災害協定の見直し議論 予算確保の必要性も確認(日建連東北と東北整備局)

[2025/10/15 宮城版]

 日本建設業連合会東北支部(大橋成基支部長)は10日、仙台市内で東北地方整備局との意見交換会を開催した。日建連は東北支部と東北地方整備局、東北6県、仙台市の間で包括災害協定の見直し作業が進められていることについて触れ、見直しの内容や意味合いなどを確認した。

 意見交換会には日建連から大橋支部長ら12人、同局から西村拓局長ら12人が出席した。主に▽東北地方における公共事業予算の確保と入札・契約制度▽災害協定の見直し▽第三次担い手3法の完全施行を目前に控えた取り組み▽工事事故防止への取り組み──について話し合った。

 公共事業予算の確保については日建連が、インフラの老朽化対策を含む国土強靭化への取り組みを緩めることなく進めるよう要望。その上で今後の東北における公共事業の方向性について尋ねた。

 同局は「防災・減災を重視した取り組みと、地震や豪雨災害への備えに加え、老朽化した施設の更新・維持管理の対応も急務な状態だと考える」との認識を示し、今後も当初予算の確保と、国土強靭化の予算や経済対策等の補正予算の確保に努める意向を伝えた。

 大橋支部長は公共事業関係の予算が横ばいで推移していることに関し、「近年の物価や賃金の上昇を考えれば実質マイナスといえる」と指摘。「国土強靭化に資する予算の確保と工事執行への尽力」を改めて願った。

 災害協定の見直しについては、日建連がテックフォースパートナーに位置付けられ、東北地方以外の被災自治体の応援をテックフォースと一体的に活動展開できるようにすることや、協定を結んでいない自治体からの依頼にも対応できるようにすることを念頭に、協定の拡充が検討されていることを紹介。

 現在は「日建連東北支部と東北地方整備局、東北6県、仙台市の間で包括災害協定の見直し作業が行われている最中」とし、日建連が見直し協定の意味合いと内容を尋ねた。併せて、東北における道路啓開で日建連東北支部にどのような対応を求めるのかも質問した。

 同局は「東北整備局管外への派遣や、地方公共団体施設への対応が行えるように対象範囲・施設の(拡大の)明文化を行う」と説明。災害対応の要請は被災した自治体からではなく、被災した地方整備局が日建連に行うとした。他の団体とも協定を結んでいることから、被災の状況に応じて整備局が調整し、「高度なものは日建連にお願いする」とした。

 道路啓開に関しては、道路啓開計画の実行性を高めるため、啓開の実施方法や資機材の備蓄量・備蓄場所・調達方法、情報伝達体制の構築において、これまでの知見からの助言を日建連に期待した。実際の災害時には危機対応に当たる関係者との連携強化を願った。

 日建連は「あらかじめいろいろな取り決めをして、お互いが意思を確認しながら動けるようなことを普段から準備していきたい」と応じた。

建設Gメンの活動実態問う

 第三次担い手3法の完全施行(12月)を目前に控えた取り組みのテーマでは、日建連が労務費の見積額や価格交渉の実態を把握し、取引実態の改善を指導する建設Gメンについて、活動実態を尋ねた。

 さらに、建設業キャリアアップシステム(CCUS)の導入促進に向け、「地方自治体への一層の指導と、初期導入作業を代行するような助成制度の採用検討」を期待した。

 加えて、技能労働者に技能習熟度に比例した給与を支給している企業への入札時の加点や、工事成績評価での加点といった、インセンティブの検討を求めた。

 同局は建設Gメンに関し、昨年7月~今年6月に127件の調査を行い、87件の改善指導を行ったことを紹介。改善指導は改正建設業法の本格施行が12月とされている中で「今後の留意点や見積もりの書き方などを案内しているのが現状」と告げ、「これからの活動方法は引き続き検討したい」と答えた。

 CCUSについては、市販の新たなカードリーダーでも対応可能なシステム構築や、CCUS認定アドバイザーの創設、CCUS行政書士の登録促進といったことで、「サポート体制を充実させて初期導入時の負担を軽減したい」と回答した。

 インセンティブに関しては、CCUSレベルに応じた賃金支払い等を行っている企業に宣言してもらうことで、技能者を大切にする適正企業として公表するとともに、表彰や経審での加点といったインセンティブを付与する方向で議論されていることを紹介。市町村などの地方自治体に対しては「CCUS活用のための条件整備を要請している」と明かした。

 工事事故防止への取り組みでは、日建連が引き続き現場パトロールや安全教育を行って災害防止に努める意向を表明した。

 意見交換の総括で大橋支部長は「担い手の確保」が最も重要な課題であることを強調し、公共事業の予算確保、技能労働者の処遇改善、働き方改革や生産性向上、安全確保といったテーマも全て担い手確保の課題につながっていることから、「今後もこうした課題に改めて真摯に向き合っていく」と決意表明した。

 西村局長は「事業量の確保は担い手確保に直結すると認識している」と述べ、「当初予算と補正予算を合わせたトータルの予算確保」に全力で当たることを表明。今後は第三次担い手3法の改正の目的を実現し、建設業全体がよりよい産業となるように、「直轄での努力に加え、各種の連絡会や建設Gメンといったツールも用意しつつ、自治体や民間とも連携して全体としての取り組みを推進したい」と意気込んだ。

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