新美術館の構想策定へ 検討委員会はアクセスを重視(市川市)
[2025/10/1 千葉版]
市川市は、新たな美術館の建設を検討している。有識者らによる市立美術館整備検討委員会(非公開)を2回にわたって開くなど、市にふさわしい美術館のあり方やコンセプトなどについて意見を交わしており、今年度は他自治体の事例調査や情報収集を継続するとともに、7~8月に実施した市民アンケートの結果も参考としながら、市立美術館構想のとりまとめを進めることにしている。
同市では、東山魁夷や中山忠彦ら著名な芸術家が活躍するなど、市民による芸術活動が活発に行われている。美術館建設についても多くの要望が寄せられ、美術館開設の気運が高まっている。
田中甲市長は、文教都市の新しいシンボルの一つとして美術館開設に向けた調査・研究を進める考えを表明し、「市川在住の芸術家の作品を中心に展示する美術館をつくり、魅力ある市のポテンシャルの高さを示していきたい」と話すなど、美術館の整備に意欲を示している。
市立美術館整備検討委員会は、美術館の館長など学識経験者ら6人で構成。昨年8月と今年3月に会合を開き、美術館のコンセプトや機能、立地、施設整備の考え方などについて意見を交わした。
特に、立地については、「駅からの距離やアクセスが集客に大きく影響するため、整備場所が重要になる」との意見で一致。
施設整備の考え方については、「美術館や博物館は統廃合や複合型として整備する傾向があることから、文教施設などを含めた整備構想があった方が良いのではないか」という意見がある一方で、「使い勝手を考えると単独型の方が良い」などの意見があった。
一方、美術館に関するアンケートには、市民から2900件を超える回答が寄せられた。
美術館が必要だと思うかを問う質問には、66%が「思う、どちらかといえば思う」、15%が「思わない、どちらかといえば思わない」、17%が「わからない」と回答。
整備場所については、「アクセスの良い場所」が50%と半数を占め、ついで「緑が多く教育機関等が近い文教地区」、「他の教育施設と連携が取りやすい場所」と続き、整備場所としてアクセスの良い場所が望まれているということがわかった。
同市では、美術品を展示する施設として、市川市東山魁夷記念館のほか、全日警ホール(市川市八幡市民会館)に「中山忠彦メモリアルギャラリー」を開設している。
市保有の美術品は、市川市東山魁夷記念館の収蔵作品を除き約800点あり、東京都内の倉庫に保管。保管料として年間780万円ほどかかっている。
行徳地域に郷土資料館
市川市は、行徳地域で郷土資料館の整備を検討している。製塩業や水運の発達により育まれたてきた行徳地域特有の文化を、次世代に継承していくための施設を想定。地域住民や行徳まちづくり協議会など関係団体の意見を聞きながら、施設設置のあり方やコンセプトなどの大枠を示す郷土資料館構想をとりまとめる方針だ。
行徳は塩づくりと舟運で栄え、現在も旧街道沿いには、神社仏閣、旧塩問屋、神輿店、常夜灯など、寺町の風情と歴史的風情が色濃く残っている。
郷土資料館の整備について、地域住民から、「古民家などにある資料や民具などを保存展示してほしい」「行徳地域の文化を体験できる展示が望ましい」「継続的に人が集まるような施設にしてほしい」などの意見が寄せられている。
2025年度の組織改編では、行徳支所総務課に郷土資料館構想室が新設された。