無堤部整備に意欲 維持管理でDX検討(利根川下流河川事務所長 内堀寿美男氏)

[2021/6/12 千葉版]

内堀所長

内堀所長

 国土交通省利根川下流河川事務所の内堀寿美男所長が4月1日付けで就任した。本紙インタビューに応じ、「流域治水」の考え方を踏まえ、スピード感をもって無堤部の堤防整備に取り組んでいくほか、河川の維持管理でデジタル・トランスフォーメーション(DX)の活用を検討する考えを示した。

 ──本県との関わりと印象は。

 「利根川上流河川事務所や江戸川河川事務所に勤務していたので、県北西地域になじみ深い。東日本大震災では、渡良瀬川河川事務所から香取市に被災調査に駆け付け、道の駅水の郷さわらで寝泊まりしたことが印象に残っている」

 「河川の視点でみると、千葉県は水の使い方が本当に素晴らしいと思う。利根川流域以外では、大きな山もなく、水がもともとないところで、かずさ掘りやため池など、さまざまな工夫がされている」

──これまで携わってきた仕事は。

 「鬼怒川の堤防が決壊したあと、下館河川事務所で激甚災害対策特別事業推進室長や副所長として、復旧工事にあたった。地域住民の意見を聴きながら、ハード対策とソフト対策を一体的に進めていくことの大切さを痛感した。国土交通省では、全国の河川の維持管理について、予算や計画づくりを担う企画専門官を担当させてもらった」

──就任の抱負は。

 「利根川全体として考えれば、上流で降った雨は必ず下流に流れてくる。流域全体で、どのように治水するのかが、とても大切な視点だ。この地域に合った“流域治水”を地元首長らと一緒になって考えていく必要がある」

 「洪水時、流域の自治体は最新の情報をほしがっている。コロナ禍でリモート方式のウエブ会議が定着しつつあるため、これを活用できる仕組みを流域全体で検討し、情報を共有できるような仕組みを構築したい」

──重点的に取り組みたいことは。

 「無堤部の堤防整備に取り組んでいく。樋管など構造物が多いのが課題だ。モノはつくれば、管理が必要となり、古くなれば改築しなければならなくなる。なるべく構造物を減らす方向で検討し、遠隔操作などの新技術も活用して、スピード感を持って取り組みたい」

──インフラ分野のDXをどうする。

 「設計や工事での導入のほか、維持管理分野で活用できないか検討していきたい。地形や堤防などの情報を全て3次元データ化し、構造物の劣化状況を“見える化”することで、維持管理の効率も上がる可能性がある。異業種の民間企業が持っている技術も積極的に活用してみたい」

──建設業界に求めることは。

 「地域の建設業界と、“できること”と“できないこと”を言い合えるような関係を構築していきたい。積極的に意見交換しながら、地元に望まれるものを整備していくことが重要だ」

 「災害時に地域を守るのは、地元の建設会社。建設業界の皆さんは、自分の住んでいる地域を自分で守りたいという熱い思いを持っている。建設業が衰退することは、地域にとって大きな問題だ。安全パトロールなどを通じて、ともにさらなる向上を目指したい」

■プロフィル

 うちぼり・すみお

 国土交通省利根川上流工事事務所に入省後、関東地方整備局や江戸川河川事務所、利根川上流河川事務所、渡良瀬川河川事務所、下館河川事務所、などで勤務。国土交通省河川環境課河川保全企画室企画専門官を経て、4月1日から現職。趣味は園芸と日本酒のラベル集め。長野県出身。1966年生まれの54歳。

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