行状況、働き方改革・担い手確保への取り組みなどを説明。総合評価落札方式におけるWLB推進企業への加点措置では、24年1月から加点対象を一般土木、建築A・B等級などまで拡大し、今後は建設コンサルタント業務を含む全ての公共工事の総合評価方式、企画競争方式に拡大すると説明した。

 栃建協は、協会の経営体質の強化や維持管理業務共同受注方式の拡充、人材の確保・育成に向けた取り組みを説明。さらに、那須支部と栃木県北建設業協同組合が建設業の魅力発信のため、写真家の山崎エリナ氏による建設工事現場の作品展やトークイベントを開催していることを紹介した。

 意見交換では、県建設業協会から提示した▽公共事業予算の確保と最優先事項である国土強靭化の推進▽広域道路網の強化▽建設業の2024年問題の対応-の3つのテーマを取り扱った。

 まず「公共事業予算の確保と最優先事項である国土強靭化の推進」では、栃建恊から将来にわたる公共事業予算の持続的・安定的な確保、道路・河川・砂防・上下水道などの社会資本整備が遅れている地方への重点投資、国土強靭化基本法における実施中期計画の今後の見通しについて要望や質問がなされた。

 整備局は「地域の守り手である建設業が永続的に安心して経営を行っていくため、必要かつ十分な公共事業予算の確保に努める。2日の臨時閣議で財政支出規模21.8兆円の総合経済対策を決定しており、強靭化には6.1兆円を投じるほか、実施中期計画の策定にむけた検討にも取り組むと記載されている」と紹介し、整備局もその動向を注視すると答えた。

 次に「広域道路網の強化」では、栃建恊から県北地域の国道4号の2車線区間の全4車線化、八溝縦貫道路や北部横断道路など広域道路網マスタープランの早期実現のほか、那須岳火山噴火に備えた直轄による火山砂防事業の検討を要望した。

 整備局は国道4号について「矢板拡幅は本年度から改良工事に着手しており、矢板大田原バイパスは調査設計と用地買収を、西那須野道路は電線共同溝工事と歩道橋工事を進めている。これより北の区間は、事業中箇所の状況や周辺の交通状況を踏まえて検討する」と回答。広域道路網は、県が進める調査に必要な支援を行うと回答した。

 県県土整備部は、広域道路網について「20年度から国庫補助を活用し、茨城県と分担しながら各種課題の整理や将来交通量調査など基礎的な調査を実施している」と説明し、早期実現に向け隣接県と調整しながら調査・検討を進めると答えた。

 日光砂防事務所は「那須岳は安定していて噴火の兆候は見られない」と話し、火山防災協議会や緊急減災対策砂防計画策定の構成機関として県と連携し引き続き支援していくほか、継続的に技術支援を行うと答えた。

 最後に「建設業の2024年問題の対応」では、栃建恊から時間的に余裕を持った工期の設定、可能な限り諸条件整理したうえで発注、協議事項に関する迅速な回答・指示、書類の簡素化の検討、労務単価や補正率の引き上げおよび現場管理費や一般管理費の率の引き上げを要望した。

 整備局は工期設定のさらなる適正化として、本年度から新たに猛暑日日数を考慮した工期設定を行うとともに、実情に則した適切な工期の確保に努めていると説明。工事発注にあたっては施工環境を整えた発注に努め、協議事項は設計審査会やワンデーレスポンスの適切な運用に努めていくと返答した。書類の簡素化は、土木工事電子書類作成マニュアルとスリム化ガイドを7月に改定し、検査書類限定型もあわせて職員や技術員に周知徹底していると説明した。

 また、積算に使用する公共工事設計労務単価は「11年連続で引き上げられ、23年度は9年ぶりに5%を越える上昇となっている」と説明し、労務費調査への協力を要請。現場管理費や一般管理費は、22年度に一般管理費の見直しを行ったと説明して、さらなる引き上げの要望を本省に伝えると回答した。

 このほか意見交換では、栃建協から次世代へ建設業の魅力ややりがいを伝える事業の一環で、官民協力でイメージ向上施策に取り組むほか、災害に派遣されている建設業者にテックフォースに準じる称号を与えてはと提案。また動画による建設DX講習の充実について提案し、整備局は「わかりやすいようにホームページを見直したい」と回答した。

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