労務費確保へ新ルール 建設業法等の改正 基準下回る積算・契約禁止(国交省)

[2024/2/28 栃木版]

 国は、今国会に建設業法等の改正案を提出し、適正な労務費の基準を著しく下回る積算見積りや請負契約を下請取引も含めて禁止する新たなルールを導入して賃金原資の確保を図る。また資材価格の変動に対しては、請負代金の変更方法を契約書に明記するよう求めるとともに、契約当事者双方が資材高騰リスクを共有して実際に高騰した際は誠実に協議するよう求める内容を盛り込んだ。27日の衆議院予算委員会で、本県選出の五十嵐清議員が建設産業政策や価格転嫁・働き方改革への対応を質問したのに対し、国土交通省不動産・建設経済局の塩見英之局長が答弁した。

資材価格変動で代金変更明記も

 五十嵐議員は「国ではこれまで、公共工事設計労務単価の引き上げ、建設技能者の資格や現場での就業履歴を反映させた処遇改善、新・担い手3法を踏まえた適正な工期設定による請負契約の締結や公共工事の施工時期の平準化に取り組んできたが、昨年9月の中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会による中間とりまとめを受け、賃金支払いの原資となる適切な労務費の確保や適正な工期設定などの働き方改革、資材価格の適切な価格転嫁対策に取り組んでいくことが必要」との考えを示した。

 そのうえで、まず「どのようにして適正な労務費を下請け業者にまで確保できるようにするのか」について質問した。

 塩見局長は「建設業は重要な産業であり、将来にわたって担い手を確保できるよう、処遇改善などの課題に取り組む必要がある。特に現場で働く人々の賃上げのためには、労務費を適切に確保した上で、これを行き渡らせる環境づくりが重要」との認識を示した。

 国交省ではこれまでも、公共工事では設計労務単価の引上げや、市場実勢にあった予定価格の積算などを推進することで、賃金の原資となる労務費の適正な確保を図ってきた。民間工事も設計労務単価の水準などを踏まえた適正な金額での契約締結を要請するとともに、実地を含む元請・下請間の調査に基づき改善指導を行ってきた。

 そのうえで「これらに加えて今般、建設業法等の改正案を提出し、国が適正な労務費の基準をあらかじめ示した上で、個々の工事においてこれを著しく下回る積算見積りや請負契約を、下請取引も含めて禁止する新たなルールを導入する。これにより、多くの技能者を雇用する下請事業者まで適正な労務費の行き渡りを確保することで、労務費へのしわ寄せを防止し賃金原資の確保を図っていく」と答えた。

 五十嵐議員は次に、「賃金原資にしわ寄せが及ばないようにするためにも、資材価格が変動した際の請負代金の変更協議をどのように担保していくのか」と質問した。

 塩見局長は「近年、資材価格の上昇が続く中、その価格上昇分を労務費にしわ寄せすることなく、サプライチェーン全体で適切に価格転嫁することが重要。このため、これまでに最新の実勢価格に基づく契約の締結を受発注者双方に求めるとともに、特に公共工事ではスライド条項の適切な導入や運用基準の明確化などを求めてきた。民間工事でも、契約後の資材高騰に対応した適切な契約変更について要請してきた」と説明した。

 しかしながら、民間工事の約6割で契約書に代金変更に関する条項が盛り込まれておらず、この結果、資材高騰に伴う価格転嫁ができた割合は2割未満という状況。賃金原資の確保に向けては契約の当事者間で、資材価格が高騰した場合の対応策をより円滑に協議・調整できる仕組みが必要不可欠となる。

 塩見局長は「このため今般、建設業法等の改正案を提出し、請負代金の変更方法を契約書に明記するよう求めるとともに、契約前の段階から資材高騰リスクを契約当事者の双方が共有し、実際に資材が高騰した際は誠実に協議するよう求めることで、協議・調整の円滑化を図っていく」と答弁した。

 五十嵐議員は「スライド条項は都道府県はすべてで実施されていると承知しているが、市町村での導入は45%程度と半数に満たないので、全市町村で実施されるよう働きかけを続けてほしい」と要望した。

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