治山事業の推進など 森林創生ビジョン 森林審議会で次期素案協議(県森林整備課)

[2025/11/26 栃木版]

 県森林整備課は25日、県公館で県森林審議会を開き、次期とちぎ森林創生ビジョン(仮称)の素案を説明した。素案では、重点課題に「経済型林業・木材産業の推進」と「循環型の森づくりの推進」の2つを設定し、住宅・非住宅分野における木材利用の促進や災害に強い森づくりなどの取り組みを推進する。成果指標では、森林組合による地籍調査面積を現状の4150haから30年度には6179ha、山地災害危険地区の整備完了箇所数を現状の20カ所から30年度には40カ所にする目標を設定した。

 次期ビジョンの素案は、木材産業の成長産業化と森林の公益的機能の持続的かつ高度発揮の実現を目指して施策を展開し、これにより基本理念の「とちぎの元気な森を100年先の未来へ」の実現を図る。計画期間は2026年度から30年度までの5年間。なお、計画策定の趣旨や基本理念については、現行ビジョンの目標達成がまだ道半ばということから、現行ビジョンをそのまま踏襲する。

 本県の森林面積は約35万haで県土面積の約54%を占め、このうち民有林が約22万ha、国有林が約13万ha。民有林のうち、約56%がスギなどの人工林となっている。課題としては、利用期を迎えた森林資源を循環利用しながら、林業・木材産業の成長産業化と森林の公益的機能の高度発揮を実現していくことが求められる。

 施策の方向性は、現状と課題を踏まえ、大きく「経済型林業・木材産業の推進」と「循環型の森づくりの推進」の2つの重点課題を設定。また共通施策として、林業大学校を中核とする「次代を担う人材(人財)づくり」と、スマート林業の推進による「林業・木材産業への未来技術推進」を設定した。

 重点政策として、「経済型林業・木材産業の推進」では林業・木材産業の成長産業化の実現に向け、川上・川中・川下の各段階に応じた政策を展開する。川上では素材生産の強化を図るため、実効性の高い森林経営計画の作成を推進するとともに、施業の集約化を推進する。

 また、伐採方法の改革では皆伐・間伐に加え共同間伐を導入して、地形や獣害対策など地域の実情に応じた最適な伐採方法を選択し、生産性と収益性の高い林業を実現する。造林保育・種苗でも現場の実情に合わせた先進技術の導入で、省力化・低コスト化を進めていく。

 川中では、とちぎ材製品の競争力強化を図っていく。多様化する川下の事業に対応するため、製材工場の大型化・高付加価値化を推進する。また、今後需要が高まることが予想されるJAS製材品の生産供給体制の強化、大径材の活用などで製品の競争力を高める。

 川下では、出口対策の強化を図る。住宅・非住宅分野における木材利用の促進を図るため、木材コーディネーターの活用や木材利用促進協定の締結、木質資源のエネルギー利用などに積極的に取り組み、木材の需要拡大を目指す。安定受給体制の強化としては、川上・川中・川下の垂直連携を強化して、パートナーシップを築いていけるような木材の安定受給体制の構築を目指していく。

 成果指標では、製材品出荷量(国産材)を23年度の26.9万立方mから30年度には32.1万立方m、35年度には37.3万立方mに増加させる。また、人工乾燥材出荷量(国産材)は23年度の23.2万立方mから、30年度には27.7万立方m、35年度には32.2万立方mにする目標を定める。

 もう1つの重点政策の「循環型の森づくりの推進」では森林の公益的機能をより高めることを目的に、多様で健全な森づくりの推進と、災害に強く県民を守る安心・安全な森づくりを推進する。

 健全な森づくりの推進では、森林の公益的機能の高度発揮の実現に向け、多様で健全な森づくりを進める。また森林吸収源対策や30年度に本県招致を表明した全国植樹祭に向け、県民が一体となって取り組む活動を推進する。災害に強く県民を守る安心・安全な森づくりでは、治山事業や獣害対策を通じて、山地災害や野生獣・病害虫による被害に強い森づくりを推進する。

 成果指標では、森林組合による地籍調査面積(累計)を現状の4150haから30年度には6179ha、35年には8839haにする目標を設定。山地災害危険地区の整備完了箇所数は、現状の20カ所から30年度には40カ所、35年には55カ所にする目標を設定した。

 今後のスケジュールは、今回委員から示された意見を踏まえて修正した素案で12月中にパブリックコメントを開始し、26年3月の第3回森林審議会で最終案を議論して答申案を取りまとめる。これらの手続きを経て、3月末には公表する予定としている。

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