軌道分岐装置を2カ所 東武駅付近に渡り線設置(芳賀宇都宮交通検討委)
[2025/8/21 栃木版]
第41回JR芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会(委員長・森本章倫早稲田大学教授)が19日、ライトキューブ宇都宮で開催された。今回の会議では、駅西側の交通結節点等の検討状況や、軌道運送高度化実施計画の策定に向けた取り組みについて協議した。この中で、軌道の配線計画では柔軟な運行に対応できるようにするため、シーサスクロッシングや渡り線を設置するとしている。
駅前広場は、駅西口中央に交流広場やLRT(ライトライン)停留場、南側にバス空間、北側にタクシープールや一般車乗車場を配置し、駅・LRT停留場・各街区等を連絡する2階通路となるペデストリアンデッキを整備する。JR宇都宮駅西口周辺地区整備基本計画策定懇談会では、委員からの意見を基に整備計画の修正を進めていく。
駅前広場のバス空間は、タクシー利用者向けに交番前1階出入口付近に乗車場の確保を検討する。タクシーについてはこのほか▽宮の橋交差点からのアクセスへ見直し▽バス空間とタクシー空間を集約して効率的な配置▽タクシー乗車場の円滑な運用(ショットガン方式など)-を検討し、一般者との動線を分離する。
2階部では、ライトラインと一体となった2階レベルの空間(交流広場)の配置や、どこからでもライトラインにアクセスできる歩行者動線の追加配置を検討する。今後、年内を目途に基本平面図を作成し、次回の第7回懇談会で整備基本計画の素案を示し、年内に計画を策定する。
東武宇都宮駅付近は、大通りと東武馬車道通りとの交差点と、池上町交差点の間に東武駅前停留場の設置を構想する。停留場から東武宇都宮駅までの乗換動線は、雨に濡れない機能の確保(シェルター設置)、通勤・通学者等が滞在できる空間の創出(ベンチ・テーブル等の設置)、荷捌きできる空間の確保など、整備内容を検討している。今後、各関係者と協議・調整を行って、整備内容を具体化していく。
配線計画は、柔軟な運行に対応できるよう、JR宇都宮駅西口付近と教育会館前付近にシーサスクロッシング(軌道をX字状に交差させたもの)を設置する。東武宇都宮駅前から裁判所前間の本線上には、異常時やイベント時でも残区間で運行が継続できるよう、渡り線(折り返し運行が可能となる上下線区間を連絡する線路)を設置する。
大通りの導入空間について市は、現在の宇都宮駅東口停留場・JR宇都宮駅西口から裁判所前(都心環状線)までをI区間(高架区間含む)、裁判所前から桜通り十文字付近(内環状線)までをII区間、桜通り十文字付近から教育会館前付近までをIII区間に設定している。II・III区間は、当初見込みより多くの用地補償が必要になり、その中にはマンション等の共同住宅が複数含まれることが明らかとなり、80件程度の補償が見込まれる。地下埋設物についても、幹線管路の電線共同溝は駅東側の7倍程度の延長が埋設されていることを確認し、半分程度の移設が見込まれている。
停留場は従来の延長を30mとしており、JR宇都宮駅西口・東武宇都宮駅前・桜通り十文字・護国神社前・馬場町・県庁前の停留場は需用予測等から、ホーム長を40mに延長する。東武宇都宮駅前停留場は、軌道の縦断勾配を緩和するため、道路と分離した軌道構造を検討する。
車両基地の補完的施設である留置施設は、5~6編成程度の車両留置の設置やパークアンドライド施設等の併用可能な敷地が確保でき、入出庫がしやすい箇所として、教育会館前停留場に近接した県有地を候補地のひとつとして、県等の関係者と調整を進めていく。
軌道運送高度化実施計画は▽事業の実施区域(区間)▽事業内容(停留場数、車両数、留置施設など)▽事業の実施予定期間(事業開始予定年月、運輸開始予定年月)▽概算工事費▽添付資料(線路予測図、建設費概算書など)-を盛り込み、本年中に策定して軌道事業の特許申請を行い、都市計画手続きを開始する。軌道事業の特許申請時期は、10月を目途としている。概算事業費は700億円程度(税抜)で、物件補償や地下埋設物移設も見込んだ数値となっており、大きな事業費の変動はないと推測し今後も精査を進めていく。
LRT整備事業の工事着手時期は、2028年以内を目指す。一方で開業予定時期は、用地買収に伴う交渉期間や地下埋設物の移設を含む工事期間を踏まえて工程計画の精査を進めており、30年の開業は厳しいとの見解を示している。