日光川治で工事着手 国と県が意見交換 広域道路整備に協力を(県事業連絡協議会)

[2025/6/25 栃木版]

 国土交通省関東地方整備局は23日、県庁で2025年度の「栃木県事業連絡協議会」を開催した。整備局や各出先事務所、水資源機構および県県土整備部が一堂に会し、本年度の予算をはじめ河川、道路など所管する主要事業について、情報の共有や意見の交換を行った。整備局からは、国土強靭化実施中期計画の概要をはじめ、荒沢砂防堰堤群は大真名子東沢砂防堰堤など、川俣ダムの堰堤改良では工事用道路の工事を実施すると説明。国道4号のバイパス・現道拡幅事業も引き続き推進し、日光川治防災は川治地区で工事用道路工事と橋梁下部工事に着手する。水資源機構は思川開発事業で導水施設工事、管理設備工事などを進め、26年度概成を目指すと説明。県は広域道路網の整備や中橋架替事業などについて説明した。

 協議会には、整備局から渡邊良一企画部長や市川智秀建政部長、石川武彦河川調査官、野坂周子道路部長、米村享紘企画調整官ら幹部が顔をそろえた。水資源機構からはダム事業部の渕上吾郎次長が、県からは県土整備部の小野和憲部長をはじめ次長、本庁課長らが出席した。

 開会にあたり、渡邊部長は「いよいよ雨のシーズンになった。埼玉県八潮市の事故を見ても、関東地整は事故・災害対応の組織力が備わっていると感じており、そうした場面が生じた際にはわれわれも全力でサポートするので遠慮なく相談してほしい」などと話し、連携していくため顔の見える関係の構築を期待した。

 小野部長は、国土強靱化実施中期計画が閣議決定されたことに触れ「国土強靭化に一生懸命取り組んでいこうと思っている。東日本台風で被災した河川の改良復旧をはじめ、災害時の輸送路バックアップの観点から広域交通ネットワークの充実強化も図っていきたい」と意気込みを示した。

 議事はまず、整備局から本年度の事業について説明。国土強靭化実施中期計画については、埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえてインフラ老朽化対策の推進も位置付けられたことや、事業規模は今後5年間でおおむね20兆円強を目途とし、今後の資材価格や人件費高騰については予算編成過程で適切に反映すること、さらには今後の災害の発生状況や経済情勢、財政事情などを踏まえて機動的・弾力的に対応すると説明した。

 建設業界への対応としては、「建設産業が持続可能な業として成立していないと、インフラ整備・管理や災害対策が成り立たない」と話し、品確法をはじめとした各法律の精神を市町村にまで浸透させていきたいと県の協力を求めた。さらには働きやすい環境づくりや魅力の創造、持続可能とするための取り組みなどで、少しでも改善するよう取り組んでいきたいと話した。

 河川事業は、渡良瀬川の中橋架替事業を県と連携して取り組んでおり、25年度は橋梁下部工を実施するほか、5月にはイベントを開催して側人道橋の供用を開始したことに感謝の意を表した。鬼怒川直轄砂防事業の荒沢砂防堰堤群は本年度、大真名子東沢砂防堰堤等を施工すると説明した。

 川俣ダムの堰堤改良は、昭和41年の完成から約60年が経過して岩盤PS工の劣化が確認されていることから、岩盤PSアンカーの更新等に対策に着手し、本年度は左岸工事用道路および計測データモニタリング調査を実施すると話した。

 鬼怒川の流域治水プロジェクト2.0は、氾濫を防ぐ減らす対策として堤防強化対策や霞提の保全、田んぼダムの取り組みを進めるほか、被害の軽減・早期復旧・復興でマイ・タイムラインの全国的にも先進的な取り組みにより、流域治水の取り組みを加速化・深化させていきたいと話した。

 下水道管路については、八潮市の事故を踏まえて全国特別重点調査について説明。調査対象は全管路延長約49万kmだが、特に30年以上経過し管径2m以上の約1万kmから限定して、約5000kmを1年以内を目途に実施している。さらに優先実施として、八潮市の事故現場と類似した条件の1000km程度を夏ごろまでに実施していると説明した。

 道路事業は、国道4号のバイパス・現道拡幅事業を説明した。矢板拡幅は片岡地区などで用地買収、前岡地区で改良工事を実施し、矢板大田原バイパスは土屋地区で用地買収を実施。西那須野道路は三区町地区などの改良工事、三区町地区の電線共同溝工事、烏ヶ森公園の歩道橋工事を実施する。「宇都宮国道事務所で用地買収率100%と成果を出しており、期待してほしい」と話した。

 直轄権限代行で19年度に事業化した国道121号日光川治防災は、本年度も調査設計を実施するとともに、川治地区で工事用道路の改良工事と橋梁下部工事に着手する予定と明らかにした。新設トンネルについても、野岩鉄道の葛老山トンネルや五十里ダムの導水トンネルとの近接交差を考慮し「安全に掘りきるということに重点をおいて検討したい」と話した。

 水資源機構は、思川開発事業で25年度に事業費約20億円を確保して、導水施設工事、管理設備工事などを実施すると説明した。昨年度には事業実施計画を変更し、事業費は約2100億円、工期は26年度概成へと変更している。ダム本体は現在試験湛水中で、今月18日には最低水位まで到達したと説明した。

 県からは、まず予算編成の考え方や当初予算の概要を説明。公共事業費は前年比約4%減で、特に河川・砂防関係は東日本台風からの改良復旧の進捗により約31%減少したと説明した。

 道路・交通事業は、広域道路網の整備で新広域道路交通計画に位置付けた「(仮称)つくば・八溝縦貫・白河道路」と「(仮称)北関東北部横断道路」の実現に向け協力を求めたほか、中橋架替事業の推進や芳賀宇都宮LRT事業の西側延伸とあわせた東武宇都宮線への乗り入れなどに協力を求めた。河川・砂防事業は、東日本台風からの早期復旧と再度災害の防止、さらには計画的な河川・砂防整備などを説明した。

 意見交換では、関東地方整備局から「とちぎの道路・交通ビジョン2021」に示した「全国・海外と連携する交通ネットワーク」の概要図と実際の道路との相関を質問。県からは、埼玉県八潮市の道路陥没事故を教訓に、同様の事故が発生した場合に各機関との調整など県の役割についてアドバイスを求めた。

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