建設業128社で明暗分ける 29年増収率ランキング

[2018/8/31 栃木版]
 東京商工リサーチ宇都宮支店は30日までに、県内企業の成長力を示す平成29年(1~12月)県内増収増益企業増収率ランキングをまとめた。売上高5億円以上の増収増益企業は485社(調査対象企業1471社)で、このうち建設業は特需や災害復旧工事が一服したこともあり企業の明暗が分かれ、前年に比べ6社少ない128社となった。企業別の増収率では、総合トップが斉藤建設(日光市)で278.3%、七浦建設(大田原市)216.0%が総合3位となるなど、建築・土木工事業等を主体に建設業は6社がトップ10入りを果たした。

東京商工リサーチ
 増収率1位は斉藤建設

 建設業の総件数は、平成28年の134社に対し128社と6社の減少。製造業や販売業など他業種に比べ絶対数が少ない中で、業種全体として全業種に占める29年の構成比は26.3%で、販売業が27.4%、製造業26.8%と比べても僅差の3位となった。

 建設業は、東日本大震災後の復興需要をはじめ、25年はメガソーラー設置を含む太陽光発電工事、26年は公共工事の発注量や耐震補強工事をはじめ、庁舎建設工事など比較的大型案件の潤沢な恩恵を受けた。27年は消費税増税後の景気停滞の反動を受けた他業種に比べ、落ち幅が比較的緩やかな中で公共工事をはじめとする一定規模の発注量に支えられた。28年は関東・東北豪雨被害の本格的な復旧に加え、首都圏をはじめとする再開発事業等の恩恵を受け、24年に100社台に乗った好調さを持続した。

 29年は公共・民間をはじめ比較的潤沢な需要に支えられたが、前年まで続く特需や災害復旧工事の一服感があり、受注量は企業間で明暗が分かれた。製造と販売業の総数が増えている中で、建設業は6社減となった。

 同宇都宮支店では、30年はオリンピック特需が継続し、増収増益企業の増加が予想されるとしたものの、オリンピック以降については不透明な要素を残し、各企業はこの間に事業内容を再構築して、安定した基盤を確立する必要性に言及。好調なこの時期のチャンスを後年度に生かすべきとしている。

 建設業は経営規模が比較的小さいため、増収額が伸び率に与える影響は一般的に大きいとされるが、29年は太陽光発電関連工事などの特需の陰りや27年豪雨被災の完了など特殊要因ではなく、インフラ関連等の公共工事、民間企業から大型工事等を誘導した企業が増収増益を確保したようだ。

 建設業の業種別売上高は前年比で25.6%増の404億6033万円のプラスとなった。また、1社当たりの増収額についても3億1609万円のプラスとなっている。件数トップの建設業だが、売上高の1985億円は、4業種の中で最低となっており、比較的規模の小さな企業が大型案件を受注したことで、増収率が大幅にアップしランクインにつながったなどとしている。

 全業種における増収企業は前年に比べ10社増加し、ランキング対象企業に占める構成比は32.9%。実数では485社となり、18年からの過去12年間で件数は19年に続き4番目となっている。

 20年は全業種の総合ランキングで10位までに5社、21年も3社がランクインしていた建設業だが、22年は宇都宮ユーミー建設(宇都宮市)の1社に止まった。23年は積水ハウスが100%出資する積和建設北関東(宇都宮市)が3位にランクインしたほか、半数の5社を占めた。24年は6社に増え、25年と26年は8社までが建設業と過去7年間で最も多い数字を2年間維持し、27年は販売業と二分する形で4社となっている。28年は災害復旧工事や大型建築案件施工で完工高を倍増させた企業の増加などにより、7社と他業種を押さえ単独で1位となった。今回も6社までが建設業で占めており、好調さを維持したものの、増収全体の総数は前年に比べ6社減らしており企業間の明暗が分かれた格好としている。

 総合ランキングトップの斉藤建設は、昭和39年11月に創業した土木工事が主体の建設業者。旧栗山村を中心に営業基盤を構築、地区トップクラスの実績と知名度を有している。治山・砂防工事等の公共工事に強みがあり、ここ数年は苦戦を強いられていたものの、その反動で大きく回復した。

 総合2位のヤマヤマは製造業に分類。日光市栗山地区で唯一の生コンクリートプラントを運営している。周辺地区の建設業者に対する生コンクリートの供給を主体に、各種資材運搬事業を行っている。地区の道路整備事業等の需要回復により、増収率262.6%と2倍以上の伸びを示し売上高は6億2596万円。

 総合3位の七浦建設は、明治40年5月創業の老舗で、大田原地区では業容・知名度ともトップクラスの総合建設業者。当初は公共土木工事を主体としていたものの、最近は民間建築工事を主軸としており、公共でも那珂川町庁舎(JV)や大田原小学校(JV)の大型工事竣工で、完工高は過去最高となっている。

