稲岡橋や松原堰を改築 県公共事業評価委 再評価の継続「妥当」
[2025/9/18 栃木版]
県公共事業評価委員会(委員長・大澤和敏宇都宮大学農学部教授)は16日、県庁で2025年度第1回の委員会を開き、事業の再評価を行った。再評価は、県土整備部所管の街路事業が足利佐野都市計画道路3・4・1号前橋水戸線の大橋工区など2件、河川事業が一級河川旗川や一級河川思川など4件で、このうち街路1件と河川2件を個別審議。当初計画から、旗川は稲岡橋の架け替え、思川は松原堰の改築などを新たに追加して事業費が大幅に増加したが、いずれの案件も委員会は事業継続を「妥当」と判断した。
議事を前に、県県土整備部の小野和憲部長は「社会資本整備を担う私たちは、県民の生命・財産、暮らしを守るとともに、経済成長や個性あふれる地域づくりに向け、限られた予算の中でこれまで以上にコスト意識を持って事業を進めていく必要がある」と述べ、委員の幅広い見地からの意見を求めた。
この後は委員の互選により、宇都宮大学農学部の大澤教授を委員長に選出。大澤委員長は「本年度は例年よりも審議案件が増えているが、一つ一つ丁寧に審議していきたい」と抱負を述べた。
県は、事業採択後一定期間が経過して未着工の事業や長期間経過して継続中の事業、再評価実施後一定期間が経過している事業、または社会経済情勢などの急激な変化、技術革新、事業計画の大幅な変更などで再評価の必要が生じた事業などで、公共事業の再評価を行っている。その際に、事業計画に大幅な変更があるものや推定便益・推定事業費の変更がプラスマイナス10%を超える事業などについては重点的な審議(個別審議)を実施し、それ以外は一括審議を行っている。
今回審議した前橋水戸線の大橋工区と一級河川旗川は前回評価時から全体事業費を見直し、一級河川思川は事業期間と全体事業費を大きく変更したため、それぞれ個別に審議した。
都市計画道路3・4・1号前橋水戸線の大橋工区は、佐野市大町から大橋町までの延長193mについて、現道を拡幅し歩道や路肩を整備するとともに、東日本台風で甚大な浸水被害が発生した一級河川秋山川の改良復旧に併せて大橋を架け替えている。
今回の再評価では、全体事業費を6億4000万円増額して、23億9000万円に変更する。このうち工事費の増額分は7億円で、内訳は建設資材や労務単価の高騰による工事費の増額が4億8000万円、大橋の下部工基礎の杭長延伸に伴う工事費の増額が1億6000万円、週休2日制工事やICT施工に伴う工事費の増が6000万円となる。
一方、用地補償費については物件補償費を精査した結果、補償額を6000万円減額する。25年度末時点の進捗率は73%の見通しで、引き続き27年度の完了を目指して事業を進めていく。
街路事業のもう1件は、都市計画道路3・5・101号毛野西新井線の西新井町工区を一括審議した。この事業は、国道50号から北側に延長8133mの区間で、幅員を8mから15mに拡幅し歩道や自転車通行帯を設置している。今回は用地取得に時間を要していることから、事業期間を当初の25年度までとしていたものを、30年度まで5カ年延伸する。
河川事業の一級河川旗川は、足利市寺岡町地先の稲岡橋から佐野市並木町地先のJR両毛線までの延長2200mで、浸水被害の軽減を図るため河川改修を実施している。今回は総事業費を見直し、工事費8億5000万円と用地補償費7000万円のあわせて9億2000万円増額して、総額19億円に変更する。
増額分の内訳は、工事費が建設資材や労務単価の高騰による工事費の増額で3億4000万円、流下能力の再確認に伴い新たに必要となった上流端の稲岡橋の架け替えに5億3000万円の増と、掘削土砂の工事間流用で2000万円の減。用地補償費が、稲岡橋の架け替えに伴う用地取得で7000万円となる。
一級河川思川も浸水被害の軽減を図るため、鹿沼市亀和田地先の国道293号小倉橋から深程地先の松原堰まで、延長6000mの河川改修を実施している。16年度に事業化し、30年度の完了を目標としていたが、今回の再評価で見直し事業期間を38年度まで8年間延伸する。
全体事業費も前回計画時の22億6000万円から、工事費で24億円と用地補償費で1億8000万円の25億8000万円を増額し、総額48億4000万円に変更する。
工事費の増額分の内訳は、建設資材や労務単価の高騰による工事費の増額が11億6000万円と、上流端の松原堰を河川事業で改築するため13億円、支川宮入川の取り付け部の築堤とそれに伴う橋梁の改築で2億1000万円それぞれ増額し、土砂の工事間流用で2億7000万円が減額となる。用地補償費は、堰や橋梁の改築に伴う増加となる。
河川事業の一括審議では、一級河川姿川の宇都宮市大谷町地先の延長3800mと、一級河川名草川の足利市利保町地先の延長2000mについて審議した。
姿川は、浸水被害軽減のため大谷地区の都市再生整備事業と連携して河川改修や調節池整備、橋梁架け替えなどを進めており、事業進捗率は30%で30年度の完了を目指している。
また名草川も、沿川の浸水被害対策として河川改修や橋梁架け替えなどを実施しており、事業進捗率は25%。姿川と同様に、30年度の事業完了を目標としている。