山岡所長インタビュー 道路ネットワーク強化に意欲(首都国道事務所)
[2025/5/17 千葉版]
国土交通省首都国道事務所の新所長として、山岡敏之氏(51)が着任した。首都圏東南部5幹線道路の整備を担い、「北千葉道路をはじめ、広域幹線道路ネットワークを強化していくことが重要な課題」と語る山岡所長に、渋滞や事故防止など、地域と連携した課題解決の取り組みや、塩浜立体(東京湾岸道路・千葉県区間)をはじめとした2025年度の主な事業について話を聞いた。
──就任の抱負を。
首都国道事務所は設立から85年目を迎える。当初は維持管理を持たない改築事務所として始まり、千葉北西部を中心に幹線道路ネットワークを構築してきた。特に東京外かく環状道路(外環道)は、道路利用者、沿線自治体の多くの方が、道路整備による多大な効果を実感されている。道路インフラが地域の物流や交流の活性化、生活道路の安心安全にもつながるということを、しっかりと情報発信し、地域と連携しながら道路ネットワークの整備を着実に進めていきたい。
また、各地域ごと皮膚感というか、地元のみなさんの思いや困っていることを浮き彫りにするということが、ひいては事業への理解や、道路整備に対する満足度の向上につながると思っているので、どういった課題があるのか、しっかりと見極めたい。
──大学で建設都市工学を専攻された。
香川県で生まれ育ち、瀬戸大橋の坂出ルートが開通した時は中学3年生だった。開通イベントのブリッジウォークで実際に大橋を歩き、感動したことを今も鮮明に覚えている。当時、香川県内には高速道路がつながっていなかったが、その後、徐々に整備された。大きく変化する地元の姿を見ながら、自分もインフラ整備に携わりたいと思った。
──印象に残った仕事は。
高松市上天神町での4層構立体交差工事は、土工から橋梁、大規模架設などすべての要素がつまっており、さまざまなことを学ぶことができ、今でも自分の礎になっている。
徳島河川国道事務所では、多くの地元住民が見守るなか、8500tにもなる新町川橋(徳島南部自動車道)の大ブロックを架設した。地域住民と工事関係者の間で強い一体感の感じられる現場で、開通式はあいにくの雨だったが、地元のみなさんの笑顔が今も強く印象に残っている。
──重点的に取り組むことは。
成田空港など拠点の整備に合わせ、広域幹線道路ネットワークを強化していくことが重要な課題だと思っている。特に、外環道と成田空港を最短で結ぶ北千葉道路の整備は重要であり、1、2月に開催した説明会には、立ち見が出るほど多くの方にご参加いただいたと聞いており、地元からの強い期待を感じている。
事業化している市川・松戸3・5km区間では、関係者と連携しながら用地買収をしっかり進めていく。事業化されていない区間も、先に地籍調査で構図を明らかにしておくということが事業のスピードアップにつながるので、各自治体に協力いただいている。
20年に開通した東京湾岸道路の舞浜立体では、冠水など地域の課題を解決するため、浦安市と道路下に貯留施設の構築を進めている。塩浜立体については、今年、橋梁上部工事を2橋発注する予定にしており、事故のないよう万全の体制で臨みたい。
──防災について。
首都直下地震や南海トラフ地震など大規模災害にも緊張感を持って備えていく。首都直下地震を想定して策定した道路啓開計画(八方向作戦)がしっかり機能するよう、被災状況の把握用に取得した三輪トライクで実際に都内まで走ってみるなど、資機材の備えだけでなく、いざという時に落ち着いて行動できるよう、防災意識の向上にも努めたい。
──建設業界にメッセージを。
建設業は地域の担い手、守り手であり、社会になくてはならないパートナーだ。担い手の確保や生産性の向上が待ったなしの状況にあり、建設事業者のみなさんの悩みや課題を聞かせていただき、一緒に課題の解決や業界の魅力向上、活性化に取り組んでいきたい。
■プロフィル
やまおか・としゆき 1974年3月香川県生まれ。九州大学工学部建設都市工学科卒。98年4月建設省入省。2020年4月四国地方整備局徳島河川国道事務所副所長、21年4月同・道路部道路工事課長、22年4月同・道路部道路計画課長、23年4月国土交通省道路局環境安全・防災課課長補佐など要職を経て25年4月から現職。本省勤務に伴い23年4月から家族とともに県内在住。趣味は剣道。地元の剣友会に毎週通い稽古に励む。「剣道は“打って反省、打たれて感謝”という言葉もあるように、相手を敬い、常に自分を省みる。礼儀や所作など修行的な要素もあり、自分磨きにもなっている」