 総合4位のアイシークリエーション一級建築士事務所(宇都宮市)は平成15年7月創業と後発ながら、民間建築工事を主体に安定した受注基盤を構築。デザインビルド(設計施工)に徹したオリジナリティの高い設計・提案・施工が強み。ランキング対象年は大口案件竣工で増収率も倍増した。

 総合5位のクオリート(大田原市)は平成22年4月創業と業歴は短いが、地区上位建設会社の元役員が起業し、社長の経験を礎に安定した顧客基盤を形成してきた。2億円超の大型案件竣工など実績を伸ばし、大幅な増収となった。

 総合7位の青柳造園(下野市)は、祖業の造園工事をベースに、平成18年からはリサイクルセンター稼働による木材チップ加工販売を開始。対象年は民間需要で大口案件竣工があったことに加え、設備投資効果で木材チップ増加が増収率につながったとしている。

 総合9位の東興コーポレーション(宇都宮市)は、平成2年11月に設立した売買主体の不動産業者。業種はその他に分類している。輸入車販売や建築工事などの関連会社があり、グループを形成。対象年は那須烏山市内の造成用地売却のほか、高額物件の仕入れ販売も多かったことで、売上高を6億4619万円まで伸ばし増収率は182.2%となった。

 総合10位の塩那エンジニアリング(大田原市)は、昭和37年2月創業。当初はさく井工事に特化していたものの、その後管工事や機械器具設置工事といった周辺領域に進出。地区周辺の大手工場などに安定した受注基盤を構築している。対象年は3000万円前後のミドルクラスの工事案件を複数受注できたことが、増収率につながったとしている。

 総合トップテンからは外れたものの、業種別で7位に付けた竹沢建設(鹿沼市)は、大正10年創業の老舗土木工事業者。公共工事元請けを主力に事業基盤を構築。対象年は前期からの繰り越し工事が例年に比べ多く、大口案件竣工と相まって増収率アップにつながった。

 業種別8位の桜アーク(佐野市)は、大手ゼネコンOBの社長と大手サブコンOBの専務が中心となり、平成24年10月に設立。独自の工事管理手法で低コスト・高品質の工事提案を可能とし、大手企業を中心に安定した顧客基盤を有している。民間設備投資の増加に連動して、工事案件を増加させ増収率を伸ばした。

 業種別9位のウタカ産業(宇都宮市)は、昭和40年1月創業の内装工事業者。工場・商業施設などのほか、一部一般住宅新築向けを手掛け、大手ゼネコン等に深く浸透。工場関係の工事案件を数多く手がけた結果、増収率アップにつながった。

 業種別10位の佐野屋建設(鹿沼市)は、大正6年4月創業の企業をルーツとする建設会社で、建築工事を主体に土木・舗装工事を手掛ける。対象年は工場増築、中学校施設、公園整備、水害復旧など豊富な工事案件の受注で増収率を伸ばした。

 製造業分類の8位は、東武資材グループで民間火力発電所や芳賀赤十字病院、県芳賀庁舎などの大型案件が多く出荷量を伸ばした真岡生コン(真岡市)が、前年比149.3%の増収率で売上高6億3439万円。

 販売業2位は関正商事(矢板市)。関口商事が100%出資する資源リサイクル業者で取り扱いの鉄スクラップ価格相場の高騰により、前年比176.4%の増収率で売上高16億0137万円を達成。同3位は増渕組の商事部門を担う美津和商事(宇都宮市)。生コンや各種建材の販売が大幅に回復し、前年比160.7%の増収率で売上高6億5698万円。同5位は「花咲グループ」のマテハンサービス(同)。グループ会社から移管された自動倉庫分野の受注が通年寄与したほか、主力の建設機械・フォークリフト等の産業機械部門が好調で、増収率155.2%の売上高は10億0974万円を達成した。鹿沼市内で3カ所の霊園運営を手掛ける見笹石材店は販売業6位。平成26年に太陽光発電事業を開始し、対象年は下請けによる茨城県古河市で設置したメガソーラーが寄与し、前年比144.5%の増収率、売上高7億0461万円となった。

 このほか、その他業種では、3位に建材運搬と廃棄物中間処理の小澤商事(宇都宮市)が前年比140.5%の増収率で売上高8億7814万円。同4位は東リースの子会社で建設機械リース・販売・修理の大東機工(同)。地場中堅上位の建設企業への営業強化が功を奏し、増収率が前年比128.0%の売上高は5億2449万円。同5位の不動産仲介と住宅新築・リフォームのサトーホーム(小山市)は、増収率126.8%で売上高が5億6428万円。同6位は宅地造成販売の不動産業者のシーズンホーム都市開発(宇都宮市)。20区画超の分譲地販売が奏功し、増収率が124.5%の売上高14億2491万円。同7位には東武資材グループで骨材・砕石採掘業者の旭開発工業(栃木市)。真岡生コンの大型公共建築工事に連動し、増収率が122.9%の売上高は13億5071万円。同9位には、JR宇都宮駅周辺や同市中心部に自社優良物件を数多く抱える不動産業者のビッグ・ビー(宇都宮市)。増収率が117.8%で、売上高は12億7566万円となっている。

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