簡単活用型を導入 ICT活用 1000立方m以下の土工にも適用(県検査指導課)

[2022/3/30 茨城版]
 県土木部検査指導課はこのほど、ICT活用促進工事に関する要領を4月1日付で改定することを明らかにした。今回の改定では、ICT活用工事への参加をさらに活性化することを目的に、「チャレンジいばらき簡単活用型」を導入する。新設する同型では、詳細な3次元設計データを必要としない簡易なICT施工とし、これまで以上に部分的な活用を認める。そのため、ICT活用への入門編や小規模工事への活用などの役割を果たすことになる。土工量についても、これまでの下限値を撤廃。これにより、1000立方m以下の小規模な土木工事にも適用することが可能となった。同課では簡単活用型の周知を図るため、新年度には県内各地で研修会を開催する予定だ。

 本県がこれまで実施してきたICT活用促進工事の方式は、土工では発注者指定型と受注者希望型、チャレンジいばらきI・II型の4方式を展開。このうち、チャレンジいばらきI・II型は本県独自の方式となる。

 I型は3次元データの扱いについて、県内で可能になることを目的に、県内業者に任せる形式。一方、II型はICT建機を使用する必要はないが、建設会社自らが3次元測量と設計を実施する方式。ICT工事の中で、生産性向上のカギとなる3次元データの扱いに受注者が慣れ、今後のICT施工へスムーズに対応できるようになることを目的としている。

 県ではこのように、ICT施工へ参入しやすくなる方式を創設し、活用促進への取り組みを進めてきた。その結果、ICT活用工事は年々増加傾向にあるという。ただし、県土木部の発注全体から見ると、5%程度に留まっていることが現状となっている。

 これを受け県土木部では、建設産業の担い手確保・育成に向けて、ICT施工のさらなる促進や、施工技術以外のデジタル化を推進することが必要と考え、昨年7月に県地域建設産業ICT活用普及促進会議を発足した。構成員は県土木部に加え、県建設業協会土木委員会と建設未来協議会、CONTACT(建設戦略会議)、日立建機、コマツ茨城となる。同会議では、本年度にICT施工の更なる普及をテーマに協議を実施。その内容を踏まえ、県ではこのほど、ICT活用促進工事の要領を改定することになった。

 要領改定の主な内容はチャレンジいばらき簡単活用型の導入とICT付帯構造物設置工の新設の2点となる。このうち、簡単活用型は、これまでの発注方式よりもさらに部分的なICT活用を認める内容となった。

 具体的には、3次元設計データ作成が必須となり、加えて、ICT施工と出来形管理のいずれかを選択することが求められる。なお、3次元測量と3次元データ納品については対象外とする。

 これは、3次元測量に必要なドローンやソフトなどの設備投資が、ICT施工参入へのハードルとなっていると判断したことが理由となる。そのため、3次元設計データの作成に求める内容も、すべての2次元図面の3次元化は不要とし、活用する部分のみで可となる。データの作成にあたっては、エクセルで作成したものや、ICT建機上で作成する簡易的なもので条件を満たすことになる。ただし、この簡単活用型は、建設業者にICT施工のメリットを感じて、導入に取り組んでもらうことを目的としているため、データの作成は自社で行うことが必須となっている。

 ICT施工についても、求める内容のハードルを低く設定。フルスペックのICT建機ではなく、既存の建機にマシンガイダンスを後付けすることを想定している。マシンガイダンスでは、建機の自動制御はできないが、オペレーターが手元で掘削の深さを確認しながら作業することが可能になる。その結果、丁張や検測が不要となり、生産性と安全性向上を実感することが期待できる。さらに、簡易的な活用であっても、成績評定において評価の対象になるという。

 対象となる土工量は3000立方m未満の工事すべてに適用。今回の改定により、下限値であった1000立方mを撤廃しており、1000立方m以下の小規模の工事にも対応可能となった。これにより、県土木部発注工事のほぼすべての土工がICT施工の対象になる。

 この簡単活用型の導入に併せ、活用を想定しているICT付帯構造物設置工(出来形管理)を、国に準じてICT活用促進工事の対象工種として新設する。同工事は原則、ICT土工とICT舗装工の関連施工工種として実施する。ただし、簡単活用型の場合、付帯構造物設置工(出来形管理)のみでの実施を可能としている。

 今回の導入について、県検査指導課の担当者は「簡単活用型はICT施工に比較的取り組みやすい方式を設定している。これを機会に新規で取り組む会社が増え、ICT施工の取り組みが活性化すれば」とコメント。また、小規模工事においては、この簡単活用型が標準になることに期待を寄せた。

 同課では、このやり方や制度を字面だけで理解するのは、困難だと判断。そこで、新年度には県内各地で研修会を開催し、建設業者へ周知を図っていく考えだ。

 詳しい問い合わせは、県土木部検査指導課(電話029-301-4370)まで。

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