築地吉水線に調整池 県公共事業評価委員会 再評価事業の継続「妥当」

[2023/9/30 栃木版]

 県公共事業評価委員会(委員長・山岡暁宇都宮大学地域デザイン科学部教授)は29日、県庁舎内の会議室で本年度第1回の委員会を開き、県土整備部所管事業の再評価を行った。審議案件は道路事業3件と河川事業1件で、このうち道路事業の3件は個別審議、河川事業は一括審議した。これらの事業は、労務資材単価の高騰などによる事業費の変更や、用地買収の遅れによる事業期間の延伸などの見直しが図られ、委員会は4件全てで事業継続を「妥当」と判断した。

 議事に先立ち、県土整備部長の坂井康一部長は「社会資本整備を担う者としては、これまで以上にコスト意識を持ちながら、県民生活に欠くことのできない安全・安心な社会資本整備を進めることが必要」と述べ、委員に忌憚のない意見を求めた。続いて委員の互選により、山岡委員長を選任した。

 県は公共事業の再評価にあたり、事業計画に大幅な変更があるものや推定便益・推定事業費の変更がプラスマイナス10%を超える事業などについて重点的な審議(個別審議)を実施し、それ以外は一括審議を行っている。今回審議した道路事業3件は、いずれも前回評価時から推定事業費が10%を超えて増加するため個別審議を行った。

 国道400号の三島・西赤田工区は、4車線化が未了で朝夕の通勤時間帯に慢性的な交通渋滞が発生しているほか、歩道幅員が狭く通学児童をはじめ歩行者が危険なことから、延長3.1kmにわたり4車線化や歩道拡幅などを実施している。

 2012年度に事業化し、南側の三島工区0.6kmは22年3月に4車線供用している。本年度末時点の事業進捗率は事業費ベースで用地80%、工事55%、全体で67%となる見通し。今後は25年度までに用地取得を完了し、27年度に完成させる予定となっている。

 今回の事業計画変更では、前回計画(18年度)から工事費が11億円増の21.1億円、用地補償費が7億円増の22.9億円となり、全体事業費が44億円から62億円に18億円増額する。工事費増の要因は、労務資材単価の高騰で7.5億円のほか、横断歩道橋を1カ所から2カ所に変更したことで2億円、道路排水工法を変更して浸透池1カ所を整備することで1.5億円となる。用地補償費は、住宅建築資材の高騰などで増額する。

 主要地方道鹿沼下野線の小金井工区は、国道4号を補完する新設道路として整備を進めており、13年度に開通した北側の笹原工区(延長1.5km)に続いて14年度から整備を進めている。(仮称)下野スマートICから下野市南部地域を結ぶ重要な路線だが、事業区間(2.1km)が未了であり、ミッシングリンクの解消が必要となっている。事業は1期工区(0.9km)と2期工区(1.2km)に分け、本年度末時点の事業進捗率は事業費ベースで1期工区64%、全体で36%。1期工区は用地進捗率が72%、工事進捗率が41%となる。

 今回の事業計画変更では、前回計画(13年度)から工事費が1.4億円増の8億円、用地補償費が1.2億円増の13.2億円となり、全体事業費は20億円から22.6億円に1.6億円増額する。要因は、工事費が労務資材単価の高騰による増額、用地補償費が住宅建築資材の高騰など。

 また事業スケジュールも、用地取得に時間を要するため見直す。前回の計画では1期工区を14年度から18年度、2期工区を19年度から23年度で整備する予定だったが、見直しにより1期工区は26年度までに用地取得を完了させて28年度の完成、2期工区は29年度から着手して33年度の完成を目指す。

 県道築地吉水線は、交通量の多い国道293号や県道佐野田沼線と並行して整備する新設道路で、近隣には石灰・砕石工場が多く、全線の整備完了で葛生地区中心部の大型車通過交通の転換が図られる。南側の中工区(延長0.7km)は22年度に開通し、北側の築地工区(延長2.7km)は14年度に事業化された。事業進捗率は事業費ベースで用地25%、工事17%、全体で20%となっている。

 事業計画の変更では、前回計画(13年度)から工事費が4億円増の18.8億円、用地補償費が1億円増の10.2億円となり、全体事業費は24億円から29億円に5億円増額する。要因は、工事費が労務資材単価の高騰と調整池整備による増額、用地補償費が住宅建築資材の高騰など。調整池整備は、東日本台風で路線周辺の民家や田畑が浸水を受けたため整備するもので、これにより2億円を増額する。事業スケジュールも、地元関係者との設計協議や用地取得に時間を要するため変更し、完了時期を23年度から30年度に変更する。設計・協議を23年度で完了させ、用地は28年度までに完了させる。

 一括審議の一級河川杣井木川は、補助事業導入後5年が経過したことから再評価する。排水機場の排水能力不足から出水時には沿川で浸水被害が発生しており、被害軽減のため排水ポンプの増設と調節池の整備を実施している。これまでに排水機場の整備が完了し、引き続き調節池の整備を残すのみで、現計画通り26年度の完了を目指して引き続き事業を継続する。

 事業計画によると、排水能力は毎秒5立方mを増設して、既設排水能力とあわせて毎秒12立方mとする。調節池は16万立方mの規模で、用地の進捗率は事業費ベースで41%。全体事業費は23億円となっている。

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