流域治水プロ2.0を策定 ハード対策強化やDX活用など追加(渡良瀬川河川)

[2024/3/27 栃木版]

 国土交通省渡良瀬川河川事務所は25日、第5回渡良瀬川流域治水協議会をWEB会議で開催した。今回は規約の一部改正のほか、従来の流域治水プロジェクトを更新した流域治水プロジェクト2.0の公表案を協議して、原案の通り承認した。プロジェクト2.0では、気候変動を踏まえた治水計画に見直すとともに、対策の「量」「質」「手段」を強化。「量」では河川整備計画に基づくハード対策のさらなる推進など、「質」では水害リスクを考慮したまちづくりなど、「手段」ではDXの活用による河川管理施設の品質確保や河川管理の高度化などの対策を新たに追加した。

 2021年に策定した渡良瀬川流域治水プロジェクトでは、これまで河川管理者などが主体となって行ってきた治水対策に加え、集水域と河川区域に氾濫域も含めて1つの流域として捉え、その流域の関係者全員が協働して様々な対策を総合的・多層的に取り組むこととしている。

 しかしながら、毎年のように全国で多発している水災害を踏まえ、流域治水の取り組みをさらに加速化・深化させることが必要となっている。そこで現在実施中、または予定している対策を取りまとめるとともに、河川整備を気候変動による降雨量の増大を加味したものに更新して流域治水プロジェクト2.0とする。

 檜森所長は「現在、渡良瀬川を含む利根川水系の河川整備基本方針が、社会資本整備審議会で議論されている。これに伴い、河川整備の内容もさらなる見直しが必要になると考えている。今後も新たな知見を取り入れながら進めていくが、流域の安全度を少しでも向上させるため、皆様とともに進めていきたい」とあいさつし、引き続き各構成機関の協力を求めた。

 流域治水プロジェクト2.0の更新の方向性は、気候変動を踏まえた治水計画に見直すとともに、流域対策の目標を定めて、対策の「量」「質」「手段」の強化によりあらゆる関係者の流域対策を充実させ、早期に防災・減災を実現させる。なお、全国109水系でも順次更新し、流域関係者で共有する。

 気候変動に伴う水害リスクの増大を踏まえた各主体の対策と目標は、国が概ね30年で渡良瀬川流域約7600世帯の浸水被害解消のため、追加対策として堤防整備を現計画の約2倍にあたる2万2400m、河道掘削を現計画の約35倍にあたる262万3000立方mへと引き上げ、既存施設の有効活用も実施する。

 また、市町は防災まちづくりのため立地適正化計画による適切な土地利用の誘導を図るなどの対策を、国と県、市町は避難の確保のため迅速・円滑な避難や、避難のための情報発信といった対策をそれぞれ追加する。

 新たに追加する具体的な対策として、「被害の軽減、早期復旧・復興のための対策」では新たに▽避難、水防活動に資する高台の整備▽地域・地区防災計画の作成促進・更新・普及▽霞提の保全、霞提の効果(氾濫水を戻す)の啓発▽浸水センサをはじめとするリアルタイムでの情報把握-などを追加する。

 また、「氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策」では▽気候変動を考慮した河川整備計画メニューに基づくハード対策のさらなる推進▽下水道雨水幹線等の増強・改築▽水田貯留機能(田んぼダム)の検討▽流域流木対策の推進▽既存洪水調整施設の有効活用▽既存排水機場・河川管理施設の機能強化および運用の高度化▽DXの活用による河川管理施設の品質確保/DXの活用による河川管理の高度化-などを追加。「被害対象を減少させるための対策」では▽止水板等浸水防止施設設置に対する助成▽災害の恐れのある区域の把握による土砂災害リスク情報の充実化-などを追加している。

 さらに「グリーンインフラ」の取り組みとして、治水対策における多自然川づくりでは礫河原や瀬渕の保全・再生や山腹工による緑の基盤整備など、魅力ある水辺空間・賑わい創出では足利市のかわまちづくり、自然環境が有する多様な機能活用の取り組みでは植樹による緑化や多面的機能を発揮する森林の維持・造成などを引き続き盛り込んでいる。

 このほか、特定都市河川制度などの活用に向けた検討や、協議会からの表彰制度の創設なども追加する。これらの対策により、国管理区間では河川整備計画の洪水に対し、気温2度上昇時の降雨量増加を考慮した雨量1.1倍となる規模の洪水を安全に流下させることを目指すとともに、多自然川づくりを推進する。

 会議では、足利市が旗川下流域における流域治水を説明。氾濫対策で国が旗川の改修、県が支川の尾名川や出流川の改修を実施しており、市でも河川からの逆流防止・水路改修などの検討を進めている。これらハード・ソフト対策に加え、特定都市河川指定制度の活用検討も含め、関係者と連携して流域の治水安全度向上を目指す。

 また水防活動に資する高台の整備として、かわまちづくりによって本町緑地に整備されたスペースを都市・地域再生等利用区域に指定し、Park-PFIで公募・選定した民間事業者による施設整備・運営で「河川空間オープン化」を進める事業を紹介した。

 渡良瀬川河川事務所は、被害の軽減や早期復旧・復興のための対策として霞提の保全や霞提の効果の啓発を紹介。佐野市は、本年度に流域治水連絡会議を立ち上げたことを紹介し、今後も流域治水プロジェクトにおける市の取り組みの状況や進行管理を行いながら治水対策に取り組んで行きたいと話した。

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