若年層に「夢」ある業界を 土木工事で社会貢献 立山工業(千葉市花見川区)朝倉猛 社長

朝倉社長

朝倉社長

 「真面目に、一生懸命。」を掲げ、数多くの一般土木工事で活躍する立山工業(千葉市花見川区、朝倉猛社長)。拠点を構える千葉市や神奈川県を軸に、河川整備や住宅造成、下水道施設、橋梁下部工事などのインフラ整備による社会への貢献を続けている中、千葉市建設業協会で取り組むキャリア教育では若年層に「夢を持ってほしい」ことを熱意をもって伝えるなど、業界の発展へ積極的に取り組む朝倉社長に、建設業にかける想いを聞いた。

──貴社の歴史・沿革から

 「1952年に富山県黒部市で創業し、当時は前身となる母体の〝松井組〟として地元・黒部川でダムが整備される前の河川工事などから始まり、ゼネコンからも高度経済成長期を背景に重用され、東北や神奈川県など各地での土木工事を手広く実施するようになった。

 そんな中で1976年、富山県の4企業が合併し今の社名にもなる〝立山工業〟を設立。その後は、神奈川県や千葉県をはじめとした関東圏での仕事を扱っていった。富山県民ならではの真面目で、質の高い施工が評価され、徐々に顧客を増やすことができたと聞いている。

 そして、35年ほど前に横浜の奈良団地で整備をしていた折に、千葉県でもニュータウン事業による大型の住宅造成が始まるとの呼びかけがあったことなどをきっかけとし、1984年から千葉市花見川区三角町(現在地)に移っている。現在も、本社がある千葉県内や、東京都内、中原営業所を構える神奈川県内などを中心に事業を展開している」

検見川浜転落防止柵取換工事

検見川浜転落防止柵取換工事


──これまでの施工や「工事現場」での取り組みについて

 「創業から70年を迎える中、数多くの一般土木工事を進めてきた。千葉県では千葉市の検見川浜転落防止柵取替工事や、同じく千葉市の花見川区にある柏井浄水場耐震補強、都心と成田国際空港を結ぶ成田スカイアクセス線のスカイライナー橋台工事、圏央道ボックスカルバート、市川市にある江戸川終末処理場のシールド工事などで、県外では埼玉県にある首都圏外郭放水路や、山梨県の上野原料金所、東京都内でも地下鉄の新宿三丁目駅の躯体工事、首都高の橋台など、わが社で多くの施工を担当してきた」

スカイライナー橋台工事

スカイライナー橋台工事


──そんな中、象徴的な工事や成功談なども

 「どんな工事にも思い入れはあるので、どれか1つというのは選びにくく、どの工事も一生懸命にやってきたということが一番に思いつく。最初は下請けから始まって、直近では元請として橋梁の下部工事なども控えている。色んな失敗もありながら、地域をあまり問わず、できる工事を着実に積み重ねてきて今日があると思っているし、今後も頑張っていきたい。

 また近年では、業界を取り巻く厳しい経済状況の中で常雇職人が減ってきている中、わが社では何とか少しでも多くの職人を確保して、社会貢献に向けて全力で取り組んでいる」

圏央道ボックスカルバート

圏央道ボックスカルバート


──経済面では新型コロナウイルスや、資材高騰などの影響も大きいのか

 「もちろん、できる限りの対策は続けているが、コロナ禍は雇用の面でみると決してマイナスではないと考えている。飲食など他産業と比べられた場合、コロナの影響での倒産があまり多くない建設業は、むしろ若年層が選ぶ職業として候補にあがることが増えているという実感がある。

 経済状況でいうと、公共整備に必要な費用の中で、高騰が続く資材については予算が上がっているものの、労務単価についてはなかなか上がらず、熟練の職人達に我慢をしてもらっているのが現状だ。わが社だけでなく、業界全体として、整備に必要な対価が支払われるように、協会の意見交換会などの活動も通じて行政らへの理解を得ていければと考えている」

──千葉市建設業協会で取り組んでいる、若年層へのキャリア教育などについてうかがう

 「子ども達には夢を持ってほしいという想いでやっている。大人になれば楽しいことがたくさんあると知ってほしい。私自身も、映画〝黒部の太陽〟を子どもの頃に見て、ただ純粋に建設業が〝かっこいい〟という感情を抱いた経験があるので、今の子どもたちがゲームなどで遊ぶ際にも、そういったプラスの感情が発生するはずなんだと。始まりはそういったシンプルな動機でいいと考えている。

 またキャリア教育ということだと、良く学ぶと同時に、友達らと良く遊ぶということも重要だと伝えたい。学校の勉強は、あくまで過去の学びであり、実際に社会に出たら過去の学びだけでは通用しない。

 本来は、学校の文化祭や運動会(団体競技)、遠足などで育まれていくはずだが、今は学校側が予め段取りして失敗しないことを第一義としてしまっている側面があるように思えるので、そういった意味でも、われわれが社会の立場から教えていくことで、それを聞いて育ってくれる子どもたちに期待しているし、将来的に建設業で一緒に働くことができれば、とても嬉しい」

──貴社の展望と、朝倉社長にとって「建設業」とは

 「建設業は、生活になくてはならないインフラ整備を担うだけでなく、災害など有事の際に備えて常に準備し、対応していることから、社会への貢献度がとても高い仕事だ。さらに地元ということになると、初めは市のボランティア活動だったお祭りでの設営なども、社会への恩返しも込めて、今後も継続していく。そして、工事などで施設を完成させれば、後世にも形として残っていくことが誇りになる。

 仕事自体が社会貢献であり、一言でいうと私自身にとって建設業は〝天職〟だと感じている。今後も、若い世代に建設業の素晴らしさを伝えつつ、先行きの不透明な時代でも常に先を見据え、業界の発展に向けて力を注いでいきたい」

【プロフィル】
 朝倉 猛(あさくら たけし)1973年3月31日生まれの49歳。両親の故郷である富山県黒部市で出生し、東京都多摩市で育った。88年4月に法政大学第二高等学校入学後、91年4月に法政大学工学部、95年4月に同大学大学院に、それぞれ進学。大学院卒業後は、97年4月に佐藤工業へ入社し地下鉄工事や九州新幹線トンネル工事などに従事した。そして2003年6月に家業・立山工業へ入社すると、16年6月には同社の3代目の代表取締役社長に就任している。業界の一員として、県建設業協会の土木技術委員長や同会千葉支部の副支部長、千葉市建設業協会の土木委員長、ゼネコン協力会役員数社の担当、キャリア教育での講師も務める。趣味はスキーや旅行、富山県の立山頂上にある「雄山神社」への参拝。「人気が出る前から注目していた」というウマ娘や、ガールズ&パンツァーなどアニメについても詳しい。
東日本大震災災害復旧01

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東日本大震災災害復旧02

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東日本大震災災害復旧03

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