自然斜面補強土工など 急傾斜上鉢石町A 順調なら来年度から着工(県日光土木)
[2025/9/19]
県日光土木事務所は、日光市上鉢石町と中鉢石町で、国道119号の歩道拡幅と美装化、および電線類の地中化やバリアフリー化を実施する。この事業区間うち、上鉢石町の南側や中鉢石町の南西側には崖高平均17m、斜面平均勾配49度の急傾斜地が迫っていることから、歩道整備事業と一体的に急傾斜地崩壊対策対策事業を実施する。これまで工法などを検討してきたが、このほど自然斜面補強土工とモルタル吹付工、および地山補強土工に決定。これに基づき本年度は用地測量を実施し、順調にいけば2026年度から工事に着手して29年度の急傾斜地対策完了を目指す。
国道119号は、日光市山内を起点とし宇都宮市街地に至る延長約39kmの広域幹線道路で、第1次緊急輸送道路にも指定されている。また、上鉢石町地区や中鉢石町地区は世界遺産「日光の社寺」に通じる門前町に位置し、多くの観光客が訪れている。
しかしながら、歩道幅員が狭く歩道内の電柱等が支障となって歩行者同士のすれ違いが困難な状況にあり、門前町としての魅力ある街並みの形成が課題となっている。さらには電柱の倒壊や急傾斜地の崩壊などで、緊急輸送道路の機能確保が困難となる恐れがあるため、歩道の拡幅や美装化、電線類の地中化等と急傾斜地崩壊対策事業を一体的に実施する。
急傾斜地の上鉢石町Aは、土砂災害特別警戒区域に東町の人家30戸があり、このほか中鉢石町の公民館や上鉢石町の公民館(鉢壱会館)、国道119号の延長180mを保全対象とする。23年度は急傾斜地対策工法検討業務、24年度は設計業務をそれぞれ大日本ダイヤコンサルタント(本社・東京都千代田区)で実施し、工法をまとめた。
それによると、南側斜面の法面上側は自然斜面補強土工で、ノンフレーム工法を採用。斜面にロックボルトを打ち込み、ワイヤーロープで補強する。法面下側の露岩部は、モルタル吹付工で対応する。また、一番厳しい事業区間北側の斜面には、地山補強土工で表面工にプレキャストコンクリート板を使用するパンウォール工法を採用する。これらをあわせた整備延長は約300mで、全体事業費は約6億円と試算する。事業期間は23年度から29年度までの6カ年とし、本年度は晃栄測量設計(日光市)で用地測量や立木調査を実施している。進捗状況により、順調にいけば借地交渉を進めて、26年度からは工事に着手したいとしている。
なお国道119号の上・中鉢石町では、住民自らまちづくりの基本となる「日光東町まちづくり規範」を作成し、景観に配慮したファサード整備や、民地側はさらに1mの建築物のセットバックを行うこととしている。土砂災害特別警戒区域(通称・レッドゾーン)に立地する建物も、急傾斜地崩壊対策事業で対策工事を実施していれば日光市から建築許可を出すことが可能となることから、同事務所では歩道整備に先行して急傾斜地崩壊対策事業を実施していきたいとしている。