TX延伸は土浦方面 第三者委 概算事業費1400億円と試算

[2023/4/5 茨城版]
 TX県内延伸に関する第三者委員会(委員長・岡本直久筑波大学教授)は3月31日、土浦方面案で延伸を求める提言書を取りまとめた。これまでに検討していた4案のうち、土浦案が費用対効果や実現可能性の面から最善と判断。さらに、接続先については土浦駅と神立駅の2案を検討し、収支採算性や費用便益比(B/C)などの面から土浦駅への接続に優位性が認められると明示した。土浦駅への接続では、直線距離は8.4kmとなり、概算事業費は約1400億円と試算。同日には岡本委員長が提言書を大井川和彦知事に手渡した。県では今回の提言を踏まえ、パブリックコメントなどを実施し、6月末までに延伸方面先を決定する見通しだ。

 この事業はアフターコロナを見据えた新たな地方創生の実現を目指し、県総合計画に位置付けたTXの県内延伸の4方面案の絞り込みを行うもの。4方面は、▽筑波山方面▽水戸方面▽茨城空港方面▽土浦駅方面──となる。委員会では計4回の会合を開き、各方面案を相対的に比較・評価し、検討を進めてきた。

 その際には、▽東京圏からの新たな人の流れの創出▽つくばと水戸の二大都市圏の交流拡大▽自動車からの転換に向けた公共交通のサービスレベルの向上▽TX延伸を起爆剤とした本県未来の更なる飛躍▽実現可能性(事業性分析)──の5項目について、各方面のプラス評価と懸念事項をそれぞれ分析した。

 その結果、委員会は延伸効果と費用のバランスなどを考慮し、土浦案が最善だと判断。プラス評価として、新たな沿線開発・企業誘致などによる人流の創出を指摘。また、水戸駅からつくば駅までの時間短縮効果による大都市経済圏の形成や、2路線の結節による自動車からの転換も期待できるとした。単年度収支は4案の中で最良となり、B/Cについても4案の中で最も高い0.6となったことから、実現可能性が最も高いと結論付けた。

 なお、採用されなかった3案の懸念事項として、茨城空港案は「空港の着陸便数の制限があり、利用者増の制約となりうる」、水戸案は「路線長が最も長いため、建設費が約4800億円と最大で単年度収支も年間58億円の赤字と最低」、筑波山案は「JR常磐線との結節点をもたない」などを挙げている。

 続けて、土浦案を採用した場合、土浦駅と神立駅のどちらに接続した方が効果が高いか比較検討を行った。潜在的な発展可能性については、両駅とも同程度と指摘。土浦駅では接続に難工事が想定され、概算事業費は土浦駅よりも神立駅の方が低いが、収支採算性やB/Cについては土浦駅の方が神立駅よりも高いという。総合的に判断した結果、接続先は土浦駅の方が優位性が認められると示した。

 土浦駅への接続の直線距離は8.4kmとなる。土浦駅の南側から接続する計画で、台地部では地下構造を採用する。桜川の南側から地上に出て、川を跨いで駅に接続することを想定。概算事業費は約1400億円と試算した。

 土浦案の懸念事項としては、単年度収支が4案の中で最良だが、それでも年間3億円の赤字であり、B/Cも1.0を下回っていること挙げられる。そこで委員会では、従前どおりの沿線開発にとどまらず、更なる需要増加と費用削減の方策を検討する必要があると指摘。さらに、TX県内延伸と既存路線やTX東京延伸とを一体的に扱う、いわゆるパッケージとしての事業評価や費用対効果分析の実施も検討していく必要があると言及している。あわせて、延伸構想の磨き上げ・県ビジョンとの調和や、将来を見据えたまちづくり、公共交通の利用促進、関係者との調整などに取り組むことを求めた。

 委員会からの提言書を受けて、大井川知事は「この提言をしっかりと受け止め、内容を検討したうえで延伸方面の決定を進めていく。今後は課題を一歩一歩克服するよう努力していきたい」と述べた。

 今後は近くパブリックコメントを実施し、県民の意見を踏まえたうえで6月末までに方面先を決定する。方面決定後は、費用対効果を向上させる方策や、地域の計画と連携した延伸ルート、事業スキームなど、延伸の実現を高める調査を進めていく。なお、事業費ついては、当初予算で2600万円を確保している。

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