獣害対策の対策強化 県民税事業評価委員会 事業の中間見直しを協議(栃木県環境森林政策課)

[2022/11/5 栃木版]

 県環境森林政策課は4日、県庁北別館の会議室で2022年度第2回の「とちぎの元気な森づくり県民税事業評価委員会」(委員長:阪田和哉宇都宮大学准教授)を開催した。今回はとちぎの元気な森づくり県民税事業の21年度の評価のほか、とちぎの元気な森づくり県民税事業(第2期)の中間見直しを実施し、この中間見直しに関する意見書の骨子案を協議した。見直しの方向性は、税による最重要施策である再造林で森林の若返りを図るとともに、その阻害要因となっている獣害対策の強化を検討するほか、森林環境譲与税の活用促進に向けて市町への支援を継続する。

 議事に先立ち、渡辺順一環境森林部次長兼環境森林政策課長は「とちぎの元気な森づくり県民税事業評価報告書案のほか、本年度は県民税事業の中間見直しの年度となっており、忌憚のない意見をいただきたい」とあいさつ。阪田委員長も「次年度以降の事業の適正な執行、ひいてはとちぎの元気な森を未来に引く次ぐことにつながる」と述べて、活発な議事を呼びかけた。

 議事はまず、事務局からとちぎの元気な森づくり県民税事業の評価報告書(案)を説明した。総合評価として、21年度は重点取り組みである森林の若返りをはじめ、各事業とも着実に実施され、森林の公益的機能の維持増進に効果を発揮し、とちぎの元気な森づくり県民税、森林環境譲与税事業ともに適正に実施されたと評価した。

 とちぎの元気な森づくり県民税事業のうち、未来の森整備事業では計画455haに対し341haの再造林・樹種転換が行われたが、ウッドショックの影響で生産活動(伐採)に比重が置かれた分、再造林の実施率が75%と一昨年までと比べて下がっている。また、獣害に苦しむ地域への対策が必要としている。

 里山林整備事業は、24市町で計2460haの整備・管理が行われ、特に管理は体制が整わないことなどを理由に、計画値3490haに対し1502haと43%にとどまっている。森林所有対策事業は、県森林組合連合会による地籍調査事業(1208ha、3市町)への支援が行われ、計画的に進捗している。

 とちぎの元気な森づくり県民税事業と森林環境譲与税事業の一体的評価については、19年度に実施した使途の整理に基づき、適切に実施されていたと評価した。森林環境譲与税の執行率は、県の89.8%に対し市町は57.7%にとどまっているため、今後も県の積極的な支援が重要としている。

 委員からは、24年4月の開校に向けて整備を進めている林業大学校について県民に広く周知するため、その説明を報告書に盛り込むよう指摘があり、県は指摘の通り説明を追加すると返答した。この追加以外は、報告書案が了承された。

 とちぎの元気な森づくり県民税事業(第2期)の中間見直しではこれまで、6月の第1回委員会で課題を整理し、そのあと市町への意見照会や県民・林業団体へのアンケートを実施していた。今回の委員会では意向調査結果も踏まえ、後期事業での対応策を検討し、12月の第3回委員会で意見書(案)を取りまとめる。

 見直しの方向性として、未来の森整備事業では税による最重要施策である再造林で引き続き森林の若返りを図るとともに、その阻害要因として懸念される獣害対策の強化を検討することで、計画目標達成を目指す。

 里山林整備事業は、担い手の高齢化やコロナ禍による影響を踏まえて、地域の実情に応じた里山林管理への支援を検討する。森林所有対策事業は、引き続き森林の地籍調査を着実に実施する。

 森林環境譲与税は、引き続き活用促進に向けた市町支援を継続する。なお、県民税との役割分担は、今後の実績・効果によりその必要性を検討することとし、中間見直しにおける再整理は実施しない。

 委員からは、未来の森整備事業について獣害対策を各地域の現状に合わた対策とすることを求める意見やスマート林業の活用促進を求める意見など、里山林整備事業で里山整備の一部を学校の行事で実施する意見や森林クラウドの公開を提案する意見が出た。また全体を通して、高齢化が進む中で若い人をどのように巻き込んでいくかや、セカンドキャリアとしての林業の可能性についての質問もあった。

 委員会は最後に、中間見直しに関する意見書の骨子案についても協議した。次回は12月に本年度第3回委員会を開催し、中間見直しの意見書案を協議する。

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