日光道で179億円増額 道路施策懇談会 有料道路の方針検討へ(栃木県交通政策課)

[2023/10/14 栃木版]

 県交通政策課は12日、県庁で2回目となる県道路施策検討有識者懇談会(座長:根本敏則敬愛大学経済学部教授)を開催し、有料道路の現状と課題などについて県や県道路公社から説明を受けた。日光宇都宮道路(日光道)はリニューアル事業で労務費や資材費などの高騰、老朽化した設備の更新など当初計画から計179.9億円の増額が見込まれており、宇都宮鹿沼道路(さつきロード)は橋梁の耐震化や長寿命化、有料道路区間の4車線化などの事業実施に向けて、それぞれ実施方針や事業費確保の手法の検討が必要としている。

 開会にあたり、県土整備部の谷英夫次長は「本年6月に道路整備特別措置法が改正され、高速道路は期間を伸ばして補修・維持管理を実施していくことになった。本県でも、重要な幹線道路である日光道やさつきロードの維持管理に、専門的な見地からご意見いただきたい」とあいさつした。

 今回の懇談会では、有料道路の現状と課題について事務局から委員に説明した。県の有料道路は、県道路公社が管理する日光道とさつきロードの2路線。料金徴収期間は日光道が1976年12月25日から2034年5月19日までの57年間、さつきロードが1996年3月18日から2026年3月17日までの30年間としている。

 日光道は1981年10月に全線供用後、2005年6月に日本道路公団から県道路公社に移管された。15年12月には、橋梁やトンネルの大規模修繕・耐震補強「リニューアル事業」について国へ事業変更許可を申請し、事業を進めている。

 大規模修繕は、法定点検で対策を要すると判明した21橋で順次、老朽化対策を進めている。本年10月時点で、21橋のうち12橋の対策が完了し、3橋を実施中で6橋が未実施となる。またトンネルは、19年度まで2施設の対策が完了している。橋梁耐震化は、現行の耐震基準を満たしていない21橋のうち本年10月時点で12橋の対策が完了し、3橋を実施中で6橋が未実施。老朽化対策と耐震化対策の同時施工で、コスト縮減を図っている。

 このほか、料金設備は計画を前倒して路線全体のETC機器を更新しており、今後も料金徴収期間中は定期的な更新作業が必要となる。道路情報板や速度規制標識、道路照明も更新が必要で、受変電設備・発動発電機は本体の更新が必要な状況となっている。遠方監視制御装置は、20年度から4カ年かけて順次、伝送ケーブルの更新作業を実施している。

 課題としては、リニューアル事業を実施している中で労務費や資材費などの高騰、老朽化した設備の更新などの影響により支出が大きく増加し、未償還金が34年度に向けてさらに大きく膨らむことが予想される。

 事業費の増大は、耐震補強が8.1億円、大規模修繕が24.5億円、維持費(通常維持費、設備更新費)が126.4億円、ETC管理費が20.9億円の、計179.9億円を見込む。路線に求められるサービス水準維持のため、事業を継続していく必要があるが、このように事業費の増大が想定され、事業の実施方針や事業費確保の手法について検討していく必要があると説明した。

 さつきロードは、東北自動車道鹿沼ICと宇都宮環状道路を連絡する路線で、延長2.5kmのうち1.6kmを有料道路で整備して、1996年3月に暫定2車線で供用した。有料道路区間の西側は鹿沼工業団地が立地し、隣接して新たに鹿沼インター産業団地の整備も進められている。収支は交通量の伸び悩みで計画通りの通行料収入が得られておらず、25年の料金徴収期間満了時に大きな未償還金が残る見込みとなっている。

 橋梁は、4橋(うち2橋はボックスカルバート)のうち下欠高架橋と向川原橋が古い基準で設計され、現在の基準上で求められる耐震性能を有していない。長寿命化は、現時点では4橋とも比較的健全な状況を保っているが、早い段階から予防保全的修繕に努めて長寿命化を図ることが重要となる。

 また、車線数は暫定2車線で共用しているが、宇都宮鹿沼道路に接続する県管理区間は新産業団地の操業に併せて県が拡幅工事を実施しており、将来的には4車線化が必要となる。料金は、係員が現金か回数券で徴収しているが、キャッシュレス化・タッチレス化に向けて取り組んでいくことも求められる。

 実施方針の検討が必要な事業の事業費は、耐震化が橋梁2橋で3.5億円、長寿命化が橋梁2橋とボックス2基で4.5億円、キャッシュレス化が交通系ICカードの場合0.3億円、延長1.6kmの4車線化が40億円と想定。料金徴収期間の満了日が迫る中、これらの実施方針や事業費確保の手法について検討していく必要がある。

 この懇談会は、道路施策の検討にあたり客観性・透明性を確保するとともに、効率的で効果的な道路行政を推進することを目的に設置した。想定する案件は▽新広域道路交通計画の広域道路ネットワーク計画に位置付けられた路線で計画段階評価(構想段階)を実施する事業▽有料道路に関する国の許可手続きが必要な事業▽その他、担当課が有識者懇談会の意見を求めることが必要と判断する事業など-とする。

 今後のスケジュールは、24年2月に予定する第3回懇談会で事業の実施方針や今後の有料道路のあるべき姿を協議し、同年6月に予定する第4回懇談会で有料道路の今後の管理・運営のあり方に関する提言を取りまとめる。

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