建設業界の理解促進を 猛暑を避けた施工 施工業者から効果や課題聴取(宇都宮国道)

[2025/11/15 栃木版]

 国土交通省宇都宮国道事務所は、独自の取り組みとして実施している「猛暑を避けた働き方改革・担い手確保の取り組み」を今後も拡大・継続して実施していくため、11月に管内で取り組みを活用した施工会社と意見交換し、その結果を公表した。施工業者からは、「柔軟な働き方がやり易くなった」「長期休暇の取得で新たな担い手確保に役立つ」などの効果やメリットが示された一方、「建設業界や社会全体の理解促進」や「夏季休工期間中の収入減少」などの課題も挙がった。同事務所では、課題などを共有するとともに改善を重ね、引き続き猛暑を避けた取り組みを通した建設業の魅力向上や担い手確保に寄与していきたいとしている。

 建設業は、猛暑期間での現場の作業環境が影響して業界の魅力低下につながり、働き方改革や担い手確保への懸念が生じている。昨年12月に開催された県建設業協会と同事務所との意見交換時にも、猛暑の現場作業が若手をリクルートする障害になっているとの指摘があり、官民挙げた猛暑対策への強い要望を受けていた。

 このため同事務所では、手始めとして熱いアスファルトを取り扱う舗装工事を対象に、受発注者間で協議して猛暑期間(7月、8月)に現場作業を休工(内業または準備期間)する取り組みを2023年度と24年度に各1件ずつ、計2工事で試行的に実施。あわせて、夜間施工を時期をずらして昼間施工に変更し、ICT施工も実施する取り組みを行った。

 この試行により、熱中症や夏バテの予防など作業者の健康管理・体調管理に寄与したほか、猛暑期間が夏休みやお盆期間と重なるためワークライフバランスにも寄与。さらに、気温が高くて品質管理が難しい期間を避けて施工することで、舗装の品質管理にも寄与するなどのメリットが明らかになった。

 これを受けて、同事務所では原則、一部を除くすべての工事で「本工事は、働き方改革、熱中症予防の一環として、猛暑期間(7~8月)の現場施工を回避することについて、監督職員と協議を行うことができる」と特記仕様書に明示し、25年11月現在、これまで舗装工事2件を含めた8工事で試行している。

 今回は、この取り組みを活用した8工事6者から、今月5日に意見交換会を実施。その中で、施工業者からは取り組みに関して「猛暑期間を避け夜間施工から昼間施工へ工夫するなど、選択の幅が拡がった」「長期休暇の取得で新たな担い手確保に役立つ」「猛暑期間の施工回避で高い作業効率を維持できた」などのメリットが示された。

 また、効果としては「熱中症リスクが回避できた」「クーラーの準備など設備投資が削減できた」「昼間から早朝・夜間施工など柔軟な働き方がやり易くなった」「他工事との工期調整による効率的な人員配置が可能となった」などが認められた。

 課題としては、工程・工期などに関して「工夫の選択肢にもなり得ることに対する建設業界や社会全体の理解促進・意識改革」などが、待遇・費用に関して「工程調整による重機搬出・再配置によるコスト増」や「夏季休工期間中の収入減少に伴う補償の必要性」などが示された。

 これを踏まえて、改善策として「猛暑期間を発注者との調整・準備期間とし、9月から工事着手できる工期設定が望ましい」「年度末の工事抑制期間を緩和し、全体バランスをとれる柔軟な工程調整が出来ると良い」「工事成績評定や入札契約時における加点制度の新設」などが提案された。

 一方、特記仕様書に明示されていたが取り組みを活用しなかった7工事7者にも、ヒアリングを実施。取り組みをできなかった理由は「当初から夜間工事であり、昼間に比べ熱中症リスクが低かったため」や「期間内の現場経費や従事者の給与補償など負担増が見込まれたから」などがあった。

 また、どのような条件がクリアされれば取り組めたかについては、「確実な工期延伸」「休工による現場作業ができない期間の賃金等を補償」「全国的に浸透して、法的義務化や労務の失業保険等が整備されれば対応しやすい」との意見があった。

 これらを踏まえ、同事務所は取り組みを推進するためのポイントとして▽発注者の工期設定、受注者の柔軟な工程管理、段取りの工夫▽工事成績評定や入札契約時における加点制度などインセンティブの付与▽猛暑期間において、建設分野から観光業界など他分野の産業へ転換するなど業界の枠を超えた対応-を挙げている。

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