燃焼灰利用と堆肥化 下水汚泥有効活用 懇談会に2つの方針説明(県上下水道課)

[2025/9/2 栃木版]

 県上下水道課は8月29日、県庁で第1回の県下水汚泥有効活用に関する有識者懇談会を開催した。今回は本県の下水汚泥の発生や処理の状況について説明したほか、下水汚泥の有効活用に関して2024年度と25年度に実施している内容を説明した。それによると、本県では燃焼灰を肥料利用と脱水汚泥の堆肥化の2つの方針が示され、現在は日本下水道事業団に委託して堆肥の試作と分析を実施している。今後は、この分析結果を委員に説明し、26年度の実施予定内容について意見を求めていく。

 議事にあたり、県県土整備部の小野和憲部長は「下水汚泥の有効活用に関する施策を検討するにあたり、客観性・透明性を確保して、効率的かつ効果的な下水汚泥の有効活用の推進を目的として、懇談会を設置した」と説明し、各委員に忌憚のない意見とともに、今後の下水汚泥の有効活用への指導を求めた。

 議長には、委員の互選で下水道を専門とする茨城大学工学部の藤田昌史教授が選ばれた。藤田議長は「下水汚泥の有効活用というと肥料や堆肥が考えられ、そうすると環境面や経済面など様々なことを検討しなければならない」と話し、各委員に専門的な立場から意見を求めた。

 下水汚泥の有効活用は、2022年10月の国の食料安全保障強化政策大綱で、肥料の代替転換や化学肥料の使用制限を図ることにより持続可能な生産への転換を実現するため、肥料利用を拡大してリンベースの国内肥料利用割合を21年度の25%から、30年度までに40%まで高めるということが目標とされた。

 この大綱を受け、国土交通省から23年3月に発生汚泥等の処理に関する基本的考え方として、下水道管理者は今後、発生汚泥等の処理にあたって肥料としての利用を最優先とし、最大限の利用を行うこととするとの通知がなされた。これを受け本県でも下水汚泥の肥料化に向けた検討を開始しており、その中で客観性・透明性の確保の観点から懇談会を設置した。

 本県では、県が所管する流域下水道で4流域6処理区、24市町が実施する公共下水道で39処理場があり、県全体では脱水汚泥ベースの重量で年間約7万トンの下水汚泥が発生している。内訳は、流域下水道が約2万トン、公共下水道が約5万トンで、このうち約4万トンを下水道資源化工場で、3万トンを民間で処理している。

 下水道資源化工場では、焼却灰をセメント原料やスラグの原料として有効利用100%を達成している。民間施設でも同様にセメント原料などに利用され、有効利用率は93%。汚泥の処理で堆肥化を進めることで、焼却する際の重油の削減が図られ、カーボンニュートラルに貢献できると考えられる。

 下水汚泥の堆肥化に向けて、県は24年度に下水汚泥肥料化検討業務を委託して肥料化の今後の方針を検討し、その中で「下水道資源化工場の燃焼灰を肥料利用(菌体リン酸肥料登録)」と「脱水汚泥の堆肥化」の2つの方針が示された。

 また、国交省の「下水汚泥資源の肥料利用拡大に向けた重金属・肥料成分等の分析支援事業」で資源化工場の燃焼灰と脱水汚泥の肥料成分分析を実施した結果、燃焼灰は成分が濃縮するため一部の重金属が高い値を示し、脱水汚泥は肥料成分をある程度有しているということが示された。

 肥料化実施可能性の検討では、本県では燃焼灰の肥料登録と汚泥の堆肥化が可能とされた。堆肥化の手法としては、機械に入れて密閉して製造する密閉型と、ヤードで製造する開放型から検討していく。

 課題して、燃焼灰では重金属成分の低減、堆肥化では実施場所や保管場所、事業スキーム、および地元協議が挙げられた。また、利用先の確保も課題であり、重金属への不安やイメージの問題等でなかなか普及が進んでいないことから、まずは県有施設や公共事業で先行して使用し実績を上げていく必要があるとしている。

 25年度はこれら課題を踏まえ、燃焼灰については埼玉県の先進事例の調査や菌体リン酸肥料の登録に向けたFAMICとの協議、および国交省の支援による成分分析支援事業で新たに成分分析を依頼している。

 堆肥化については、日本下水道事業団に委託して堆肥の製造と分析を行っている。このほど堆肥が出来上がり、今後は具体的な成分分析や植害試験などを実施する。実際の農地・圃場での肥効試験は、別途実施していく予定としている。

 そのほか、一般への普及拡大が課題となっていることから、国交省の案件形成支援事業で農業分野との連携や需要調査などを実施する考え。検討委員会や県のワーキンググループなども活用し、具体的な施設の導入規模や時期について、検討を進めていくとしている。

 委員からは、肥料化・堆肥化に向けた経営収支についての質問があり、県からは「どういった設備でどのくらいの量を製造するか検討中であり、堆肥化の手法によっても整備費用が変わる。現段階で収支は検討中だが、汚泥を有価物として処分できれば、従来の処分費用が無くなり非常に有効。焼却する量と堆肥化する量、ランニングコストをバランスさせながら、施設を整備できれば」などと答えた。

 懇談会は今後、第2回を11月頃に開催して、現在日本下水道事業者に委託している下水汚泥の試作堆肥の成分分析等の結果を中間報告する予定。26年2月頃の第3回では第1回、2回懇談会での意見も踏まえ、26年度の実施予定内容について説明する。

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