吉田川30km河道掘削 上流部に遊水地群整備も 計画変更案示す(鳴瀬川整備懇談会)

[2016/6/22 宮城版]
 第14回鳴瀬川水系河川整備学識者懇談会(座長:田中仁東北大学大学院工学研究科教授)が21日、TKPガーデンシティ仙台(仙台市青葉区)で開かれた。昨秋の関東・東北豪雨で洪水被害が起きた吉田川の河川整備計画について、国と県はそれぞれ、同計画の変更案を示した。計画流量を見直した上で約30km区間を河道掘削し、流下能力を向上させる。吉田川、善川、竹林川の3河川が合流する黒川郡大和町落合地区付近に、遊水地群を整備する方針案も示された。

 同懇談会には大学教授や沿川自治体関係者、国土交通省東北地方整備局、県土木部の担当者ら約40人が出席した。会議の主題は鳴瀬川水系河川整備計画の変更についてで、鳴瀬川水系のうち、主に吉田川の整備計画について変更案が示された。

 鳴瀬川水系河川整備計画には、主に本流や下流域の整備計画を示した「大臣管理区間」と、支流などの整備計画を示した「知事管理区間」がある。大臣管理区間の変更案について東北地方整備局は、昨年9月に起きた関東・東北豪雨での降水量や被害状況を説明。吉田川の河道を掘削して河道断面積を拡大し、流下能力を上げる整備案を示した。

 関東・東北豪雨では、鳴瀬川は増水したものの、これまでの河川整備により全区間で計画高水位を下回って流下した。一方、吉田川は延長53kmのうち、約20kmにわたって計画高水位を上回り、大和町内3カ所で越水した。特に吉田川、善川、竹林川の3河川が合流する同町落合地区を中心に、浸水被害が起きた。

 吉田川はこれまで、昭和22年に発生したカスリーン台風の洪水規模を想定して整備計画が立てられ、落合地区での目標流量を毎秒1400立方mとしていた。関東・東北豪雨では落合地区の水位が計画高水位を1.5m上回る観測史上最高を記録したため、目標流量を毎秒1700立方mに見直す。

 この水量を流下させるための河川整備として、東北地方整備局は落合地区付近から河口部まで延長30kmあまりを河道掘削する。竹林川も、吉田川との合流部までを河道掘削する方針だ。

 これと並行し、3河川が合流する落合地区付近に、治水容量200~300万立方m規模の遊水地群を整備して下流への流量を調整する。

 整備計画の事業期間は約21年間で、29年度から具体的な事業を実施する予定。事業費は480億円を試算する。

 県も同様に知事管理区間の変更案を示し、吉田川の計画流量を現況の毎秒100立方mから毎秒500立方mに上げる。吉田川のうち、国道4号に架かる高田橋から上流側の5km区間の流下能力が不足しているため、川幅を現況の3倍にあたる42mに広げる。

 国、県とも今後はパブリックコメントを実施して県民から意見聴取し、8月に開催予定の同懇談会に県民の意見を反映させた修正案を提出する。それを経て、9月に河川整備計画を改定する意向だ。
20160622sen

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