永久堅固と安泰を祈願 思川開発南摩ダム 盛大に定礎式開催(鹿沼市)

[2022/3/15 栃木版]

 独立行政法人水資源機構思川開発建設所は12日、鹿沼市の南摩ダム建設工事現場で定礎式を開催した。思川開発事業で建設中の南摩ダム本体の本格的な盛立にあたって、ダムの永久堅固と安泰を祈願した。ダム本体は、近代的施工方法(薄層転圧工法)を用いたCFRD形式の本格的なダムとしては我が国初。このあと2年余りでダム本体や導水施設の工事などを完成させ、2024年度にダムの試験湛水や施設の試験運転を行って25年度の管理開始を目指す。

 思川開発事業は、水資源機構が鹿沼市の利根川水系南摩川で実施する洪水調節(思川、利根川の洪水防御)、流水の正常な機能の保持(異常渇水時の緊急水の補給を含む)、水道用水の供給(1秒あたり最大2.984立方m、供給先:栃木県、鹿沼市、小山市、茨城県古河市、同五霞町、埼玉県、北千葉広域水道企業団)を行うことを目的とした事業。南摩ダム本体は大成建設の施工で19年5月に準備工事、20年12月にダム本体工事にそれぞれ着手しており、ダム盛立工事を前に多くの関係者や地権者を招いて定礎式を開催した。

 開式の辞で水資源機構の金尾健司理事長は、地権者や地元住民はもとより国・県・鹿沼市の議会議員、国交省・厚労省、関係都県、利水者、関係機関、関係団体に改めて感謝の意を表し、「工事の実施にあたっては周辺環境への影響を極力軽減するとともに、デジタルトランスフォーメーションを積極的に取り入れ、工事の効率化や生産性の向上に取り組んでいく」などとあいさつした。

 思川開発建設所の滝澤宏昌所長による経過報告に続き、来賓から佐藤勉衆院議員、五十嵐清衆院議員、藤岡隆雄衆院議員、上野通子参院議員、高橋克法参院議員、足立敏之参院議員、福田富一県知事、阿部寿一県議会議長、佐藤信鹿沼市長が登壇。それぞれに、まずは地権者や地元の協力へ感謝の意を表すとともに、工事の無事故・無災害での完成や、観光振興をはじめとした地域活性化に期待した。

 式典の後は定礎行事に移り、機構や大成建設が礎石を搬入した後、来賓とともに鎮定の儀、齋鏝の儀、齋槌の儀、埋納の儀を執り行った。その後、栃木県議会の小林幹夫議員の発声で万歳三唱とくす玉開披を行い、定礎式の完了を祝った。

 思川開発事業は、1969年に実施計画調査を開始し、84年から建設事業に移行した。その後、2002年の大谷川分水中止に伴う計画変更や09年から7年間におよぶダム検証などの経緯をたどって、20年12月に南摩ダム本体の建設工事に着手した。またこの間、全80世帯の移転を08年までに完了させ、ダム建設に伴う補償工事として、ダム建設予定地を通る道路の付替工事を先行して進めてきた。

 ダム貯水池の左岸側に計画した付替県道は、栃木県との合併施工で整備することとし、06年度に工事に着手した。トンネル5本、橋梁9橋が含まれる道路総延長約6.5kmの工事を昨年8月までにすべて完成させ、翌9月に一般県道上久我栃木線南摩工区として全線が供用を開始した。ダム貯水池周辺の山林にアクセスするための付替林道も、16年度に工事に着手して現在、鋭意工事を進めている。

 主要施設は、大芦川および黒川と南摩ダム貯水池をつなぐ導水施設に19年11月に工事に着手し、現在、水路トンネルの掘進作業を実施している。大芦川導水路は延長約6kmで、最大通水量は1秒あたり20立方m。黒川導水路は延長約3kmで、最大通水量は1秒あたり8立方mで計画している。

 南摩ダム本体は、堤高86.5m、堤頂長359m、総貯水容量5100万立方mの規模。19年5月に準備工事、20年12月にダム本体工事にそれぞれ着手した。ダム形式はコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(CFRD)で、近代的施工法で建設されるCFRDとしては同機構の徳山ダムの上流二次締切堤、国道交通省の苫田鞍部ダムに次いで全国3番目、本格的なダムとしては国内初となる。

 CFRDはロックフィルダムの一形式で、堤体をロック材で盛立し、上流側表面をコンクリートフェイススラブで被覆することで遮水性を持たせる構造のダム。一般的な特徴としてECRD(土質遮水壁型ロックフィルダム)に比べ、堤体上流法面勾配を急にすることができるため、堤体積を小さくできる。

 思川開発事業の工期は1969年度から2024年度までで、総事業費は約1850億円。21年度までの累計は約1317億円で、進捗率は約71%となる。これまでに用地取得や家屋移転、代替地造成、県道改良、付替県道が完了し、付替林道は69%(全体約17.7kmのうち12.3km)の発注を終えている。

 ダム本体および関連工事は、仮排水路トンネルと準備工事が完了し、基礎掘削とダム本体工が発注済み。昨年11月までにダム基礎の掘削がほぼ完了し、現在、堤体の盛り立て工事を進めている。管理設備はこれからの発注となる。導水路や送水路、関連工事は、黒川取水放流工と大芦川取水放流工、黒川導水路と大芦川導水路、南摩注水工、送水路、南摩機場のいずれも発注済み。21年度の予算額は約147億3800万円で、本体工事導水施設工事、付替道路工事などを実施している。

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