28年の着工目指す LRT事業 30年の開業は困難に(宇都宮市)
[2025/8/2 栃木版]
宇都宮市はJR宇都宮駅西側のLRT整備事業の工事着手時期について、2028年以内を目指すことを明らかにした。一方で開業予定時期は、用地買収に伴う交渉期間や地下埋設物の移設を含む工事期間を踏まえて工程計画の精査を進めており、30年の開業は厳しいとの見解を示している。LRTの駅西側整備と関連する宇都宮駅西口周辺地区整備は年度内に基本設計を策定し、東武宇都宮駅付近などでも整備内容を検討していく。
駅西口整備は年度内に基本設計
JR宇都宮駅西側のLRT整備は、大谷観光地付近(延長約8km)までを検討区間に設定している。また、安心して通勤・通学できる環境整備による利便性の向上、既存道路を活用した折り返し運行施設の確保が可能な区間として、宝木町1丁目・駒生1丁目付近(教育会館付近)までの延長約5kmを整備区間に設定した。
駅西側の停留所は、東から西へ順に▽JR宇都宮駅西口▽上河原▽宮島町十文字▽馬場町▽県庁前▽東武宇都宮駅前▽裁判所前▽新川▽桜通り十文字▽美術館前▽護国神社前▽教育会館前-の12カ所を構想しており、トランジットセンター(乗継拠点)はJR宇都宮駅西口・東武宇都宮駅前・桜通り十文字の3カ所を予定している。
JR宇都宮駅西口は、宇都宮駅西口周辺地区整備基本計画案によると駅西口中央に交流広場やLRT停留場、南側にバス空間、北側にタクシープールや一般車乗車場を配置し、駅・LRT停留場・各街区等を連絡する2階通路となるペデストリアンデッキを整備する。
計画策定懇談会では、委員からの意見を基に広場の配置を修正し、タクシー関連では駅改札付近に乗車場を配置するほか、宮の橋交差点から駅西口駅前広場へのタクシーのアクセスや、バス空間とタクシー空間を集約して効率的な施設配置を検討する。2階でライトラインと一体となった交流広場の配置、駅と周辺民間街区など、どこからでもライトラインにアクセスできる歩行者ネットワークの追加配置なども検討していく。
計画策定懇談会はさらに協議を進め、年内を目途に交通施設を具体的に示す基本平面図を作成して都市計画手続きを進める。その後は基本平面図を基に、年度内にも交通施設の配置や規模を決める基本設計を策定する。
東武宇都宮駅付近は、大通りと東武馬車道通りとの交差点と、池上町交差点の間に東武駅前停留場の設置を構想する。停留場から東武宇都宮駅までの乗換動線で、雨に濡れない機能の確保(シェルター設置)、通勤・通学者等が滞在できる空間の創出(ベンチ・テーブル等の設置)、荷捌きできる空間の確保などの整備内容を検討している。今後、各関係者と協議・調整を行って、整備内容を具体化していく。
軌道の平面縦断線形等は、駅東側と同等かそれ以下に抑えた平面曲線や縦断勾配となるように計画し、最小曲線半径はJR横断部付近が30m、最急縦断勾配はJR横断部付近の60%とする。
大通りの導入空間について市は、現在の宇都宮駅東口停留場・JR宇都宮駅西口から裁判所前(都心環状線)までをI区間(高架区間含む)、裁判所前から桜通り十文字付近(内環状線)までをII区間、桜通り十文字付近から教育会館前付近までをIII区間に設定する。
I区間は片側1車線とし、すべての交差点に右折レーンを設置する。宮の橋交差点付近までの区間は、高架でLRTを運行させる(W8.7m)。交差点部で1車線側は車道が幅員3m、歩道が幅員4.5mとし、右折レーン設置側は車道が幅員2.75m×2、歩道が幅員4mとする。
宮の橋交差点付近から裁判所前までは、一般部の歩道が幅員4~6m、路肩等が幅員1~3m、車道が幅員3m、軌道が幅員7mとする。交差点部は軌道が幅員9.6mとし、1車線側は車道が幅員3m、自転車走行空間が幅員1m、歩道が幅員4mとし、右折レーン設置側は車道が幅員2.75mと2.5m、自転車走行空間が幅員1m、歩道が幅員4mとする。
II区間は片側2車線とし、一般部の歩道が幅員4m、自転車走行空間が幅員1m、車道が幅員3m×2、軌道が幅員7mとする。交差点部は軌道が幅員10.8mとし、2車線側は車道が幅員3m×2、自転車走行空間が幅員1m、歩道が幅員4mで、右折レーン設置側は車道が幅員2.75mと3m×2、自転車走行空間が幅員1m、歩道が幅員4mとする。
III区間は片側2車線とし、一般部の歩道が幅員2.8m、自転車走道が幅員2.2m、車道が幅員3m×2、軌道が幅員7mとする。交差点部は軌道が幅員10.8mとし、2車線側は車道が員3m×2、自転車道が幅員2.2m、歩道が幅員2.8mで、右折レーン設置側は車道が幅員2.75mと3m×2、自転車道が幅員2.2m、歩道が幅員2.8mとする。
II・III区間は、当初見込みより多くの用地補償が必要になり、その中にはマンション等の共同住宅が複数含まれることが明らかとなり、80件程度の補償が見込まれる。地下埋設物も、幹線管路の電線共同溝は駅東側の7倍程度の延長が埋設されていることを確認し、半分程度の移設が見込まれている。
停留場は従来の延長を30mとしており、JR宇都宮駅西口・東武宇都宮駅前・桜通り十文字・護国神社前・馬場町・県庁前の停留場は需用予測等から、ホーム長を40mに延長する。東武宇都宮駅前停留場は、軌道の縦断勾配を緩和するため、道路と分離した軌道構造を検討する。
車両基地の補完的施設である留置施設は、5~6編成程度の車両留置の設置やパークアンドライド施設等の併用可能な敷地が確保でき、入出庫がしやすい箇所として、教育会館前停留場に近接した県有地を候補地とし、県等の関係者と調整を進めていく。
軌道運送高度化実施計画は、本年中に策定して軌道事業の特許申請を行い、都市計画手続きを開始する。軌道事業の特許申請時期は、10月を目途とする。概算事業費は700億円程度(税抜)で、物件補償や地下埋設物移設も見込んだ数値となっており、大きな事業費の変動はないと推測し、今後も精査を進めていく。