国負担額が33億円増 中橋改築事業 再評価で継続を承認(渡良瀬川河川)
[2025/12/4 栃木版]
国交省渡良瀬川河川事務所(荒井満所長)は3日、同事務所で利根川水系渡良瀬川河川整備計画フォローアップ委員会(委員長・長尾昌朋足利大学工学部創生工学科教授)を開き、渡良瀬川上流特定構造物改築事業(中橋)の事業再評価を実施した。それによると、全体事業費が当初予定の107億円から210億円に増額となり、このうち河川管理者である国の負担分も約41億円から約74億円に33億円増額となる。増加の理由は、労務資材単価の高騰や橋梁下部工の杭長の見直し、アーチ橋移設方法の見直し、および用地補償費の増額によるもので、委員会は「原案の通り継続」と評価した。
議事に先立ち、荒井所長は「本日は特に、渡良瀬川上流特定構造物改築事業で中橋の架替事業をご審議いただきたい。当委員会で審議を行い、その結果を整備局が設置する事業評価監視委員会に報告する」と説明し、忌憚のない意見を求めた。
渡良瀬川上流特定構造物改築事業は、橋梁の高さが低く洪水の安全な流下の阻害となっている中橋を架け替えるもの。新橋に切り替えたあと、現橋の橋台を撤去し、堤防のかさ上げと拡幅を行う。あわせて、堤防道路との交差点の拡幅や、JR両毛線を超える高架橋を一体的に整備する。栃木県(都計道家富町堀込線)や足利市(都計道東武駅前線改築事業等)との共同事業になる。
この事業では、河川整備計画の目標の30分の1から40分の1規模の洪水を安全に流下させることとし、堤防のかさ上げや拡幅、橋梁架替、取付道路整備を実施する。事業費は約107億円(うち河川管理者負担分約41億円)で、2021年度に事業に着手。事業期間は27年度までの7カ年で、これまでに側人道橋を供用しており、11月からは新橋下部工および上部工、取付道路(通跨線橋など)、堤防および道路改良を実施している。
今回の再評価では、事業期間の変更はなく、事業費について当初の107億円(うち河川管理者負担分約41億円)から210億円(同約74億円)に103億円(約33億円)増額する。
内訳は、工事費で労務資材単価の高騰による増額が約53億円、設計条件の変更に伴う杭長見直し等による増額が約31億円、アーチ橋移設方法の見直しによる増額が約7億円。また用地補償費も、住宅建築資材等の価格高騰や解体対象物のアスベストの判明による除却費用などを反映し、補償算定額が約12億円増額となる。
杭長の見直しは、予備設計で橋脚近傍のボーリング調査に基づき杭長を設定していたが、詳細設計に伴う追加ボーリングの結果、支持層をより深部の地層に変更する必要が生じたため。P1は10.5mから25.0mに、P2は9.0mから25.0mに変更している。
アーチ橋移設方法の見直しは、当初想定した油圧ジャッキによるスライド方式を用いる場合、追加の補強が必要なことから移設工法を再検討した結果、クレーンによる吊り上げ方式に変更するほうが、安全性や施工期間で有利となった。工事費は増額となったが、安全性や施工期間などの面で有利な工法を採用した。
一方でコスト縮減にも努め、建設発生土の公共工事間流用で処分費が約2億8000万円削減されると試算している。
費用対効果の分析では、事業全体で4.7、残事業で7.7と算出。年超過確立100分の1規模の洪水で中橋付近で堤防が決壊した場合、事業実施により最大孤立者数約6000人から0人に、電力停止による影響人口は約8500人から0人に解消すると見込まれる。
委員からは、労務資材単価の高騰をはじめ27年度の事業完了までにさらなる事業費の増額を懸念する声があり、事務所は「今後急激な経済状況の変化がなければ、大きく増加することはないと見ている。また、今後は上部工など目に見える箇所の工事に入っていくので、杭長見直しのような想定しえないような事態も起こらないと思っている」と説明した。
なお、この事業に関連して栃木県では街路事業を推進しており、2日の公共事業評価委員会で事業継続が妥当との評価を得ている。
