総和配水場を新設 新水道ビジョン 水道事業の広域化(古河市)

[2023/01/19 茨城版]
 古河市はこのほど、22-31年度の10年間における新水道ビジョンを策定した。これは水道の理想像を「みずからきりひらく未来の古河市」とし、安定した水道サービスを提供し続けるために、課題の解決に向けて積極的に取り組む指針とする。この理想像を実現するために、「安全」「強靭」「持続」の3つを基本方針に定め、それぞれの観点から取り組みを推進する。計画期間である10年間のうちに総和配水場の新設や配水ブロックの増設などを行うほか、水道事業の広域連携に向けた検討を進めていく。

 新水道ビジョンでは、基本方針ごとに基本目標を設定した。「安全(いつでも安心して飲める水道)」では、安定水利権の確保と地下水の保全を掲げる。「強靭(災害に強く、たくましい水道)」では、管路の更新と水道施設の更新、災害に備えた安定給水。「持続(いつでも、いつまでも供給を続けられる水道)」では、健全経営の維持と水道事業の広域化を基本目標とする。

 このうち、安定水利権の確保のためには、水資源機構が進めている思川開発事業への参画が必要だと指摘。栃木県思川支川に建設中の南摩ダムが24年度に完成する予定で、完成後には安定水利権を取得すると同時に、水源開発に係る費用負担が発生する。開発費における市の負担額は約99億8000万円、ランニングコストは年額約1億1000万円が必要だと試算している。

 本市の利根川水系思川からの取水の現況は「暫定豊水水利権」となる。これは、水資源開発費用の負担がない反面、河川の水量が減少した場合は他団体よりも先に取水が制限され、万が一の場合は水道水の供給に支障をきたす不安定な状態となっている。この課題を解消するためには、思川開発事業への参画が不可欠だという。

 地下水の保全では、地下水汲み上げによる地盤沈下などの影響を解消する必要がある。三和地区では8本の深井戸地下水と、県の県南西広域水道用水からの受水を水源とする三和浄水場により水道水を給水しているが、将来的には表流水に転換することが条件となっている。思川開発事業完了後には、水源を地下水から思川浄水場からの送水に切り替えることが求められている。

 その際には思川浄水場から三和浄水場まで送水することが必要となり、総和地区に配水場を築造して送水管を整備していく。事業完了後には、三和浄水場の地下水は緊急時の予備水量を残して思川表流水に切り替える。財源は34年度を時限措置とする国の交付金を活用するとともに、他団体との広域連携を検討する。

 概算事業費は、総和配水場整備に約24億6000万円、送水管整備は思川浄水場から総和配水場まで約23億7000万円、総和配水場から三和配水場まで12億5000万円を見込む。三和地区の1日当たりの取水量は1万3350立方m。現行は地下水(1万1350立方m)と県企業局からの受水(2000立方m)だが、切替後は地下水を4000立方mに減らし、思川表流水7350立方mに置き換える予定だ。

 管路の更新では、21年度末の水道管路の総延長約1013kmのうち、経年化管路は109km(10.8%)となる。しかし、30年度以降は急激に老朽化が進み54年には、ほぼすべての管路が経年化管路または老朽化管路となる見込みで、計画的に更新していくことが求められる。また、石綿セメント管は延長約60kmが布設されていたが、16年度から更新事業を開始し、残りは約22kmとなっている。

 水道施設の更新では、思川浄水場を対象に工事を実施する。市内にはこのほか、三和浄水場と古河浄水場、駒羽根配水場が稼働している。思川浄水場は旧古河市と旧総和町、栃木県野木町の共有施設として1974年に給水を開始。市の総給水量の約70%を占めているが、建設後49年が経過し、更新時期を迎えている。

 近年、思川においてカビ臭が検出され、22年1月には浄水処理工程の一部に粉末活性炭注入設備を増設した。思川浄水場では耐震性を確保するため、施設の耐震化と増強を行う。水道水の供給を停止せずに更新するため、思川流域の新たな場所に浄水場と取水導水施設を整備する。また、25年度の安定水利権獲得に伴い、三和地区への配水にも対応する予定だ。処理水量は現在の1日あたり約5万2000立方mから約6万2000立方mへ増やす予定で、概算事業費には196億8000万円が見込まれている。

 古河浄水場は建設後59年が経過し、法定耐用年数の60年を迎えるが、最も古く機能維持のため旧古河地区へ配水している。三和浄水場は耐震化されており、三和地区へ給水されている。

 災害に備えた安定給水では、総和地区に新たな配水ブロックを整備する。市内の配水ブロックは思川浄水場を拠点とする古河・総和地区と、三和浄水場を拠点とする三和地区に分かれているが、安定給水を確保するために新たな配水ブロックを整備していく。これらの配水拠点を送水管で連絡することで、配水管網のバックアップ機能を確保する。送水管など管路整備費には83億7000万円を投じる。

 健全経営の維持では、今後の単年度あたりの費用に水源開発のダム建設負担金に3億8000万円、ダム維持管理負担金に1億1000万円を試算。主な施設の更新・整備費には、三和地区の水源切替に1億8000万円、思川浄水場の更新に5億6000万円、配水ブロック構築に2億1000万円が見込まれる。

 水道事業の広域化では、22年度に古河市をはじめ、結城・下妻・常総・筑西・坂東・桜川・つくばみらい市、八千代・五霞・境町の合計11市町で構成された県南西広域地域部会による研究会を設置。23年度には準備会を設立、24年度には法定協議会を設立し、25年度の統合、経営の一体化を目指す。

 新水道ビジョンは、水道施設の老朽化と人口減少から水道を取り巻く環境がより一層厳しくなることが予想されることを踏まえて、これまでの生活や経済活動を支えてきた水道の恩恵をこれからも受けることができるよう、目指すべき将来像とその実現に向けた施策を示すもの。目標年度は、市総合計画との整合性を図り、最終年度である35年度までの期間を見据えたうえで、当面の計画期間を31年度までの10年間とする。市の計画給水人口は13万9600人、計画1日最大給水量は5万4000立方mとなる。

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