新規電源開発を検討 経営評価委員会 次期経営戦略の素案協議(県企業局)
[2025/7/26 栃木版]
県企業局(小林宣夫局長)は25日、2025年度第1回経営評価委員会(委員長・大森宣暁宇都宮大学地域デザイン科学部教授)を開催した。今回は24年度の経営戦略の進捗状況のほか、次期経営戦略の1次素案を委員に説明した。1次素案では、主な取り組みとして電気事業が施設の耐震化や改修、デジタル技術を活用したダムへの流入予測や発電所の故障予測に取り組むほか、新規電源開発を検討する。また、水道・工業水道事業は耐震化計画の見直しなど災害への備えに取り組み、用地造成事業は企業ニーズに応じて区画を自由に選択できる区画パターン選択方式による予約分譲に取り組む。今後は年度内に2回委員会を開催し、26年3月に次期経営戦略を決定する。
議事に先立ち、小林局長は「企業局は、経営戦略に定める安定的なサービス提供、経営基盤の強化、地域や環境への貢献の3つの方針に基づき、各事業の経営に努めている。本日の委員会では24年度の各事業の進捗状況を説明するとともに、26年度を初年度とする10年間の次期経営戦略の策定について、現段階の検討状況として1次素案を説明する」と話し、委員の意見を求めた。
現在の県企業局経営戦略は、16年度から25年度までの10年間で計画している。現在、公営企業を取り巻く環境が厳しさを増している中、将来にわたり安定的に事業を継続していく必要があるため、現経営戦略の最終年度を迎える本年度に、次の10年間を新たな企業運営の指針となる次期経営戦略を策定する。
戦略の位置付けは、総務省が公営企業に策定を要請している「経営戦略」として位置付けるとともに、企業局が将来にわたって安定的に事業を継続していくための中長期的な経営の基本計画とする。計画期間は、26年度から35年度までの10年間。外部有識者で構成する県企業局経営評価委員会で毎年度の経営評価を行うとともに、経営環境の変化に的確に対応するため、計画期間の中間年度の30年度に、前半5カ年の評価を踏まえて改定を行う予定とする。
策定スケジュールは、今回の委員会で1次素案、11月の第2回委員会で2次素案を検討する。その後、12月にパブリックコメントを実施して県民の意見を聴取し、26年2月の第3回委員会で最終案を検討して、翌3月に経営戦略を決定・公表する。
1次素案によると、経営環境の課題には現行の戦略にも記載する「人口減少の加速化」「施設の老朽化」「災害リスクの高まり」に加え、新たに「オールとちぎでのカーボンニュートラルの実現」と「デジタル化の急速な進展」を追加して5項目を掲げる。
これに対し、経営方針では経営環境の変化や課題を踏まえて、「安定的なサービスの提供」「経営基盤の強化」「環境や地域の貢献」「デジタル技術の活用」の4つに整理。「安定的なサービスの提供」では施設の適切な維持管理・災害への対応、施設の計画的な更新、施設の耐震化対策、選ばれる産業団地の整備を位置付ける。
また、「経営基盤の強化」では財務基盤の強化、組織力の維持・強化、経営環境の変化に対応したマネジメント、「環境や地域の貢献」ではカーボンニュートラル実現への貢献、事業を通じた地域貢献、「デジタル技術の活用」では各種点検・施工への活用、業務の効率化、県民への理解促進に取り組んでいく。
事業別の主な取り組みは、電気事業が▽水圧鉄管等の耐震化▽流入量予測を活用した監視制御▽老朽化した施設の大規模改修や分解点検の実施▽新規電源開発検討・新工ネルギー調査研究▽電気の地産地消の推進▽YouTube等を活用した情報発信▽発電所のセンシング化による故障予測-を実施する。
水道事業は▽施設や管路の耐震化計画の見直し▽軟弱地盤に布設された管路の耐震化▽老朽管更新に向けた計画の策定、施設や設備の計画的な修繕や更新▽供給水量の維持・拡大や適切な料金水準の定期的な試算▽災害時等の応急給水活動▽ドローン等を活用した巡視点検-を計画する。
工業用水道事業は▽施設や管路の耐震化計画の見直し▽老朽管更新に向けた計画の策定、施設や設備の計画的な修繕や更新▽営業活動等による需要拡大や適切な料金水準の定期的な試算▽太腸光発電設備の安定運用▽管路GIS等のデジタル技術の活用-に取り組む。
用地造成事業では▽区画パターン選択方式による予約分譲▽関係機関と連携した戦略的な企業誘致▽早期造成・早期分譲・建設発生土の受入れ等による経費削減▽グリーンインフラの推進▽YouTube・SNS等を活用した情報発信▽遠隔臨場やICT施工等の活用-を計画する。
施設管理事業は、ゴルフ場が▽コースコンディションの維持・向上、計画的な施設の修繕・更新▽指定管理者と連携したゴルフ場利用者の拡大-を、賃貸ビルが▽計画的な予防保全による施設の長寿命化の推進▽ESCO事業の適切な運用-を実施していく。
前半5カ年の具体的な目標値は、2次素案を策定する段階で検討していく予定。経営戦略の推進・評価は、PDCAサイクルに基づき内部と外部による評価を実施する。また、企業局の組織運営として、引き続き専門人材の確保、技術の継承などに取り組んでいく。
委員からは、「この先10年を考えると、用地造成事業は本県の地理的状況から期待値がさらに高まってくると思うが、この先の候補地はあるのか」といった質問があり、企業局は「地元の市町村などと意見交換を進めながら、企業ニーズに対応できるよう勉強会など開いているが、今のところ具体的に示せる場所はない」と答えていた。