堰や市道橋を改築 思川の河川改修 残事業費は約41億円(県河川課)
[2025/10/28 栃木版]
県河川課は一級河川思川の安全な川づくり事業で、目標事業期間を当初予定の2030年度から38年度に、全体事業費を22億6000万円から48億4000万円にそれぞれ変更する。事業費の増加は、松原堰の改築や支川宮入川の取り付け部の築堤や橋梁改築などによるもので、残る事業費は測量・設計費や堰改築などの工事費、用地補償費をあわせて41億7000万円とする。事業は東北自動車道の上流と下流で工区を分け、上流を優先して28年度までに用地取得を完了させ、順次工事を実施。下流側は35年度までに用地を完了させて工事を進め、38年度の事業完了を図る。
一級河川思川は、足尾山地の地蔵岳から鹿沼市、壬生町、栃木市、小山市、野木町を流下して、渡良瀬遊水地に流入する流域面積950平方km、管理延長75.0kmの河川。このうち、鹿沼市亀和田地先の小倉橋から深程地先の松原堰までの延長6000m区間は、河積が小さく堤防も低いため流下能力が不足している。
近年は、東日本台風で農地などへ浸水被害が発生しているほか、沿川の主要地方道栃木粟野線が通行止めになるなどの被害が生じている。このため県は、浸水被害の軽減を図るため、河川改修事業で河川断面の拡大と築堤を実施している。
浸水面積505.8ha、家屋浸水693戸の解消を図るため16年度に交付金事業化し、目標事業期間30年度まで、全体事業費22億6000万円(うち用地補償費3億2000万円)で事業をスタートした。計画規模は50分の1確率で、計画流量は毎秒2100立方m。整備後の標準天端幅は約200mとする。
20年度から用地取得、22年度から工事に着手して、これまでに区間の中ほどの鹿沼市と栃木市の行政境付近225mで河道掘削が完了。25年度の末時点の進捗率は事業費ベースで13.8%、うち用地補償費12.0%となっている。
今回の計画見直しでは、用地取得の難航で事業期間を8年間延伸し、事業費も25億8000万円増額する。事業費の内訳は、工事費が24億円、用地補償費が1億8000万円の増。工事費については、建設資材や労務単価の高騰による増で11億6000万円、松原堰の改築で13億円、宮入川の取り付け部の築堤や橋梁の改築で2億1000万円をそれぞれ増額し、掘削土砂の工事間流用で2億7000万円を減額する。また用地補償費は、堰や橋梁の改築伴う用地取得で1億8000万円を追加する。
松原堰は農業用の堰で老朽化も進んでおり、事業着手段階では改築を農政側でするか河川事業でするか協議が整っていなかったが、事業着手後に東日本台風で堰の上流部が溢水し浸水被害が生じたことから、よりスピーディで地元の負担も生じない河川事業で改築を行うこととなったため、工事費を追加する。
支川の宮入川の取り付け部は、概略設計の段階では考慮していなかったが、詳細設計を行う中で背水現象に対応するため取り付け部も本川と同様に築堤と、それに伴う橋梁の改築が必要となったため工事費を追加する。
残る事業内容と事業費は、河道掘削や築堤が9億7000万円、護岸が8億円、宮入川築堤に伴う市道橋2橋(深程橋、中島橋)の改築が2億円、松原堰の改築が12億円、樋管5基の改築が4億9000万円、測量・設計が7000万円と、用地補償で4億4000万円の合計41億7000万円を見込む。
コスト縮減の方策としては、現況の河道を活かした計画とすることや既設の護岸を利用するほか、河川の掘削土砂を築堤材として活用することで事業コストの縮減を図る。また、他事業と調整して建設発生土の事業間連携を図る。
事業の進め方は、事業延長6000mのうち東北自動車道との交差部で工区分けをして、より河幅が狭く断面が取れていない東北道の上流側を優先して事業を進める。上流側は28年度までに用地取得を完了させる考えで、用地が取得できたところから順次、工事を実施していく。下流側は29年度から用地の取得を開始して、35年度までに取得を完了させ、工事を推進して38年度の事業完了を図るとしている。
