湯西川みらい水力に ハイブリッドダムの発電事業者(鬼怒川ダム)
[2025/10/29 栃木版]
国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所は28日、「湯西川ダム新発電所設置・運営事業」の事業候補者に東京電力リニューアブルパワーを代表者、建設技術研究所、鹿島建設、NTTアノードエナジー、飛島建設を構成員とする「湯西川みらい水力共同体」を特定したと公表した。この事業は、治水機能の強化と水力発電の促進を両立させるハイブリッドダムの設備を新設・運営するもので、同省が管理するダムとしては全国で初めての試み。今後は発電所の運用開始に向けて、事業候補者と基本協定締結のための協議を進めていく。
既設放流管に発電施設新設
国交省は、気候変動への適応やカーボンニュートラルへの対応のため、治水機能の強化と水力発電の促進を両立させるハイブリッドダムの取り組みを推進している。今回は、同事務所が管理する湯西川ダムで発電設備を新設し、水力発電と地域振興に取り組むため、昨年12月20日から全国で初めて発電事業者(事業候補者)選定のための公募手続きを開始していた。
事業は民間の資金、経営能力および技術能力を活用し、効率的な整備と維持管理・運営を実現するもので、湯西川ダムの放流水を活用して水力発電事業(完全従属)を行う発電事業者(事業候補者)の提案を7月25日まで募集した。
プロポーザルでは、発電事業の遂行能力・事業計画と合わせ、ダム周辺の地域振興を図るための有益な提案について、湯西川ダム新水力発電所設置・運営事業候補者審査委員会(座長:池田裕一宇都宮大学地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科教授)でヒアリングと企画提案書の審査を実施して、事業候補者を特定した。
特定された発電事業者は、湯西川ダムの放流水を活用した発電所の設置運営に係る事業計画、資金計画、電気工作物等の設計・施工、管理運営などの取り組みを、自らの責任で実施することとなる。また事業候補者は、必要な法令上の許可等手続きや関東地方整備局との基本協定締結が必要となる。
湯西川ダムは、流域を洪水の被害から守る洪水調節や流水の正常な機能維持とともに、新規都市用水等(水道用水・工業用水・かんがい)の供給を行うために、鬼怒川上流のダム群の一つとして利根川水系湯西川河川区域内の日光市西川地先に建設された。形式は重力式コンクリートダムで、堤高119m、堤頂長320m、総貯水容量7500万立方mの規模となっている。
ハイブリッドダムは、治水機能の強化と水力発電の増強のため、気象予測も活用しダムの容量の共用化などダムをさらに活用する取り組み。取り組み内容は▽ダムの運用の高度化▽既設ダムの発電施設の新増設▽ダム改造・多目的ダムの建設-で、今回の事業では既設ダムの発電施設の新増設として、既設利水放流管から分岐して発電施設の新設を行う。
