県央浄化センターの増設完了へ 流域下水道経営評価委 事業の継続を了承(県上下水道課)
[2025/11/18 栃木版]
県流域下水道事業経営評価委員会(委員長・前橋明朗作新学院大学大学院経営学研究科科長)が17日に県庁で開かれ、県上下水道課から経営戦略に基づく2024年度の達成状況と25年度の取り組み内容が報告された。成果指標9項目のうち7項目は目標値通りもしくはそれを上回る実績を収めたものの、「中継ポンプ場・処理場の耐震化率」と「企業債残高」は目標にやや届かなかった。25年度は、県央浄化センター水処理施設増設工事を目指すとともに、幹線管渠とマンホールとの接続部と可とう化や、北那須浄化センターの放流渠の耐震補強工事、鬼怒川上流浄化センターの滅菌池棟の耐震詳細設計などを実施する。委員会はこれらの説明を受け、引き続き事業を進めていくことを了承した。
議事に先立ち、県上下水道課の大塚功司課長は「昨年度は経営戦略期間10年間の中間年度にあたり、経営戦略の改定を行った。本日は、24年度の流域下水道事業の経営戦略の達成状況についてご審議いただきたい」とあいさつし、忌憚のない意見を求めた。その後は前橋委員長を議長に、経営戦略の達成度評価について審議した。
9つの指標のうち、「処理場の処理能力」については将采の流入水量増加に対応するため、22年度から県央浄化センター水処理施設増設工事を実施しており、24年度は土木・建築工事のほか機械・電気設備工事にも着手した。25年度は、引き続き機械・電気設備工事を進めて、26年度からの供用開始を目指す。
「老朽化した幹線管渠の調査・点検」は、幹線管渠の二巡目の調査・点検に着手して、その結果に基づき管渠修繕の準備を行った。25年度も引き続き、二巡目の調査・点検を実施する。
「改築・更新を実施した主要設備数(累計)」も、巴波川浄化センターで23年度からの繰越事業となる事業用水槽設備更新工事を実施し、累計50設備の改築・更新が完了した。25年度は鬼怒川上流浄化センターで汚泥脱水機および監視制御設備、北那須浄化センターで監視制御設備の計3設備の更新を完了させ、累計53設備が完了する見込み。
「幹線管集の耐震化率」は、重要な幹線管渠とマンホールの接続部と可とう化を216カ所で実施し、目標の29%を上回る36.1%の耐震化率を確保できた。25年度も引き続き、重要な管渠の耐震化工事を実施していく。
「中継ポンプ場・処理場の耐震化率」は、大岩藤浄化センターで沈砂池ポンプ棟の耐震補強工事を予定していたが、耐震診断の結果、補強内容が小規模となり、効率的な事業実施のため26年度の放流ポンプ棟耐震化工事と併せて実施することに変更して、達成度は計画とやや乖離が生じた。25年度は、24年度に耐震設計を実施した北那須浄化センターの放流渠の耐震補強工事を施工するとともに、鬼怒川上流浄化センターの滅菌池棟の耐震詳細設計を策定する。
「再生可能エネルギー導入等によるCO2削減量」は、各浄化センターで消化ガス発電や処理場の適正運転に努め、目標値を上回る削減を達成している。
「下水汚泥の有効利用率」は、23年度に下水汚泥等をセメント原料にできる新たな処理先を追加し、目標通りの有効利用ができた。25年度は、引き続き下水汚泥の有効利用率100%を継続するとともに、下水汚泥等の肥料化を最優先とする国の基本的な方針に従い、有識者や市町の考え方を聞きながら検討を進めていく。
「経常収支比率」は、予算時に電気料金の高騰を見込み市町負担金を増額したが、電気料金が当初の想定を下回ったため経常利益が発生した。25年度は23年度の利益剰余金を市町負担金に反映し減額して組んでいるため、現時点では収支が赤字になる見込みだが、引き続き経営効率化を実施して経常収支比率100%にできるだけ近づくよう努める。
「企業債残高」については、重要な幹線管渠の耐震化工事などを前倒したことで企業債の新規借入が増加したため、企業債の新規借り入れが増加し計画未達成となった。25年度は、企業債償還金に対して新規借入予定額が少ないため、企業債残高は減少が見込まれる。
委員からは、幹線管渠の耐震化率が目標を大きく上回る124%を達成した要因について質問があり、「昨年度から個別補助として耐震化に特化した助成制度ができ、国から多くの内示があったので、予算に従って順次、耐震化を進めた結果、目標を大きく上回った。今後も補助制度が継続すると考えられるため、引き続き耐震化を進めていきたい」と説明した。
また、委員からの「インフラの老朽化が非常に大きな問題になっているが、何らかの対策をプラスして実施していく考えは」との質問には、「老朽化対策は進めなければならないが、予算に応じて優先度に基づき進めていくことが第一。新たな補助メニューや国土強靭化の補正などがあれば積極的に取り組んでいきたいが、流域下水道は基本的に市町からの負担金で実施しているため、市町の合意を得ながら進めていきたい」と答えた。
